63歳でリタイアしても今の生活が継続できますか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、単身アメリカで暮らす、44歳の会社員女性。63~65歳まで会社員として勤め、その後リタイアを希望しているが、資金面で不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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リタイヤ後もアメリカで暮らしたいのです

将来は日本に帰国して両親の家に住むことも可能です



■相談者
ティーポッドさん(仮名)
女性/会社員/44歳
アメリカ/賃貸住宅
 
■家族構成
一人暮らし
 
■相談内容
アメリカで働き、こちらで年金も納めています。今の職場は退職金とボーナスが無いので毎月の貯金で将来の蓄えをしなければなりません。今のところ健康問題等は無く、職場もある程度は安定しているので、できれば65歳ぐらいまでは働き続けたいところですが、独身ですので老後の資金が不安です。将来は日本に帰国して両親の家に住むことも可能です。このまま63歳まで働き続けたとすると、年金受取額の予想は、月$1700ドルです(65歳なら月$2000ドル)。この額からどれくらいの天引きがあるかは不明です。上記の補足として、光熱費等は家賃に含まれています。貯蓄額は普通口座に約200万円で残りは定期です。旅行が趣味で年に2回ほど出かけます。年間の合計はおよそ60万円で、この金額は月々の娯楽費に含まれます。老後も旅行を続けられればと思っています。保険等には加入していません。(アメリカの生命及び入院、がん保険等、よく分かっていません・・・)アドバイスよろしくお願いします。
 
投資にも興味はありますが、自分には堅実な定期預金があっているような気がします。現在保有の定期の利率は5年、2.7%です。2020年に入りまして金利が下がった為、現在は新規加入で5年定期が1.5%ぐらいです。(アメリカの定期の利率は過去10年で1.5~3%ぐらいで変動していると思われます)
 
(追記)
新型コロナウイルスのあおりで現在失業中ですが、州政府のシャットダウン命令が解除され次第職場復帰できる予定です。政府からの臨時の失業保険等で収入自体にさほど誤差はありませんので、提出した資料で今のところ変わりはありません。
 
■家計収支データ
相談者「ティーポッド」さんの家計収支データ

相談者「ティーポッド」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)アメリカの滞在資格について
グリーンカードを取得。国籍は日本。
 
(2)アメリカの医療保険事情について
相談者は、会社を通して医療保険に加入しているので、多額の医療費がかかるといった問題はない(現在は失業中で失効中の為、州の低所得者用保険に切り替え中)。アメリカでは、民間の医療保険の保険料は高額だが、大中小企業で働いているアメリカ人全般は企業を通してなんらかの医療保険に加入しているとのこと。大企業になるほど個人負担が軽く優良な保険(通える医者、病院の選択肢が多い、など)を提示していることが多いとか。
 
いわゆる生命保険や積立型の大きな病気にかかった時の保険などには加入していません。アメリカでこういうタイプの保険があるのかいまいちよくわかっていません。もしよろしければ、教えて頂きたいです。
 
(3)定年について
勤務先に定年の年齢の規定はなし。相談者の漠然とした希望は63~65歳まで働き、その後リタイア。
 
(4)趣味娯楽費「12万円」の内訳
旅行で年間約60万円支出されるので、月5万円程度。残りの7万円は主な支出内容としては、ジムが2万7000円、残りは化粧品、服飾、美容院、外食、レース代(ランニングが趣味)など。
 
(5)実家について
相談者コメント「妹が今両親と実家で暮らしています。もし帰国しますと同居することになります。仲は良いです」
 
(6)老後の生活費について
希望としては今とほぼ変わらない生活レベル。ただ、月々の趣味娯楽費は多少減るのではないかと考えている。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 貯蓄ペースを維持できれば老後資金は大丈夫
アドバイス2 医療費は貯蓄でカバーするという発想
アドバイス3 あえて投資コストを取る必要はない
 

アドバイス1 貯蓄ペースを維持できれば老後資金は大丈夫

老後資金のご相談ですが、ともあれ試算をしてみましょう。
現在、新型コロナウイルスの影響で、失業中ながら以前の給与水準と同等の失業手当が支給されていて、終息後、職場復帰できるとのことですから、収入は家計データに記されている額が継続するとします。また、為替換算も便宜上、いただいたデータどおり1米ドル=108円としました。
 
毎月の貯蓄(家計黒字)が15万~20万円ですので、間を取って月17万5000円が貯蓄に回るとします。年間で210万円。63~65歳まで働き、その後、リタイアを希望されている。63歳まで働くならあと19年間。その間に3990万円貯蓄が上積みされますので、その時点で手元にある資金は約6300万円。これがティーポッドさんの老後資金です。
 
米国の公的年金の支給開始年齢は、ティーポットさんの年齢であれば67歳ですので、それまでの4年間は全額貯蓄で生活費をまかないます。毎月の生活費が今と変わらないとすれば、4年間で約1300万円。先の貯蓄から差し引くと、67歳の時点で手元に残る資金は5000万円。
 
公的年金の支給額は63歳で退職、リタイアなら日本円で約18万3000円とのこと。したがって、生活費の不足額は毎月8万2000円。ただし、米国も日本同様、公的年金に対して一部所得税が課税されます。その額は不明ですが、それも考慮して月9万円不足なら、年間108万円。100歳までの33年間で3564万円。それでもまだ手元に1400万円超が残ることになるわけです。
結果、老後資金が大きく困ることはないと考えていいでしょう。さらに言えば、もし65歳まで働けば、当然、貯蓄も公的年金も増えます。計算上、100歳の時点で残高はおよそ3700万円。安心の度合いはさらに高まります。
 

アドバイス2 医療費は貯蓄でカバーするという発想

ある程度の変動があったとしても、概ねこのまま貯蓄ペースを維持できれば、63歳でフルリタイアしても資金的には問題ありません。それを踏まえていくつかアドバイスをするなら、まず保険については、死亡保障は独身である以上、不要です。医療保障については、勤務している間は医療保険に加入できるとのこと。問題は退職後ですが、すでにまとまった資金を用意できるのですから、無理に保険料の高額な民間の医療保険に加入せず、かかった治療費は貯蓄でカバーするという発想でもいいと思います。
 
そもそも、保険に頼るより、日頃から健康維持に気を配る。定期検診を受け、ストレスをためず、豊かな気持ちで日々を送る。そのために必要なコストは惜しまない。その方が合理的と言えます。
 
またリタイア後に帰国し、日本に移り住むとすれば、住民票も移しますから、原則、国民健康保険と介護保険に加入することになります。その場合、高額療養費制度などが利用でき、かつ手元にまとまった資金もありますから、やはりあえて民間の医療保険に加入する必要はないと考えます。ただし、国民健康保険料と介護保険料が発生します。所得税、住民税とともに、それらコストは米国の公的年金の受給額の10~15%程度が目安です。
 

アドバイス3 あえて投資コストを取る必要はない

もうひとつ、投資について。投資をする資金的余裕はあります。ただし、ティーポッドさんが「自分には貯蓄が向いている」と思うなら、無理にする必要はありません。ご相談文にある、米国の定期預金の金利が今後続くかどうかは不明ですが、仮に毎月17万5000円を金利1.5%の積立預金で19年間(63歳まで)積み立てたとすると、利息だけで600万円を超えます(1年複利、税引き前)。つまり、先の試算は正確には、こういった利息分を加算すべきであり、さらに余裕があるということ。
 
10年定期でも金利0.002%(メガバンク)の日本から見れば、はるかに高金利です。もちろん投資をすればもっと増えるかもしれません。しかし、老後資金は足りるのですから、あえて投資コストを取る必要はないと考えます。
 

相談者「ティーポッド」さんより寄せられた感想

深野先生からの詳細なアドバイス大変参考になりました。専門家の方から、今までどおりのマネープランで問題ない事、保険や投資も特にする必要がないと聞いて安心しました。不安定な世の中ですが、なんとか現在の収入をこの先も維持できるよう努めたいです。

 
 
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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