亀山早苗の恋愛コラム

命がけの大事な恋が「いい思い出」にならなかった驚きの理由

不倫とはいえ「大事な恋」。いや、不倫だからこそ「大事な恋」だと思い込んでいたのかもしれないが、「私にとっては命がけの恋だった」と言う女性がいる。そんな恋は、ずっといい思い出としてとっておきたいもの。それなのに……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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彼のことを愛し、心配していたのに……

大失恋

不倫とはいえ「大事な恋」。いや、不倫だからこそ「大事な恋」だと思い込んでいたのかもしれないが、「私にとっては命がけの恋だった」と言う女性がいる。そんな恋は、ずっといい思い出としてとっておきたいもの。それなのに。

 

5年間、彼にどっぷりハマって

ミホさん(36歳)は、29歳のころ結婚を考えている彼がいた。そこへ強引に割り込んできたのが8歳年上のユウタさん。

「でもユウタは結婚していたんです。最初からアヤシいとは思っていたけど、ユウタはとにかく強引。でも嫌な感じがしない。持って生まれた才能というんでしょうかねえ、女性をいい気持ちにさせて、気づいたら彼の手中にいるという感じだったんです」

いつしか彼のペースに乗せられ、週に2回は会うようになっていた。結婚を考えていた彼からデートの誘いが来ても断ってばかり。

「『ボクのことが嫌いになったの? ボクはミホしか見てないのに。本当に好きなんだ』と何度も言われたけど、素朴でいい人の彼より、女慣れしていてスマートなユウタに惚れ込んでしまったんです。結果的に彼にはフラれましたけど、それを狙っていたのでかえってよかったとそのときは思いました」

それからはユウタさんとさらに濃密な関係になっていった。ユウタさんは外資系の企業に勤めるサラリーマンなのだが年収は数千万円。とにかく仕事ができる人なのだという。

「実は私も彼の業界に近いところで仕事をしているので、つきあうようになってから彼の噂はときどき耳にしました。仕事ができる愛妻家で通っていたみたい。そういう男とつきあっているって、女としては優越感があるんですよね」

ときおり、めったに予約がとれないような高級店につれていってくれるかと思うと、駅前の居酒屋でデートすることもあった。いつ、どんな場所でも彼は変わらない。明るくて、店の人ともジョークを交わし、ミホさんにもいつも優しい。予測がつかない楽しさがあった。

「あんな人に会ったのは初めてでした。つきあって2カ月くらいたったころかなあ、私が『ユウタは奥さんいるんでしょ』と聞いたら、『うん、子どももいるよ。言わなかったっけ』ってあっけらかんと(笑)。『でもミホとつきあうことに問題はないよ』って。そこまで言われると、そんなもんかなと思ってしまうんですよね」

どんなに忙しくても彼は時間を作ってミホさんと会っていた。夜中にドライブしたこともあるし、ユウタさんが遠方の実家に帰るとき、ミホさんが近くで待っていたこともある。

「そのときは、ユウタがたまには親の顔を見に行かないとなあと言い出して。私の分の飛行機のチケットも買ってくれたんです。彼は3泊で行くから、2日目の夕方からおいでよって。親には1泊で帰ると言っていたようです」

ところが3日目の午後、ミホさんとユウタさんが繁華街を歩いているとある男性に声をかけられた。ユウタさんの高校時代の友人だった。そんなときもユウタさんは「おう、久しぶり。今回は仕事で来てるからまた連絡するわ」としれっと言った。まったく動じない彼に、ミホさんは感心したという。

 

バレた、もうダメだと彼が言い出して

5年近く、ミホさんはユウタさんに惚れっぱなしだった。ケンカすらしたことがないという。そもそもケンカのタネがないのだ。

「結婚できないということ以外は、何の制約もなかったから。彼は『家庭は家庭、恋は恋だよ。オレが好きなのはミホだから』とときどき真剣に言うんです。そんなふうに言われると、結婚なんて価値がないとさえ思うようになっていました」

ところがある日、彼が青ざめた顔で、深夜、ミホさんの部屋にやってきた。いきなり来ることはなかったから、ミホさんは何が起こったのかと慌てたという。

「彼、いきなり正座して、『妻にバレたんだよ。もうダメだ』って。奥さんが私のことを知って激高している、住所をつきとめて殺してやると騒いでいると。子どもたちがかわいそうだから離婚はしたくない。彼、そう言ってボロボロ涙をこぼしたんですよ。そこまで言われたら会うのを控えようとしか言えなかった。彼が苦しいなら別れてもいい。しかたがない。でも彼は『そんなこと言わないで』と泣くばかり」

その数日後、彼は「全部オレが負担するから、すぐに引っ越してほしい」と言い出した。怒り狂った奥さんがやってきて刺されるかもしれないと彼女は怯え、彼の言う場所へ引っ越した。いろいろ費用もかかるだろうからと彼は引っ越し代や初期費用のほかに100万円を彼女に手渡したという。

それから1カ月ほど、彼女も忙しかったので彼には会えなかったが、連絡だけはとっていた。そしてある日を境に急に連絡がとれなくなった。

「何かあったのかと思ったけど、彼も苦境に立たされているのだからしばらく様子を見ようと決めたんです。彼をより苦しめたくなかったから。いつかきっとまた会える日がくると信じていた」

ところがその数週間後、彼女は職場での噂から、彼が離婚して再婚したという話を聞くのである。

「何が起こったのかよくわからなかった。同僚たちは『あんなに愛妻家だったのに。夫婦のことはわからないね』と言っていたけど、私が知りたいのは『誰と再婚したのか』です。冷静を装って、周りに聞いてみたら『さあ。なんでもつきあっていた人がいるらしいよ』とのこと。あまりのショックに膝から崩れ落ちかけました。誰も見ていなかったからよかったけど、その日は結局、早退したんです」

彼の会社に行って真偽のほどを確かめたかったが、気力がわかなかった。数日後、彼がつきあっていたのは、ミホさんも知っている同じ業界の人だった。彼より15歳も年下の若くて聡明で美人と評判の女性だったのだ。

「いろんな意味でショックでしたね。私と別れたいならはっきり言えばいい。そもそも二股しているなんてまったく気づかなかった。彼女とは1年くらいのつきあいだったらしいんですが、彼女が結婚してくれなければもうつきあわないと言ったとか。私も早めにそう言えば彼は離婚してくれたのか。それとも彼女だから手放したくなかったのか。そもそも妻にバレたなんてウソだったみたいだし。もう、突っ込みどころが多すぎて自分では考えを整理できなくなりました」

友人につきあってもらって、さんざん愚痴を吐き、ヤケ酒を飲んだ。それでもなんとか仕事だけは続けた。

あれから1年。まだ心の傷は開いたままだ。いつも痛んでいる。あれほど信じて、あれほど愛した男に、こうも簡単に裏切られるなんて。

「一生に一度の大恋愛だと思っていた。それを思い切り汚された気がして。それが悔しいんですよね」

彼はどう思っていたのか。真実はどこにあるのか。聞いてもしかたのないことだとわかっていながら、彼女は日々、モヤモヤした気持ちを募らせている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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