「妻と恋人、どちらが好きですか?」
不倫騒動で注目を浴びる俳優・東出昌大さんが記者の質問に答えた。これ以上ないくらい深刻な面持ちで、言葉を選びながら話す彼に飛んだ「杏さんと唐田さん、どちらが好きなんですか」という質問。結局、答えは回避したが、「他の女性と恋愛してしまった男性に、この質問は残酷すぎるし、的を射ていないと思う」と話してくれた女性がいる。
「妻と恋人は土俵が違う」……マユコさんのば
「私は恋人側だったんですが」
と話し始めたのは、マユコさん(34歳)だ。29歳から3年間、10歳年上の既婚男性とつきあっていた。
「彼は妻の悪口はいっさい言わなかった。私が奥さんのことを根掘り葉掘り聞いたときも、正直に答えてくれました。ただ、そのとき、『家庭と恋愛は別だよ』と言っていましたね。好きで結婚したのは間違いないけど、結婚を決めるにあたってはどうしても『妻としてどうか』という目で見ていた、と。だけど恋愛はともに生活するわけではないし、家庭という組織を築くわけでもないから、純粋に『好き』という気持ちだけで突き進むことができる。つまりは、まったく別のものなんだと言っていましたね。私自身、気持ちはわかると思っていました。好きだから結婚したいと直結する場合もあるかもしれないけど、必ずしもそうとは限らないということですよね」
マユコさんは彼と「きちんと恋愛した」という思いがあるそうだ。ふたりきりのとき、彼がマユコさんのことだけを考えているのがわかったから。そして会っていないときも彼は彼女のために時間を費やしてくれていた。
「家で深夜、私に聞かせたい音楽を編集してCDに焼いてくれたり、私が仕事上、必要としている資料を送ってくれたりもしました。家族が寝静まったあと、私のことを考えてくれたんだとわかる。家族への愛とは違うだろうけど、私は私なりに彼からの愛情をめいっぱい受け取っていたから、既婚者とつきあっていることでの不満はありませんでした」
3年たち、彼女自身が「彼から旅立ちたい」と願った。このまま彼と一緒にいても状況は変わらない。ひとりになって新しい恋をするなり、自分の人生をゆっくり考えるなり、何かを変えたいと考えたのだ。
「それを彼に言ったら、彼が『それがマユコの願いなら受け入れる』と答えた。ありがたかったです。それ以降も仕事上で薄いつながりがあったので、まれに顔を合わせることもありますが、お互いに恋心が抜けて普通に話すことができています」
この恋愛は寿命が来たのだ、とマユコさんは満足しながら感じていたそうだ。静かな幕引きは自分たちの恋愛の最後にふさわしかった、とも。
恋愛だからこそ、惰性でつきあってはいけないと彼女は思っていた。
「家庭は大事な宝物、恋愛はひとりの人間として、恋愛感情や情熱が迸るもの。彼はそう考えていたんじゃないかと思います」
彼女自身も情熱を迸らせた恋だった。だから満足して幕を下ろしたのだろう。
「両方好き、に決まってる」シンジさんの場合
実際に不倫したことのあるシンジさん(45歳)は、「どちらが好きかなんて愚問ですよね。どっちも好きに決まっているでしょう」と苦笑した。妻が嫌いなら離婚すればいい、だがどちらも好きなら離婚はできないし彼女と別れることもできない。
「そうやって薄氷を踏む思いで恋をすることもあるんですよ、人間には」
彼自身、妻のことは尊敬もしていたしとても好きだった。だが結婚して10年目の40歳のとき恋に落ちた。同じ会社の同世代バツイチの女性だった。
「妻も同世代なんですが、別に年齢でつきあうわけじゃないですからね。妻はしっかりしていて仕事もできるかっこいい女性。彼女も仕事ができる女性ですが、どこかふわっとしたところがあって、発想がユニークでおもしろかった。全然違うタイプですから、どちらからも離れたくなかった」
つきあって2年たったころ、妻が大病を患った。小学生の子どもがふたりいるから、必然的に彼は仕事と家庭で忙殺されることになる。
「彼女は、今できることを精一杯やって、私のことは考えなくていいからと言ってくれた。彼女の懐の深さにありがたさを感じました」
そして妻は半年ほどで大病から生還、現在はバリバリ仕事をしている。そしてシンジさんと彼女も、ときおりデートを重ねている。
「彼女は、奥さんと私、どっちが好きかなんて聞かない。彼女自身も家庭をもっていたことがあるからこその優しさなんでしょうか。ただ、聞かれれば、僕はどちらも好きだと言うしかありません。比較の問題ではなく、ふたりとも僕の人生にいてほしい人だから」
だからこそ、バレないように細心の注意を払っていると彼は言う。なんら非のない妻を傷つけたくはないからだ。それでももしバレたらどうするのか。その質問には、彼は最後まで答える言葉が見つからないようだった。