亀山早苗の恋愛コラム

70代で「熟年離婚」した両親を見てつくづく考えさせられたこと

日本ではここ数年、離婚件数は横ばいだが、熟年離婚だけが増加している。親の離婚を契機に、自分の結婚生活についてもしみじみと考えたという女性に話を聞いた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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日本では「熟年離婚」だけが増えている……

熟年離婚

日本ではここ数年、離婚件数は横ばいだが、熟年離婚だけが増加している。経済的な問題さえ解決できれば離婚したいという予備軍の熟年層(特に女性たち)はもっと多いだろう。親の離婚を契機に、自分の結婚生活についてもしみじみと考えたという女性に話を聞いた。

 

わだかまりを解決しなかったために

70代になった両親がついに離婚に踏み切ったというのは、アキさん(42歳)だ。自身も同い年の男性と結婚して13年、ふたりの子を共働きで育てている。

「うちの両親は昔から仲が悪かったし、私から見ても相性がよくなかった。母は社交的ですが、父は友だちもいなくて家にいるのが好きなタイプ。ひとりで植木の手入れを黙々とやっていました。そんな父を母がうっとうしいと思っているのは子どものころからわかっていた」

大学を卒業したとき、アキさんは母親に離婚を勧めたという。だがパートで仕事をしている母は、経済的な理由からためらった。その後、父が定年退職したときもアキさんは、妹を巻き込んで母と話した。

「父は無口なんだけど、自分の思い通りにならないと母に暴言を吐くんです。それが年とともにひどくなっていったので、このままだと暴力をふるわれるのではないかと母が怯えるようになって。そんなだったら別れればいいのにと思って、妹と説得したんですが、やはり離婚には踏み出せなかったようです」

昔から、些細なことで揉めてはいたが、解決のための「話し合い」はしたことがない両親だった。お互いに言いたいことがあっただろうが、父は口を閉ざすことでぶつかることを回避、母はストレスを娘たちや友人にしゃべることで発散してきた。

「結局、積もり積もったわだかまりは70代に入って一気に爆発したんでしょうね。私は実家から30分程度、妹一家は1時間程度のところに住んでいるんですが、ある日、母からSOSが入って。家を出てきてしまった、と。とりあえず私の自宅に来てもらいました」

母の顔は腫れ上がっていた。そのまま病院へ直行、警察にも行って被害届を出した。父親は逮捕されたが、夫婦ゲンカということで1日で釈放された。だが、そのときにはもう、夫婦の間は修復できなくなっていた。

「最後、終わるときはあっけないですよね」

お互いに弁護士をつけて交渉した結果、自宅を売り、財産分与をして離婚した。半年ほど前のことだ。母は今、アキさんの自宅から歩いて10分ほどのワンルームのマンションでひとり暮らしている。

「いきなりのひとり暮らしですが、それなりに楽しんでいるみたいですよ。パートの仕事をしながら地元のサークルなんかにも出入りして、卓球を始めたとか陶芸を始めたとか。社交的だからやっていけるんでしょう。父は生まれ故郷に帰りました」

父親にはあまりかわいがってもらった記憶もないというアキさんだが、「父の一生は何だったのか」と考えると、少しかわいそうな気もするという。

 

夫婦はどうあればいいのか

その一件を通して、アキさんは夫とよく話すようになったという。

「結婚して13年たつと、“いて当たり前”の存在になっているけど、お互いに考え方が違うところは多々あるし、ときには、言ってもどうせわからないのだからと、夫に対してあきらめたりしてきたこともある。でもこれが続くと、私も両親と同じことになるのではないかとしみじみ考えてしまったんですよね。だから夫に、私はあなたと熟年離婚をしたくない、そのためには今から些細なことも話して解決していきたいと訴えたんです」

大雑把な性格で、まじめな話をまじめにするのが苦手な夫だったが、さすがにこのときはアキさんの話を神妙に聞いていたという。ただ、そのとき言われたのが、「感情的に言われると話そうとする気が失せる。何が言いたいのかを先に話してもらえると対処がしやすい」ということだった。

「私もけっこう口うるさいところがあるんですよね。仕事だったら筋道立てて話せるのに。それからは夫に言いたいことがあるときは、『あなたのこういう言動が気になった、なぜならば~』と話すようにしています。だからといって、すべてがビジネス的なわけではないんですが。夫が話し合いに応じるきっかけとして、論理的なほうが言葉が届きやすいんだなということはわかりました」

夫も、アキさんが言いたいことを逡巡しているときは、察して「何か言いたいことがあるんじゃないの」と声をかけてくれるようにもなった。お互いの特性を理解した上で、些細なことでも話せれば、わだかまりは最小限ですむと、アキさんはこの半年ほどで学んだという。

「お互いのことなんて一生かかってもわからないんじゃないでしょうか。だからこそ、なるべくストレスを少なくしておかないと、うちの両親みたいになりますからね。離婚がいけないわけではないけど、せっかく好きで一緒になったのだから、できれば最後にあんな修羅場を迎えたくはないなと思うんです」

つい先日、アキさんの母はしみじみと言ったそうだ。

「どうしてこんなことになっちゃったのかしらね」

だからもっと早いうちに離婚に踏み切ったほうがよかったのではないかとアキさんは思ったそうだ。

夫婦関係は「なまもの」。腐ってしまったら元には戻れない。腐らないように手当てしていく必要があるのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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