“やんちゃ”な姑に振り回される日々
「姑」は、あくまで「夫の母」であり、自分の母ではない。本来は結婚したところで、変わらず「夫の母」なのだが、世間ではなぜか「義母」となる。そこでさまざまな軋轢が起こるのだ。あくまで「夫の母」として接していれば、少し心の距離も保てるのかもしれない。
とはいえ、「夫の母」だと思っていても振り回される人もいるようだ。
姑と同居することになって
ケイコさん(44歳)が同い年の男性と結婚して15年。中学生と小学生、ふたりの娘がいる。一家はA市に住んでいるが、同じ県内のB市には夫の実家があり、両親が住んでいた。その距離、車で30分ほど。
「昨年夏に夫の父が亡くなったんです。夫には姉がいますが、結婚して遠方に住んでいる。私たちは借家住まいでしたから、夫が実家に戻ろうかと言い出して。夫の母は地元では有名な『派手な人』ですから、私はちょっとためらったんですよね」
70代の夫の母は、髪は金髪、今もバイクを乗り回している。若いころには浮気騒動を起こしたこともあった。友だちも多いし、ボランティアなどもやっていて「地域のおもしろおばさん」なのだが、身内にしてみると「ちょっと迷惑な人」なのだ。
「夫の母は、うちの娘にも自分をヨウコさんと呼ばせる。おばあちゃん、というイメージの人ではないんです。ヨウコさんは、私はひとりで勝手に暮らしたいから同居は嫌だと言ったんですが、けっこう大きな実家なのでひとり暮らしももったいない。そこでそれぞれ勝手に暮らそうと取り決めた上で、私たちは夫の実家に引っ越したんです」
それが昨年の秋のこと。1階は夫の母、ヨウコさんが住み、2階にケイコさん一家が入った。もともと二世帯用を意識していたのか、2階にもバスルームやトイレ、キッチンがある。
「本当はヨウコさんは娘一家と暮らしたかったみたい。それができなかったので誰かに貸そうとしたこともあったようですが、玄関はひとつなので、他人に貸すのも……とためらっていたようです」
最初のうちは完全に生活は分かれているので問題はなかった。ケイコさんも仕事を続けていたので、変わらず忙しい日々が流れていった。
娘と姑が意気投合
上の娘はバスケットボールをやっており、部活に夢中だ。あるとき娘とヨウコさんがバスケットの話で盛り上がったらしい。そこから娘はヨウコさんに傾倒していく。「娘はちょうど反抗期。ヨウコさんがうまく息抜きをさせてくれているので、それはそれでいいなと思っていたんですが、冬休みにヨウコさんが上の娘を連れてアメリカに行くと言い出して。本場のNBAを見せてやる、と。私があたふたしていると夫は大賛成して、ふたりでアメリカに行ってしまったんです」
そのときケイコさんが感じたのは、姑によって「家族が分断される」「子どもを奪われる」恐怖だった。夫は「別にいいじゃないか、かあさんがお金出してくれたわけだし」と何も感じていない様子。
このままだと今度は下の娘が興味をもったことに対して、ヨウコさんが取り入ってくるのではないかとケイコさんは思っている。
「ヨウコさんはもともとバスケが好きで、過去にもアメリカにNBAを観に行ったことがあるんですって。だから娘を連れていきたかったんだろうと夫は言います。帰ってきた娘は生き生きと話をしていて、本当に楽しかったみたいだけど」
ヨウコさんは酒もタバコも楽しむタイプ。週に何度かは地元の居酒屋で、友人たちと酔っ払っては大騒ぎしているようだ。
「彼女はもともとデザイン関係の仕事もしていて、今でも昔ほどではないけど仕事もしている。上の娘は自由奔放なヨウコさんにすっかり感化されています。それもどうかなと私は不安でたまらないんですが、夫は放っておけばいいと」
部活に夢中でクラス委員タイプだった優等生の娘が姑によって変わっていく。それがケイコさんには怖いのだという。
「若いときは人の影響を受けやすいでしょ」
だが先日、彼女は夫にズバリと言われたそうだ。
「きみは母親の自分より、祖母であるヨウコさんに娘が懐いているのが気に入らないんじゃないのか、って。認めたくないけどそうかもしれない。母としての自信を喪失させた姑に、なんともいえないモヤモヤを感じています」
ヨウコさんはヨウコさん。母は母。娘もいつかそう気づくはず。周りに違うタイプの女性がいることは娘の将来にとってかえっていいことだと思うのだが……。