亀山早苗の恋愛コラム

やむを得ない事情で別居するようになった「仲良し夫婦」の10年後

やむを得ない事情で「仲良し夫婦」が別居するようになって10年。それでも月に数回は会う努力を重ね、今も恋人同士のような感覚を保っているという夫婦がいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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なんだかんだで別居10年、それでもうまくいっている夫婦

別居婚

やむを得ない事情で「仲良し夫婦」が別居するようになって10年。それでも月に数回は会う努力を重ね、今も恋人同士のような感覚を保っているという夫婦がいる。

 

最初は夫の単身赴任で

結婚したのはふたりとも29歳のときだと、マリナさん(45歳)は言う。すでにつきあって5年がたっていた。

「もともとは高校の同級生なんですよ。地方出身で、彼は地元の大学へ、私は東京の大学へ行って離れていました。そのころは別につきあっていたわけでもなく……」

ところが就職活動中にばったり再会、何度か食事に出かけたが別々の会社に就職することになってまた連絡が途絶えた。

「連絡先は知っていたけど、特に連絡をとりあうこともありませんでした。でも就職して2年くらいたったとき、東京駅でばったり会いまして。それから連絡をとりあうようになりました」

ふたりとも東京勤務になっていたので、ときどき食事をするようになり、自然の流れでつきあうようになっていった。

「27歳くらいのときだったか、彼が転勤になったんです。この関係はどうなるのかなと思っていたら、彼から『2年か3年後に戻ってくるから結婚しよう』と」

そして29歳で結婚。すぐにひとり娘が産まれたが、35歳のときに夫がまた転勤、単身赴任となった。

「私も仕事はやめたくなかったし、夫が遠方にいるなら遊びに行けるし(笑)。子どもがすでに5歳になっていたので、実質、母子家庭になってもそれほど苦悩はありませんでしたね。というか、私がもともとどうにかなるさというタイプなんでしょうけど」

娘が小学校に上がるころ、夫は戻ってきた。ところが今度は入れ替えのように、マリナさんが1年間のアメリカ長期出張を会社から打診された。

「研修込みなんですが、これに行ったら私の未来は変わるというくらいの大転機だったんです。夫に話したら、『いいんじゃない? 家族のために自分を犠牲にすることはないよ』と。せっかくまた一緒に暮らせるようになったのにと言うと、『一緒じゃなくてもオレたちの気持ちが変わらなければいい、オレは変わらないよ』と言われてかなりドキッとしました。夫とはずっと友だちみたいな気楽さがあったけど、なんだか恋愛初期みたいなドキドキ感が(笑)」

さすがに娘は寂しそうだったし泣いたりもしたので、マリナさんも躊躇したが、夫が熱心に説得してくれた。娘の夏休みには夫も一緒にマリナさんのところに遊びに来る約束もした。

そして思ったように、このアメリカ出張が彼女の仕事への姿勢を変え、人生を変えた。

 

その後、夫が故郷へ

アメリカから帰ってきてから、彼女はますます仕事に全力を注ぐ。同時に1年間、一緒にいられなかった娘にも愛情を注いだ。

ところがその1年後、夫の父親が倒れた。義父は地方で小さな工場を経営していたのだが、後継者はいない。夫には姉がいるが、結婚して遠方に住んでいる。

「もともと義父はオレの代で終わりだと言っていたけど、急に倒れたとなると話は別。従業員の生活もありますからね。夫は本当に悩んだと思います。私は『あなたの思い通りにしたほうがいいよ』とだけ言いました」

夫の出した結論は、故郷に帰ることだった。東京と故郷を何度か行き来したあげく、会社を辞めて、夫は家業を継いだ。2カ月に1度くらい、東京に戻ってくる生活を積み重ねていった。

相当に苦労したようだが最近、ようやく夫が継いだ工場は安定、これからむしろ業務を広げようとしているところだという。

「娘はこの春から中学3年生。中学に入ってからは、積極的に夕食を作ってくれるようになりました。私よりずっと料理がうまいんです。高校に入ったら留学したい、大学は海外でなんて夢が広がっているようです。そうなったら家族3人、バラバラになるんでしょうね。それもまたおもしろいかもしれません」

もともとは家族は一緒に暮らしたほうがいいし、子どもは3人ほしいなどと思っていたマリナさん。だが結果的に夫婦が一緒に暮らしたのは6年足らず。子どもはひとりしかできなかった。

「人生、思うようにはいかないとつくづく感じます。ただ、私は仕事にそれほど情熱的だったわけではないのに、結婚して子どもを産んでから仕事に恵まれるようになった。周りの環境や事態に柔軟に対処していくと、思わぬ人生を楽しめるのかもしれません」

同じ状況に置かれたとき、嘆くだけの人もいるだろう。ただ、マリナさんは「非常に楽観的」な性格。だからこそ常に変化する家族環境を受け入れ、積極的に楽しむことができたのかもしれない。
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