亀山早苗の恋愛コラム

年収や年齢の条件なし!人は「本質」だけで誰かを好きになれる?

人は、自分という人間をどうやって、どんな方法で証明すればいいのだろうか。誰かに紹介を頼んだり結婚紹介所を通したりする場合は、釣書は今も重視される。そんな「レッテル貼り」「タグ付け」にウンザリしている女性たちがいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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婚活も恋愛もうんざり……人はどうやって自分を証明するのか

婚活

人は、自分という人間をどうやって、どんな方法で証明すればいいのだろうか。かつての「お見合い」には釣書というものがあった。釣書とは身上書、つまり自分はこういう人間ですとアピールするための自己紹介書だ。

一目で恋に落ちるなら、あるいは互いに人間性を知り合ってから恋に落ちるなら、どこでどんなふうに育って、どんな性格だと証明する必要もない。だが、誰かに紹介を頼んだり結婚紹介所を通したりする場合は、釣書は今も重視される。そんな「レッテル貼り」「タグ付け」にウンザリしている女性たちがいる。

 

親戚が紹介してくれるというから……30歳、ヒロカさんの場合

そろそろ結婚を視野に入れた恋愛をしたい。そう考えたヒロカさん(30歳)は、顔が広いと言われている親戚の叔母さんに軽い気持ちで「誰かいない?」と尋ねた。

「そうしたら釣書を書けと言われて。簡単な自己紹介でいいわよというから簡単に書いたら、支持政党や宗教などもきちんと書けって。びっくりしました。そんなことまで書かないといけないのかしらって」

のちのち支持政党や宗教が違ったために破談になるくらいなら最初から告げておいたほうがいいのかもしれないが、そこでヒロカさんははたと考え込んでしまった。

「私という人間はどういう人間なのだろう。自分が思う私と、他人から見た私はおそらく違うだろうし、私が認めたい私と認めたくない私も違うはず。表面的にわかるような学歴や勤め先なんかを書いて、それで私自身を証明できるわけではないと思ったんですよね」

あくまでも紹介の入り口としての釣書ではあるが、そこでどういう誤解をされるかもわからない。

「私はミッション系の大学を出ていますがクリスチャンではないし、本当は夫婦別姓に賛同していますが、それを書いたら保守的な人にははねられるかもしれない。思想信条みたいなところで一致するのは大事かもしれないけど、つきあっていけば譲り合えることもある。なんだかね、いわゆる見合いみたいなものって虚しいような気持ちになってしまったんですよね」

紹介してもらって知り合って恋愛にいたって結婚する。その果てしない道のりがとてつもなく大変なのだと実感したという。

「考えてみたら人に自慢できるような趣味も特技もないんですよね。ああいうのを書こうとすると、自分という人間を客観的に見て落ち込んでしまいます(笑)」

平凡な人間同士が知り合って、お互いに相手を認め合うのがいちばんいいのかもしれないが、出会いがない場合、あるいは身元を知ってからつきあいたい場合は、自己紹介書を交わすのは効率的なのだろう。

「恋愛の先に結婚を見たいと思っている私には、親戚経由の紹介はむずかしいなとつくづく思いました。こちらは軽い気持ちで言っても、叔母は昔ながらの“見合い”と受け止めたんでしょうね」

今はせっせと親しい友だちに紹介を頼んでいるとヒロカさんは苦笑した。

 

結婚相談所は見合いよりもっと厳しい!? 38歳、アキコさんの場合

アラフォーで結婚相談所に行くと「もっと悲惨」と言うのは、アキコさん(38歳)だ。結婚などしなくてもいいと思っていたのだが、2年前に両親が相次いで亡くなり、親戚付き合いもほとんどなく、ひとりっ子の彼女は天涯孤独といえる状態になってしまった。

「仕事もあるし友だちもいるけど、やはり家族がほしい。どうしようもなく寂しいときがあるんです。そこで結婚相談所に登録しました」

自分で書いた自己紹介の紙を前にカウンセリングを受けた。もっと自己PRをしたほうがいいとアドバイスされたが、「正直言って、私はたいした人間ではないんです」と言ってしまったそうだ。確かに普通の神経をしていれば、売り込むほどの自分なのかと謙遜の気持ちがわいてくるはず。通常、人はそれほど傲慢ではないのだ。

「だけど婚活市場を勝ち抜くためには、自分がいかにすばらしい人間かを嫌みでなく伝える、知ってもらうことが重要なんですよね」

疲れてしまったアキコさんは、気分転換に婚活パーティーに出席してみた。そこでもまた自己紹介を書かねばならない。

「お互いにその紙を交換し、そこから会話を進めていくんです。でもびっくりしたのは、男性には年収を書く欄があって、同じ場所に女性は得意料理を書くことになっている。やっぱりこういう場では、従来の男役割女役割をきちんと果たせる人間でないと生き残っていけないのかなと思いました」

彼女は8カ月ほどで紹介所を退会した。今はスポーツジムに入ってひたすら体を鍛えている。

「ジムではどれだけ筋力がついたかが私の価値になる(笑)。そのほうがまだ健全かもしれないなと思っています」

自分に付随している学歴や年齢やさまざまな背景を取り払ったら、人には何が残るのだろう。そしてその「残った部分」がイコールその人の本質だとしたら、それだけで人は愛し合えるものなのだろうか。

「素性も背景も、名前すらわからない人と素の状態で話して恋をするということがあるんでしょうかね。素性も背景もあってこそ、その人なのだとも思うし、逆に付随するものに目がくらんで本質が見えずに恋愛するのは怖いとも思うし。ちょっと婚活をしてみただけで、人間って何?という疑問だけが頭の中に渦巻いてしまいました」

この疑問を抱えながら、私たちは人間関係を築いていこうとしているのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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