感染症

小児科医が子どもに教えたい咳エチケット

【小児科医が解説】保育園や小学校などの集団生活が多い子どもたちに正しい咳エチケットを教えることは、集団の中で感染症を拡大させないためにもとても大切です。大人でも、くしゃみや咳のときに口元を手で覆っている方は少なくありませんが、これは誤った咳エチケットです。正しい咳エチケットのコツと、子どもの健康を守るために必要な感染予防の基本を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

咳・くしゃみで、口元を手で覆うのは誤り! 間違えがちな咳エチケット 

咳エチケット

マスクもティッシュもない場合、咳は手で覆わずに、上着の内側や袖で口元を覆ってするようにしましょう


咳をする時、口元を手のひらで覆っていませんか? 実はこれは、多くの人がしている誤った咳エチケット。咳の飛沫で出た菌やウイルスを手で受け止めると、そこから感染を広げてしまいます。

もちろん、口元を正しく覆うことは非常に大切です。何もしないで咳をした場合、飛沫を拡散させることになり、飛沫によって多くのウイルスや細菌を撒き散らすことになってしまいます。咳やくしゃみで口から出る「飛沫」は、一般に直径5μmよりも大きな水滴と考えられていますが、口から飛び出す飛沫・飛沫核は、くしゃみの場合は1回で約4万個。咳の場合は1回あたり約3000個。また、5分間話すだけでも同じく約3000個と考えられています(※1)。

飛沫感染の危険な距離は2m以内とされていますが、これは保菌者の口から出た飛沫が周囲の人の口や鼻に到達し、感染しうる距離、という意味です。口から出た飛沫の落下速度は無風状態で30~80cm/秒なので、大人が立った状態で咳をした場合、口から出た飛沫が地面に落ちてしまうまでの飛距離は2~5m程度ということになります。
 

「手で覆う」だけでは接触感染の拡大は防げない

手で覆って咳をすると、手のひらにウイルスや細菌が付着します。その手で触った物に病原体が付着し、それを触った人へと接触感染を起こすため、感染を拡大させてしまいます。

厚生労働省も、何もせずに咳やくしゃみをすることはもちろん、咳やくしゃみを手でおさえることも咳エチケットの悪い事例として挙げています(※2)。
 

正しい咳エチケット……咳症状がある子どもにはマスクを

厚生労働省がは咳エチケットとして以下の3つを薦めています。
 
  1. マスクを着用すること
  2. ティッシュやハンカチなどで口や鼻を覆うこと
  3. 上着の内側や袖(そで)で口や鼻を覆うこと

特に子どもの場合は、咳が出る瞬間にティッシュやハンカチでしっかり口を覆うのは難しいと思います。咳やくしゃみをしているときこそ、マスクをつけさせるのがよいでしょう。マスクをつけていないとっさのときには、「袖や上着の内側」で口や鼻を覆うように教えましょう。

また、乾燥すると痰が出しにくくなりますので水分摂取を心がけることも大切です。痰を出しやすいように、背中を叩いたり、振動させたり、腹式呼吸をさせてみるのもよいでしょう。無理に咳を止めるのでなく、痰を上手に出させることで病原体を排出することにつながります。周りに対する感染予防と並行して、子どもの健康を守っていきましょう。
 

子どもの感染症予防のために今日からできること

空気が乾燥すると粘膜も乾燥し、ウイルスの感染力も維持されることがあります。室内環境は、湿度を50%程度に保ちましょう。また、インフルエンザ予防には、温度を上げておくのが良いでしょう。食事前や屋外から帰宅したときには必ず手洗いと手指衛生を行うことが大切です。外出中は、できれば口や鼻を触ったり、目をこすったりしないように伝えましょう。免疫を維持するためには、特別なことは必要ありません。基本は、規則正しい生活、ストレスの少ない環境、バランスの取れた食事、良い睡眠です。できることを心がけて、感染症を予防していきましょう。

■参考
※1 飛沫の飛ぶ距離は? 対面調理時の衛生面への影響は? (日本医事新報社)
※2 咳エチケット (厚生労働省)
 
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