夫の浮気で別居……別居解消後の関係はどうなる?
夫の浮気が原因で別居した場合、別居を解消してまた同居するきっかけはどこにあるのだろうか。そしてその後、また一緒に住んだら夫婦、父子の関係はどうなるのだろう。当時、幼い子どもが2人いるのに、別居することになったフユミさん(40歳)に話を聞いてみた。
明るくてモテる夫にある日「好きな人」ができて……
夫はもともと明るくておもしろい人間だと、フユミさんは言った。彼女自身はネガティブなタイプだったのだが、4歳年上の夫の明るさに引き寄せられるように結婚したのが11年前。ところが夫は根っから明るいタイプなので、女性たちが寄ってきてしまう。モテたのだ。
「それはわかっていたけど、実際に浮気をしている様子はないし、私にはいつもやさしかった。結婚してすぐ子どもが生まれ、その2年後に第2子ができて、私は子育てで回るほど忙しく、夫が浮気していることには気づきませんでした」
今から5年前、夫はフユミさんの前で手をついた。好きな人ができた、今回はチャラい気持ちじゃないんだ、別居させてほしい、と。
「それでも私はただの浮気だと思っていました。夫が別居したいなら出て行けばいいじゃないか、絶対ここに戻ってくるはずだと信じていたんです。夫は『本当にごめんね』と泣きながら出ていきました」
夫からは生活費がきちんと振り込まれた。フユミさんは、気持ちはもやもやしたが、当時、6歳と3歳の子を夫に会わせていたという。子どもへの愛情から戻ってくる可能性もあるのではないかと思ったからだ。
「ところが夫は意外とその彼女に本気だったようです。子ども会うとうれしそうでしたが、夕方には『彼女が待っているから』と帰ってしまう。相手は夫の中学時代の同級生でした。当時から夫は彼女に片思いをしていて、偶然再会したために恋心が蘇ったみたい。私は子どもに会いに来た夫が私とはほとんど会話をせずに帰っていくのを虚しく見つめていました」
別居生活が3年を超えたころ、夫がうなだれてやってきた。
大腸がんになった夫
夫はフユミさんの顔を見るなり泣き出した。別居したいと言ったときとは違う涙のように彼女には感じられた。「話を聞いてみたら、夫が検査で大腸がんだとわかったんだそうです。病院からまっすぐうちに来たんですって。真っ先に話を聞いてほしいのはフユミだとわかったって……。そのときはまだがんだと決まったわけではなかったんですが、夫はすっかり悲劇のヒーローになっていて(笑)、『死ぬときはフユミに手を握っていてもらいたいんだ』と……」
夫はそのまま彼女のもとへ行き、平謝りに謝り、なけなしの貯金をはたいて彼女に渡したという。
「その後、やはりがんだったとわかったんですが、夫はなんだか晴れやかな顔をしていましたね。子どもたちに励まされ、一生懸命治療に取り組んでいました。手術と抗がん剤治療で、今ではすっかり元気です」
フユミさんは今でも、別居していたときのことを思い返すと、ときどき夫を許せなくなるという。身勝手に出ていって、身勝手に戻ってきて、振り回されていたと腹も立つ。
「それでも夫は病気を告げられたとき、恋してしまった相手ではなく、私を選んだんですよね。私は拒絶することもできた。でもしなかった。やはり夫の心の中に深く存在を刻むことができたのは私だったという思いはあります」
夫が戻ってきたとき、彼女は「お帰り」と言ったそうだ。それを聞いた夫の目は潤んでいた。なぜかふたりで手を握り合い、ハグもしたという。家の中は灯がともったようだった。子どもたちはニコニコしていたという。
「元気になるとまた、少し浮気の虫が疼いているんじゃないでしょうか。でも最近は、10歳になった娘の目も厳しいですよ。どこまでわかっているのか知りませんが、ときどき、『パパはママに感謝しなくちゃいけないんだよ』なんて言ってる(笑)。夫も、うん、とうなずいて『パパはママが大好きなんだ』と。浮気なのか本気の恋なのか知りませんが、夫の関心が他の女性にいっていたのは事実。悔しかったし悲しかったけれど、きっと私は夫が好きだったんだと思います。今も好きですよ。だから別れなかった」
夫が戻ってきて数カ月後、フユミさんは、ふと、病気にならなければ夫は戻ってこなかったのだろうかと疑問を抱いた。
「すぐにそれを口に出しましたよ。すると夫は『結局、オレにはフユミしかいないって最初からわかっていたようが気がするんだ』と言ったんですよ。うまいでしょう、こういう言い方をするからなんとなく情も戻りやすいんですよね」
別居解消、同居を再開するときは夫がどういう姿勢で臨むのかが大事なようだ。妻の気持ちをどうやって取り戻すのか。反省の言葉より心の底からの愛の言葉があれば、妻の心も少しはやわらぐのではないだろうか。