4大会連続出場で初めてのグループリーグ敗退
オリンピックイヤーの日本サッカー界が、いきなり窮地に立たされた。1月8日開幕のアジアの公式戦で、3試合を戦って1勝もできなかったのである。「東京で金メダル」を合言葉とする森保一監督のチームに、いったい何があったのか?「東京で金メダル」を合言葉とする森保一監督(写真:徳原隆元/アフロ)率いるチームに、いったい何があったのか?
今回行われている大会は、アジアサッカー連盟(AFC/エーエフシー)のU-23選手権決勝大会である。文字どおり23歳以下の選手による大会で、五輪の男子サッカーが23歳以下(※参照)で争われるため、東京五輪のアジア最終予選という位置づけを持つ。
森保一監督が率いる日本は、開催国枠ですでに五輪出場が決まっている。アジア最終予選で負けても、失うものはない。
日本はサウジアラビアとシリアに1対2で競り負け、カタールとの第3戦は1対1の引き分けに終わった。グループリーグ最下位で、開催国タイから帰国することになったのである。グループリーグで敗退するのは、通算4度目のU-23選手権出場で初めてのことだった。
不運はあった。3試合すべてでビデオ判定(ビデオ・アシスタント・レフェリー、通称VAR)によりPKを取られた。カタール戦のPKは明らかに不可解なもので、前半にはVARによって選手が退場処分に追い込まれた。これもまた、日本を貶めるかのような裁定だった。今大会の日本は、VARに翻弄されたということはできる。
メンバーもベストではない。日本代表にも召集されている久保建英、堂安律、冨安健洋は、ヨーロッパのクラブでプレーしているため、今大会には出場していない。欧州の主要リーグが開催中のため、クラブでの活動が優先されるとの国際的な取り決めに基づいたものだ。
彼らと同じくヨーロッパのクラブに在籍する中山雄太、板倉滉、三好康児、安部裕葵、前田大然らも、同じ理由でチームに合流していない。欧州のクラブ所属で今大会に参戦したのは、食野亮太郎だけだった(その彼も、グループリーグの3試合のみの出場予定だった)。
久保や堂安らが出場していれば、まったく違う結果になったかもしれない。とはいえ、Jリーグでプレーする選手を中心としたチーム編成になるのは、あらかじめわかっていたことである。そのうえで「優勝」を目標に掲げたのだから、森保一監督は批判を免れない。
敗戦の核心はどこに?
「失うもののない大会で負けたことに対して、そこまで騒ぐ必要があるのか?」と思う方がいるかもしれない。森保監督のチームは、五輪で金メダルを目標にしている。1968年の銅メダルが過去最高の日本には、かなり高いハードルだ。チームの目標から逆算すると、「ベストメンバーではなくても、アジアで負けているようでは金メダル獲得など不可能だ」との意見が勢いを持つ。
VARに泣かされたのは事実だが、敗戦の核心はそこではない。
日本は3試合で1点ずつしか取れていない。VARによるPKがなかったとしても、サウジアラビアとシリアには勝てていなかったことになる。
VARによるPKについて、違った角度から見れば、同じことを3回繰り返した、ということもできる。1対0で勝ち切る守備力も、複数得点を記録して勝利する攻撃力も、今大会のチームは持ち得ていなかったのである。
結果だけでなく内容も乏しかったことで、森保監督の進退を問う声が高まっている。メディア上では「解任」の二文字も使われている。
監督を代えるのは、ひとつの選択肢だろう。しかし、根本的な問題は違うところにある。
U-23日本代表の次の活動は、3月27日と30日のテストマッチとなっている。ところが、森保監督は日本代表監督も兼任しており、同26日と31日にはカタールW杯アジア2次予選が組まれている。26日は日本代表を、27日はU-23日本代表を指揮するのは物理的に可能だが、31日のモンゴル戦はアウェイだ。日本代表を優先するなら、U-23日本代表の30日の試合には立ち会えない。
2次予選突破が決まっていないことを考えると、この期間は日本代表の活動を優先する公算が強い。そうなると、U-23日本代表の強化が進まない。
五輪への強化を最優先すれば、森保監督はU-23日本代表に専念し、久保や堂安らもU-23日本代表に招集してテストマッチに臨んでいくことが理想だろう。しかし、日本代表の強化を停滞させることもできない。五輪終了後の今年9月には、カタールW杯アジア最終予選がスタートする。そして、最終予選前の活動は、3月と6月の2次予選しかないのだ。
森保監督にこのまま兼任させるのか。それとも、どちらかの専念させるのか。U-23日本代表を離れることになれば、強化スケジュールの見直しも必要になってくる。
サッカー協会には素早い決断と、しっかりとした説明が求められる。
(※)五輪の男子サッカー競技は、サッカーワールドカップとのすみ分けをするために、23歳以下の選手に出場資格を与えている。同時に、24歳以上の選手(オーバーエイジ)を3人まで加えることができる。