「贅沢言うな」という母に反発……結婚は妥協なのか
結婚はしたいけど妥協はしたくない。そんなアラサー女性が母親に投げつけられたひと言に思い悩んでいる。結婚は妥協の産物なのか、どこまで自分を貫くのか、悩みどころだという。
恋愛はもういい、結婚したい
大学を卒業して就職して8年たつカホさん(31歳)。痛烈に「結婚したい」と思うようになったのは2年ほど前だという。
「周りが少しずつ結婚していって、30歳目前で独身なのは仲良しグループ6人のうち私ともうひとりだけ。でもその彼女は着実にキャリアを積み重ねていて、仕事が恋人というようなタイプ。仕事もそこそこ、恋愛もそこそこの私は中途半端で、もう結婚しかない、やっぱり最後は結婚でしょという気分になっていたんです」
とはいえ、当時、結婚したい相手はいなかった。20代でさんざん恋愛はしてきたものの、結婚に至る相手には巡り会えなかったのだ。
「いざ結婚となると、経済的にも安定している人がいいし、子どもができたら私はあまり働きたくないし、家だってほしい。何より私のことが大好きでいてくれる人じゃないと困る。大事にされたい、ずっと愛されたい。そう思ったんです。既婚の友人にそう言うと、『今だけだよー、そんなこと言えるの』と笑われましたけど」
友人に頼んで、いろいろな人を紹介してもらったが、相手にまだ結婚の意志がなかったりひとり語りが過ぎたりと、どの人もカホさんのストライクゾーンに入ってこない。
ついには母親に結婚したいと訴えた。カホさんの母は待ってましたとばかりに「娘の婚活」にいそしむようになった。
「母は顔が広いので、すぐに何人か候補が現れました。経済的には安定している人ばかりでしたね。公務員だったり有名企業のエリートだったり。ただ、釣書を見ているうちに、心の中で何とも納得できない気持ちが芽生えてきたんです。まるで商品を買うかのようにお互いにカタログを見て、これがいいとかあれがいいとか……。こんなことをしないと結婚できないのかと悲しくなりました」
それが見合いというものだと母親に説得された。結婚を前提にしているのだから、条件が合う人のほうがいいでしょ、と。カホさんも理屈ではわかっているのだ。だからそのうちの何人かと会ってみた。
どこで妥協するのか
経済的に安定していても、一緒に生活していくのだから相性というものがある。
「恋愛感情は持たなくてもいい、だけどこの人となら一緒に暮らしていけるという確信はほしいですよね。でも会った人たちは、みんなどこかピントがはずれていた。結婚してやってもいいけどという態度の人もいれば、『女性とはつきあったことがないんです』という人も。30代になって一度も女性とつきあったことがなくていきなり結婚というのもどうなんだろうと考えてしまって」
2カ月の間に5人ほど会ったところで彼女はすっかり疲れ果ててしまった。母は何が不満なのかと彼女に詰め寄ってきた。
「母の言い分としては経済的に安定していて家庭を作る気があるのなら、それでじゅうぶんだと。相性なんてそのうち合ってくるものだというんですよね。母自身は恋愛結婚なのに(笑)。そう言ったら、『恋愛結婚だからうまくいかなかったの。結婚なんて条件だけで決めたほうが、あとから情がわいてくるの』と」
その後も数人と会ったが、会えば会うほど「結婚って何?」と疑問がわいた。恋愛感情を無視して結婚して、子どもができて。そこに何の意味があるのだろう、と考えるようになってしまったのだ。
「すると母は、『あんたが贅沢言える立場じゃないのよ』って。30歳を過ぎていて美人でもないくせに何を言っているのかと罵倒されました。父がこそっと『結婚だけが人生じゃないから』と言ってくれたので救われましたけど。父も母には苦労させられてきたんだなと初めて父の気持ちがわかった」
どこまで恋愛感情を封印すればいいのか、どうやって相性を見抜いたらいいのか、そしてそもそも結婚とは何なのか。カホさんの逡巡は今も続いている。