最後の恋だから思い残すことなく
アラフィフだって恋をする。年齢が気になるし、シワやシミも心配だけど、それでも人は恋をするものなのだ。この年代になると、「昔の男」との再会も多くなる。
同窓会で再会して
「よくある話かもしれません。私と彼とは高校の同級生でした。高校を卒業して30年という節目で久々にクラス会があって、そこで彼と再会したんです」
ユイコさん(51歳)は、少し遠くを見るような目をしながらそう言った。昔好きだった彼もやって来ると聞き、ユイコさんはいつもよりおしゃれをして出かけた。
当時大学生の長女と専門学校生の長男が、おしゃれをした母親を送り出してくれたという。
「夫とは仲が悪いわけではないけど、まあ、もう家族ですから。ふたりで出かけるなんてことも親戚の集まり以外にはないですねえ。友だちの中には、夫婦で近所のカフェに行くなんていう人も稀にいますが、例外的存在ですね、そういう夫婦は」
クラス会に行ってみると、みんな年をとっていたが、自分もそうなのだと合点がいった。それなのにしゃべった瞬間、全員が高校生に戻っていた。
「楽しかったなあ。何十年も会ってないのに、何でも言いたいことが言えるんですよ。高校生当時より私なんて、ずっと気楽に男子とも話せた。好きだった彼には、私、昔、好きだったのよと言っちゃいました。みんなが『知ってたよ』なんて言ってくれて」
まだ心の柔らかい10代後半をともに過ごした友人たちとは、30年たっても素でつきあうことができるのだろう。
「もちろん、そんなところで恋愛感情が再燃するわけでもありません。だから二次会が終わって、三々五々散っていくときに彼に『あと一杯だけ、ふたりでどう?』と言われて、気軽についていきました」
バーで酔ってくどかれて
バーでふたりで再会を祝した。「ふだんお酒なんて飲まないから、けっこう酔っていましたね、私。彼は『ユイちゃんが、こんなに大人のいい女になっているとは』なんて言い出したときも、なに言ってるのよと笑い飛ばしてた。でもユイちゃんって言われたのはうれしかったですね。高校時代の仲間ならでは」
店を出たとき、ふらっとしたユイコさんを彼が支えてくれた。その手の“確かさ”に彼女はドキッとした。しっかり自分を支えてくれる意志的な手を感じたのだという。
「彼が私に好意をもってくれていると感じました。私はこの手にもっと支えられたいとも思った。彼がそのまま私を抱きしめてくれたとき、体から力が抜けました。いい年して路上で抱き合って、キスまでしてしまったんです」
40代後半にもなってはしたない、非常識だと思う人もいるだろう。だが、恋は人を子どもにするし、愚かにもする。路上ではしゃいでキスするなんてバカげたことは、むしろ「大人」でないとできないのかもしれない。
「無謀なことができる自分に酔っていたのかなあ。でもそれが楽しくて、そこから彼とはときどき食事をしたりしていました。もっと深い関係になるつもりはなかったんです。でもクラス会から半年後くらいかなあ、彼が出張で2週間ほど海外に行っていたことがあって。その間、とても寂しかったし、あまり治安のよくない場所だったので、彼のことが心配でした」
半世紀も生きてくると、昨日まで元気だった人がふいにこの世からいなくなるという経験もしている。会いたい人には会っておかないと、次はないかもしれないと思うようになるのだ。
「彼が帰国して連絡をくれたとき、本当にほっとしました。同じことを考えていたんでしょうか、次に会ったとき、彼がホテルを予約していてくれたんです。でも50歳を迎えたとき、やっぱり別れたほうがいいのかと揺れました。“いい年して”という言葉が頭から離れなかった。彼にそう言ったら、“いい年だからしたいことをしようよ”って。それもそうねと答えました」
もちろん、夫には知られないよう最大限の注意を払っている。ただ、もし夫が自分と同じように不倫をしているとしても、「許せるような気がする」と彼女は言う。
「結婚と恋愛は違うということを身をもって知ったから。結婚生活もこれだけ長いことやっていると、ふと外で恋することもあるし、それはそれでいいんじゃないかと最近、思うんです。だから夫にも素敵な女性がいるなら、人生をより豊かに送ってほしいなと思っています」
人生経験からくる余裕なのか、ユイコさんは微笑みながらそう言った。50代でも、恋する女のキラキラ感は、若い人のそれとたいして変わらない。