交際を断ったらブチ切れた男
男女の仲は、お互いに惹かれ合って自然に近づいていくのがいちばんいい。だが、最初から「友だちの紹介」など、出会いをセッティングされた場合は、なかなか自然にはいかないものだ。
勘違い男が盛り上がってしまった
「30代も後半になって、さすがにちょっと焦り、誰か紹介してと触れ回っていたら、学生時代の先輩が紹介してくれたんです。相手は同い年、『ふたりで気軽に会って友だちとして始めてみれば』という先輩の言葉があったので、私は気楽に会ったんですよね」
そう言うのは、ミカコさん(38歳)だ。彼はそこそこ有名な企業のサラリーマンだった。
「その年で親と同居というのはちょっと気になったんですが、まあ、まずは本人次第だなと。会ってみたら、まじめそうな人でした。車で来たからとホテルのティールームで少し話をしました。お互いの共通の知り合いであるその先輩の話に始まって、仕事のこととか趣味のこととか。まあ、あたりさわりのない会話をして」
その後、食事でもということになり、ホテル内の和食の店へ。すると彼は、猛烈に自分の話をし始めたという。
「実は私、某企業のクレーム担当なんです。人の話を聞くのは慣れている。相手の心の奥にたまったものを吐き出させるのもけっこう得意(笑)。それで彼としては、自分に興味をもったんだと思いこんだんでしょうね。『僕のこと、もっと知りたいでしょ』って。自分が聞いてもらっているくせに、妙に上から目線なの(笑)。二度目はないなと思いつつ、今日だけでも気持ちよく帰ってもらおうとヘンな職業意識が出てしまって、彼は親の自慢から、弟の悪口、上司への恨みつらみまで一気に話しました。おもしろかったですけどね。仕事の参考になるなあと思いながら聞いていました」
この時点で、彼は「脈あり」だと判断したようだ。確かに自分の話を一生懸命聞いてくれる女性に会ったら、恋愛経験の少ない男性は、彼女が自分を好きなのだと思いこんでしまうのかもしれない。
留守電に「地獄に落ちろ」
帰りは彼が車で自宅近くまで送ってくれた。彼にとっては通り道のようなものなのだが、車を降りる際、「最初のデートだから甘やかしちゃった」と言った。「は?と思いました。ムカッときたので、その場で5000円出して、ガソリン代ですからと助手席に置いてきました。彼はぽかんとしていましたね」
翌日、紹介してくれた先輩から電話が来た。彼から電話があって、「ミカコさんが僕のことをすごく気に入ってくれた」と言っていたというのだ。彼女は呆れて、彼の一挙手一投足、最後の言葉も伝えた。先輩は、「ごめん。彼、恋愛経験少ない上に、過保護で育ったお坊ちゃんなんだよね。根は悪いヤツじゃないんだけど」との返事。とにかく彼とはつきあえないからと電話を切った。
「そうしたらその数日後、彼から電話があったんです。私は出ませんでしたけど。あとから留守電を聞いてみたら、名前も名乗らず、『地獄に落ちろ!』という罵声が入っていました。思わず笑っちゃいましたよ。そんな濃い関係でもないのに……」
それからもときどき、彼の携帯から無言の電話などがあった。無視していたが、気持ちが悪いので先輩に告げた。それ以降、あきらめたのか二度とかかってこない。
「職業柄とはいえ、最初からあまり相手の話をきちんと聞きすぎるのも誤解を生じさせることになるのかもしれませんね。なんだかそれ以来、怖くなって紹介してもらうのはやめました。自力での出会いがなかなかないのがつらいところなんですが」