「恋愛勘」が鈍る? アラフォー女性、恋愛の落とし穴
大人の恋愛や結婚に「適性年齢」などない。いくつになっても人は恋心をもっているのだ。ただ、あまりにも恋愛から遠ざかっていると、善し悪しの問題ではなく、どうやら恋愛勘が鈍ってしまうこともあるようだ。
20歳近く年下の男性に「結婚したい」と言われて
「別に恋愛から逃げていたわけではないんです。仕事が忙しくて、恋愛する余裕がなかったというのが本当のところです」
そう言うのはマミさん(43歳)だ。大学時代に留学、卒業してからは貿易関係の仕事に自分の能力と時間を捧げてきた。
「それだけ仕事が楽しかったんです。出張で世界中を飛び回っていた時期もあります。恋が始まりそうになっても、すぐ海外に行ってしまうから、帰ってきたら相手に彼女ができていたという泣ける話も多々あります」
はっと気づいたら40歳になっていた。仕事はますますおもしろい。交友関係も幅広く、時間に余裕ができた今は、友人たちと旅行することもある。会員になっているスポーツジムでも友人ができ、グループでバーベキューをしたりテニス大会を開いたりと活発に行動している。
「でも恋愛には恵まれていなかった。友人に、『〇〇さんがマミのこと、好きみたいよ』と言われても、好きなら直接言ってこい、と思っちゃうんですよね(笑)。結局、恋愛がめんどうになっていたんだと思います」
そんなマミさんに近づいてきたのが、SNSで知り合ったケイイチさん。19歳年下の当時、22歳だった。
「いつも投稿を見ています。バリバリ仕事をして楽しそうに過ごしているあなたの投稿が、僕の生活のよりどころになっています」
そんなメッセージをもらった。
「やりとりしているうちに、彼がとんでもなく年下だということがわかりました。彼が会いたいと言ってくれたので、じゃあ、会いましょうと。年下だからと排除する気にはなれなかった」
そこまではよかった。年上だからと食事をごちそうもした。だが、何度か会っているうちに、彼は「あなたのことが大好きになった」「結婚したい」と言うようになっていく。
本気にはしていなかったけれど
最初のうちは笑い飛ばしていた。だが数カ月すると、彼は「あなたに受け入れてもらえないなら、僕は生きていられない」などと言うようになる。
会えば「元気になった」と笑ってくれるのだが、会えない日々が続くと、彼の精神状態が不安定になるのが手に取るようにわかるのだ。
「それでも私、彼の期待に応えてあげなければいけないと思い込んでいて。これは恋愛ではないと思っていたけど、振り返れば私自身も、超年下の男性から甘いことを言われてその気になっていたんでしょうね、きっと。この関係が恋愛として成り立つのかどうかと考えもせず、好きだ、結婚したいという言葉に飲み込まれていったんです」
そのうち彼が彼女の職場にやってくるようになった。「僕は婚約者です」とマミさんの同僚や上司に挨拶もした。
「上司があとから、ところで彼は何をしている人なんだと聞いてきて、そこで初めて彼の職業も出身もまったく知らないことに気づきました。『そもそも、あなたは本当に彼のことが好きなわけ?』と同僚にも言われ、あれ、私、何をしているんだろう……と」
自分でも気づかないうちに、好きだ、結婚したいという言葉をすんなり受け止めていたのかもしれない。恋愛ってどうやって進んでいくものだっけ、好きになる気持ちってどういうものだっけと彼女は混乱したという。
「恋愛勘みたいなものが皆無だったんですよ、そのときの私。だから好きだと言ってくれる人を無条件で受け入れようとしていた。恋愛の手順も段取りも、恋愛におけるときめくような感情もまったく忘れ去っていて」
結局、彼に対してまったく恋愛感情をもっていないとわかったマミさんは、彼から離れた。彼は「婚約破棄だから200万円払え」と言いだしたが、そういう関係ではないと突っぱねた。友人たちからは、「はじめからお金目当てだったんじゃないの」と笑われたという。
「笑われてもしかたがないくらい、恋愛に疎くなっていたんです。甘いことを言われてその気になって酔ってしまったなら、まだわかりやすい。だけど私の場合は、そうではなくて、恋愛のいろはさえわかっていなかった状態。だから相手をそのまま受け入れようとしていただけ。恋愛勘を失っていたんです」
もう一度、ときめくところから始めなければ、と彼女は表情を引き締めた。