いつの間にか自己評価が下がっていた……夫との関係、見直す時期かも
いいところもダメなところもあるのが人間。ただ、欠点を指摘され続けると、人は自己評価が下がっていく。友人にそれを指摘されたカナエさん(44歳)が、いつしか陥っていた「私はダメな人間」の闇とは。
友人にズバリと言われて
結婚して13年。11歳の長男と8歳の長女がいるカナエさんは、つい先日、久しぶりに高校時代の仲良し3人と会った。
「私は結婚して子どももいるけど、もうひとりは既婚で子どもなし。あとは独身の子と離婚してシングルマザー。4人それぞれまったく違う人生を歩んでいるんです。それぞれに忙しいから4人全員で集まったのは10数年ぶりじゃないかな。連絡はとっていましたけど」
顔を合わせたとき、カナエさんは「みんないい服着てる」と感じたそう。自分は子どもがふたりいて、パートでがんばってはいるが夫の給料も実質目減り。決して裕福な生活は送っていない。
「あとの3人は余裕があるように見えました。まあ、でもそんなことは考えずに楽しもうとしたし、実際、楽しかったんですが……」
それぞれの近況を話したり昔の話で盛り上がったり。そうしているうちに独身の友人が、カナエさんに向かって突然言った。
「カナエ、さっきから『私は何もできないけど』とか『私は本当にダメで』とか、そういう否定的な言葉が多いよ。そんな性格じゃなかったよね」
他のふたりも「私もそう思ってた」と同調する。それを聞いて、カナエさんはドキッとしたという。
「自分では気づいていませんでした。だけど私、夫によく『ほんっとにカナエはダメだなあ』『どうしてこのくらいきちんとできないの?』と言われるんですよね。家事が苦手ということもあるんですが、細かいところに神経が行き届かない。そのたびに『私はダメだ』と落ち込んでしまう。結婚してからずっとそんな感じだったんです」
その話をすると、既婚の友人が、「それってじんわりとしたモラハラだよ」と言い出した。
夫に貶められているとは思っていなかった
夫はもともと職場の先輩だった。カナエさんは出産後、退職して今は家の近くでパートをしているが、同じ職場だったころから夫の言うことはいつも正論だった。だから彼女は結婚後も、夫は正しい、それができない私がダメなんだと信じてきた。「モラハラっていうと大げさに聞こえるけど、少なくとも私たちが知っているカナエはもっと明るくて堂々としてた。自分で自分にダメだという評価をくだす人ではなかったと3人が言うわけです。そこでようやく結婚前の自分を思い出した。確かにもともと神経質なタイプじゃないけど何でも笑い飛ばして明るかったな、と。今の私はいつも周囲や夫の目を気にして、『正しくないことを言ったりしたりしているんじゃないか』と心の底で思ってる。子どもの教育上、と夫に言われるとますます卑屈になって……」
いつも正しく穏やかに子どもと接しなければいけない、家庭は平穏でなければいけない。いい母で、いい妻でと自分を必死に整えてきたとカナエさんは気づいた。
「あからさまにバカにしてくるわけじゃなくて、ぼそっと『ダメだなあ』って言われるのが傷つくのよね。わかりやすく下に見るならケンカもできるんだけど。でもね、私が離婚したのは結局、夫が対等な人間として私を見ていなかったからなんだよ」
離婚した友人にそう言われたとたん、カナエさんは涙を止めることができなかった。自分はつらいと思っていたんだと初めて意識したからだ。
「夫との関係は早く見直したほうがいい。結婚して10年くらいたったら、違和感を覚える力関係も出てきてしまうから、言うべきことは言わないとダメってみんなに言われました。1カ月後に結婚記念日なので、その日に思い切って言いたいことを言ってみようと考えています」
ただ、友人たちに会ってからカナエさんは少し気持ちが変わったという。少しだけ本来の自分を取り戻したそうだ。夫との関係を調整していくことはできるのだろうか。