夫の浮気がバレないケースの妻の言い分
男たちは言う。「うちの妻は僕が浮気しても気づかないから」と。実際には、気づいていても見て見ぬフリをしている妻のほうが多いというのが長年、取材してきた実感だ。だが中には本当に気づいていない妻たちもいる。長年、夫の浮気に気づかなかった妻の言い分とは。
信頼していたから
「私は本当に心から夫のことを信頼していたんです。学生時代からつきあって、卒業と同時に結婚。共働きをしながらふたりの子を育てて、夫とは一心同体みたいな関係だった。だから夫が10年にわたって外で恋愛していたと知ったときは、1週間くらい寝込みました」
そう言うのはユミさん(47歳)だ。仕事を続けたかったユミさんが第1子を産んだのは28歳のとき。多少のキャリアを積んでからの出産だった。第2子はそれから5年後。
ユミさんが夫の浮気を知ったのは2年前。相手は自分たち夫婦より10歳年下だった。つまり彼女が25歳のときから夫と関係があったのだ。
「浮気が始まった当初のことを思い返すと、子どもが7歳と2歳。夫婦ともども仕事と家庭で超多忙なころです。夫の妹がベビーシッターを買って出てくれたりして、いろいろな人の手を借りながらの生活だった。あんな時期によく浮気なんて考えられるな、とまず思いましたね」
思い返しても、「そういえばあのとき、夫の様子がヘンだった」ということが浮かんでこないと彼女は言う。
「それは何より、私が最初から夫を信じていて、疑惑なんて抱こうともしなかったからでしょうね」
知ってしまったのは、ひょんなことからだ。出張だと言って出かけた夫から、「予定が延びたので1日遅れて帰る」という連絡があった。
「がんばってね、気をつけてとメッセージを送って、なにげなくニュースを見ていたら、夫が出張だと言った土地とは関係ない場所での豪雨のことをやっていた。空港が映ったんですが、そこに夫が見知らぬ女と立っていたんですよ。目を疑いました。あわてて別のニュースを見たら、またも映っている。出張じゃなくて、女と旅行に行っていたんです。夫が会社で仲良くしている人で、家族ぐるみでつきあっている男性に電話をかけて、『うちの夫、出張してないよね』と言ったら、彼がアワワワって。わかりやすい(笑)」
そこから修羅場となったのだが、今は冷戦状態のまま落ち着いている。夫と彼女の仲は続いているのではないかとユミさんは推測している。
夫が恋などするはずがないと思っていたから
信頼とはまた少し違って、「夫が恋などできるはずがない」と思っている妻も多い。家ではだらしないし、子どもより子どもっぽいしとちょっと下に見ている妻からすると、「モテるわけがない」と思ってしまうのだろう。だが、夫は外では「男」なのである。
「家でだらだらしている夫に、いつも『そんなことじゃ会社の若い女性から嫌われるわよ』と言っていたんです。だけどあるとき、『彼は私のことを愛していると言ってくれています。もう3年もつきあっているのに、どうして奥さんは別れてくれないんですか』というドラマみたいな電話がかかってきたんですよね」
苦笑しながらそう言うのは、アユミさん(45歳)。結婚して13年、12歳の娘も、「おとうさん、クサイ」と避ける年齢になっている。
「悪い人じゃないけど、脱いだら脱ぎっぱなし、ネクタイひとつ自分で選ばない、身の回りのことにまったく頓着しない夫に、まさか女性がいるなんて思わなかった。この人を男として見る人がいるんだなとちょっと驚きました」
アユミさんはその電話の向こうにいる、おそらく自分より若い女性に、「あんなだらしない夫、ほしいならあげますよ。その代わり、慰謝料と養育費はたっぷりもらいますから。あなたのことも訴えます」とドスをきかせて言った。それきり電話はかかってこない。
「心なしか夫に元気がないような気もするので、フラれたのかもしれません。ここ5年くらいは本当に同居人という感じですからね。他の女とどうこうあったからといって、『不潔!』みたいな気持ちにはならない。自分でも不思議ですけど。息子が恋愛した、というような感じ」
家庭運営に問題がなければ見過ごす妻も現にいるのである。