略奪婚したものの……
不倫関係から“略奪婚”したものの、ふたりの関係はそこからがスタート。しかし、世の中にはびっくりするようなことがあるもので……。
必死の思いで結婚したのはよかったけれど
トモコさん(36歳)が、10歳年上の職場の上司と不倫関係に陥ったのは28歳のとき。
「すでに婚姻関係は破綻している、あとは離婚の条件だけなんだという彼の言葉を信じていました。だけど5年近くたっても離婚しようとしない。丸5年たったら別れる、私だって結婚したいし子どももほしいと言うと、彼がようやく動き出したんです」
離婚が成立したと聞いて、トモコさんはすぐに転職。ようやく彼と婚姻届を書いて提出したのはつい2年前のことだ。つきあい始めて7年たっていた。
彼は「すべて失った」と言って彼女の部屋に転がり込んできた。もちろん、慰謝料や養育費のことは理解していたつもりだったし、彼女自身、子どもができても仕事は続けるつもりでいた。だが、一緒に生活を始めると、なんだか彼の様子がおかしい。
「買い物に行ってもカードを使わないし、ときどきこそこそ電話していたりもするし。もしかしたら離婚を後悔して、前の奥さんと連絡をとりあっているのかもと疑心暗鬼になりました。私は彼と結婚したい一心だったけど、彼はそうじゃなかったのかもしれない」
彼の給料はだいたい想像がついたが、彼は給与明細も預金通帳も見せてくれない。とにかく彼に元気がない。自分と結婚したことで彼がみすぼらしくなっていく。彼女はひとり苦しんだという。
「3カ月くらいたったときかな、一緒になって後悔してるのと尋ねたんです。そうしたら彼が、ようやく『言えなかったことがある』と」
自己破産していた彼
彼の離婚がなかなか成立しなかったのは、妻からの条件が厳しかったから。住んでいたマンションは妻のものに、そして月々10万円の養育費、慰謝料は500万円など。実は彼と妻とは大学時代の同期生なのだが、途中で自営業だった彼の実家が倒産、その後の学費を妻の両親が払ってくれたという経緯がある。もちろん妻のことは嫌いではなかったが、そういう背景があっての結婚だったのだ。だから妻は離婚を受け入れなかったし、離婚するなら当時の学費も返せということになった。
「夫は結局、あちこちから借金して妻の言うなりにお金を払った。ところが最終的には夫が破綻。自己破産したんだそうです。自己破産が認められるまでけっこう時間がかかり、しかもそれを私に言えなかったから、結婚するまでに時間がかかった、と。もっと早くに離婚自体は成立していたようです。話してくれて、ようやくいろいろなことが合致しました。カードを使わなくなっていたこともそうだし。こそこそ電話していたのは、まだ弁護士さんとの話が継続していたからだったようです」
夫は友人からも借金しており、自己破産してもその分だけは返したいと思っているようで、毎月、給料から数万円を友人に返済していた。だから預金通帳などはいっさい、トモコさんに見せなかったのだ。
「彼は『こんなオレのこと、イヤになっただろ』と言いましたが、離婚するために借金を重ねてしまったのだから私にも責任があると感じていたんです」
ところが話はさらに展開がある。彼の借金は離婚するためのものでもあったのだが、一方で別の女性に貢いでいたという話が出てきたのだ。それを知らせてくれたのは、彼の元妻。
「元妻は、彼が貢いでいる女性と再婚したのだと思っていたそうです。だけど調べてみたら彼が結婚したのはノーマークだった私。それで『大丈夫かしらと心配になって』と連絡をくれたんです。もう誰を信じたらいいのかわからない状態でした」
そこを追求すると、彼は泣いて土下座した。誤解させて申し訳ない、と。そして、別の女の件は元妻の邪推だと言い張った。
「もうなんだかわけがわからない。結局、真相がわからないまま今に至っています。彼の給与を管理したいけど彼はそれはさせてくれない。もしかしたら今も誰かに貢いでいるのかもしれません。ただ、友人や親たちに幸せになると大見得切って略奪婚した、という状態なので、弱音を吐けないんです」
ただ、このままでは子どもを育てることもできない。あと1年、様子を見た上で彼との関係を決めたいとトモコさんは疲れた表情で言った。