住宅ローンも完済。驚異的な貯蓄ペースはなぜ達成できた?
自らの努力と工夫で数千万円の貯蓄を手にした方に、その極意を語っていただく「貯蓄の達人」企画。今回は、特別なことをしなくても43歳で4200万円貯めたjacky-cさんに登場してもらいます。★マネープランクリニック編集部では貯蓄達人からのメッセージを募集中です★
●基本データ
jacky-cさん(仮名)
(男性・石川県・会社員・43歳)
家族/妻44歳・会社員、子ども7歳
持ち家一戸建て
現在の貯蓄ペースは年間426万円
厚生労働省の「国民生活基礎調査〈2017年版〉」によると、40代の平均世帯年収は707万円とのこと。手取りで530万円前後でしょうか。対して、jacky-cさん(以下、Jさん)の世帯年収が手取りで768万円(マネーデータ参照)。この数字は平均所得よりは十分に高いわけですが、だから貯蓄できて当たり前と結論づけるのは早計といえます。貯蓄額は現在4200万円。毎月コンスタントに20万円貯めても17年半かかる額です。しかも、自宅はローンで購入、7歳のお子さんがいて、夫婦共働き。環境から見れば、そのカテゴリーはセレブでも元華族でもなく、あきらかに「一般の部」。なのに、現在の貯蓄ペースは年間426万円!!! では、この驚異的な貯蓄ペースはなぜ達成できたのか。簡潔にいえば「ある程度の収入のある人が、貯蓄のセオリーを当たり前に実践した」となります。
お金への意識が高く、FP資格も自力で取得したというJさん。「あるじゃんの雑誌はよく見ましたよ! 深野康彦先生のファンです! FPの資格もとりました」(Jさん)
無理のない、誰でもできる節約をきっちりやる
あらためて、Jさんの家計データを見ると、実は目立って節約している部分はありませんが、総じて抑えているという印象です。そして、そのための工夫も特別なものではありません。「通信費は格安SIM・スマホとインターネットはグループ割引・長期契約割引を活用。電気代は安い深夜電力の時間帯を利用して貯湯、炊飯、洗濯をしています。食費は日曜にスーパーで安くまとめ買いをしていますが、共働きということもあり、割高なお惣菜を買ってしまうことも……。これはある程度仕方ないと割り切り、自分たちでできること、例えば飲み物は買わず、お湯を沸かしてお茶を飲むといったことはしています」
もうひとつの工夫として、お金をかけず「自分でできることはする」という点もあげてくれました。簡素な家具はDIYで手作り。クルマの日頃のメンテナンスもできる範囲で行う。お子さんの散髪も自分でやるのだとか。
貯蓄達人になるコツは、自分でできることは自分でやること。自作した椅子。「1×4材のみでつくりました。夏に作ったので汗だくだった記憶があります! 脚の部分を斜めにカットするのが面倒だったですね。材料費は2000円以下」(Jさん)
個々に見ていけば、ひとつの節約が月に数万円といった劇的な効果を生むわけではありません。しかし、まんべんなく、どれもできる範囲の無理のない節約を実践しているといえます。
毎月貯蓄できる要因として、固定支出の低さも目を引きます。固定支出とは、定期的に決まった額がコストとして発生するというもの。中でも住宅ローンや自動車ローンなどの各種ローンと加入している保険の保険料は、その支払いが長期間続くため、いわば「貯蓄の天敵」といってもいい存在です。
ところが、Jさんの場合、まず住宅の定期的コストがほぼ固定資産税だけとなっています。2002年に物件価格3700万円の一戸建てを購入し、そのときの借入額は2800万円。そして、10年後に繰上返済で、住宅ローンは完済してしまいました。保険料も1万3500円。共済を中心に、必要最小額の保障を確保するだけとのこと。
カットできる固定支出は極力そうしている。結果的に貯蓄できる資金的余裕が生まれる。貯蓄の王道を当たり前に実践している、教科書のような家計管理の好例でしょう。
「富裕層」という壁を超えてみたい
貯蓄でもうひとつ大事なことは継続性です。そのためには普段の家計管理や収入の安定も重要な要素ですが、もうひとつ、モチベーションの維持が不可欠といえます。「夏場は天窓を開けると、涼しい風が入りいいのですが、小さな虫が入るため、天窓用の網戸を作成しました。苦労したのは蝶番の取付でしたが仮合わせをしっかり行い取り付ければ問題なくできました。材料費は枠と蝶番、網で2000円ぐらいです。オーダーすると高いですからね!」(Jさん)
Jさんは独身時代からアパート暮らしにも関わらず、毎月13万円を貯蓄していたといいます。そのモチベーションは住宅購入。貯蓄の達成度合いをレベル分けし、その1段目は100万円。それをクリアしていくことで得られる達成感を、次を目指すモチベーションに変えていく。そして、住宅購入も終えた今は100段、すなわち1億円を目指しています。
「貯蓄の目的は年金不安と、老後のゆとりある老後生活のため。60歳までに6000万円を最低目標としています。100段=1億円には辿り着けないと思いますが、準富裕層から富裕層の壁を超えたいという気持ちもあり、それもモチベーションになっているのかもしれませんね」
ただし、家族がいる以上、自分一人が貯蓄に向けて頑張っても空回りしてしまいます。そこもケアしないと、なかなか効率的な貯蓄は実現しません。
「私も妻とは家計や支出に対して意識や価値観のズレはあります。私より妻の方がお金に総じてルーズですから。ただし、協力はしてくれるので、何かあれば言葉で伝え、理解してもらうよう努力します。ただし、あまりしつこく言うと怒ります。そこは調整が必要ですが」
貯蓄は、収支の差で生まれます。毎月52万円に対して支出が27万円なら25万円が貯蓄になります。しかし、それだけ手取り収入があると、支出も40万円台後半になってしまうのが世の常、人間の弱いところです。それをきっちり、この生活費で十分という範囲に無理なく収めている、それがJさんの強みなのです。
「窓から壁までの間にピッタリ合う机がなかったので簡単な図面を書き、作りました。ダボ(結合部)が多かったのを覚えています。材料費は4000円ぐらいでした」(Jさん)
Jさんならでは貯蓄技
「よくクレジットカードは現金に比べて使い過ぎるといいますが、予防策として、家計簿で毎月の使用額を把握しておけば、ポイントが付与されたときにすぐに無駄遣いがあったかどうかチェックできます。しかも、貯まったポイントを外食などに利用できるので一石二鳥です」「家計の支出をしぼるならLED電球、節水シャワーヘッド(手元で止水できるもの)、当然ですが、ETC年会費無料のクレジットカードの使用もです!」(Jさん)
なかなか貯蓄できない人へ、達人からのアドバイス
「貯蓄は少しでも長く継続することが大事だと思います。まずは、貯蓄の目標を立てます。あとは、ちりも積もれば山となる。最初はきついかもしれませんが、続けていくうちにそれも慣れますよ」「節水調整のためのサブバルブです。節水コマを入れてもいいですがこちらの方が楽ですね! 節水のためのバルブ調整は、やり過ぎると水圧がなくなるので注意です」(Jさん)
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取材・文/清水京武 図版/引間良基
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