勤務先が激務な夫、死亡保障3000万円で足りますか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、都心に7000万円のマンションを購入できるかどうか悩んでいる37歳の主婦の方。仕事がハードという夫の死亡保障も3000万円で十分かどうか不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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2年後にマンション購入は可能か

2年後にマンション購入は可能か




■相談者
 ゆうこさん(仮名)
女性/パート・アルバイト/37歳
東京都/賃貸住宅

■家族構成
夫(会社員/33歳)、子ども(小学5年生/11歳)

■相談内容  
子どもの学費は私立小学校に118万円(諸費用込み)と小学校5年生で塾に通っており、今年度は90万円、来年度は120万円の予定です。中学入学後は年間学費120万円を予定しています。塾はしばらく行きませんが、高校2年生~3年生の2年間に予備校費を年間100万円予定しています。今後大学まで私立を予定しています。夫の手取り55万円の中から毎月会社の財形に7万円、持ち株に10万円を入れています。夫・妻の実家とも今後、介護費用の援助をする必要はないかわり、遺産などもありません。昨年度の貯金は年間185万円(財形、持ち株会を含む)でした。ボーナスの使いみちとしては夫婦で資格取得60万円(その他、生活費の補てんなど)。2年後を目処にマンションを購入したいと思っています。夫の会社に近い(仕事が激務で夫の体が心配ため)築25年ほどの中古マンションを7000万円くらいで購入できればと思っていますが、我が家の家計では厳しいでしょうか。  また保険についてあまり知らず、現在夫に死亡保険3000万円しかかけていないのですが、夫は激務で、証券系の会社員で給与は安定していません。これでは不十分でしょうか? 

■マネーデータ
相談者「ゆうこ」さんの家計収支データ

相談者「ゆうこ」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)収支について
妻は給与は一定額だが、夫は毎月の給与は残業によって変動が大きく、残業代の幅は11万~30万円ほど。ちなみに昨年度の夫婦の可処分所得は890万円。また、昨年の使途不明金は7万円。

(2)夫の残業代について
相談者コメント「証券系の企業に勤務。働き方改革により残業代の見直しの予定は当面ありません。法定で定められた分は残業代が支給されます。それ以外、平日深夜の睡眠中、休日の在宅時に頻繁に会社からの電話があり指示をしなければならない状況ですが、それは残業代が支給されません」

(3)住宅購入について
マンション購入の頭金は1000万円、諸費用300万円を予定。

(4)加入保険について
・夫/定期(死亡3000万円、保険期間60歳)=保険料4860円

(5)勤務先の定年と退職金
夫は60歳定年で、その後65歳まで再雇用制度があり。再雇用時の年収は500万円。退職金は現在の職位のまま定年を迎えると1800万円。妻は、子どもがもう少し大きくなったらパート勤務で、年収200万円くらいを目指したいと考えている。

■FP平野泰嗣の3つのアドバイス
アドバイス1 マンション購入後も資金的には十分に余裕
アドバイス2 購入後も家計管理、収支の確認が重要
アドバイス3 マンション購入後は死亡保障より健康管理
 

アドバイス1 マンション購入後も資金的には十分に余裕

まず、家計についてはいただいたデータどおり、収入と支出を検証すると確かに使途不明金は年間7万円となっていました。これはかなり精度が高く、しっかりと家計を管理・把握していることがわかります。

教育費が目立って高いわけですが、それ以外の支出費目については同一年収世帯と比較すると、逆に低く抑えられています。昨年度は夫婦それぞれ資格取得のためのイレギュラーな出費が発生。それがなければ年間で250万円近い貯蓄(持ち株を含む)が可能ということになりますから、貯蓄ペースから見ても、家計を十分にやりくりされていると言えるでしょう。

では、ご相談にある7000万円のマンションについて2年後の購入を考えてみます。シミュレーションの設定として、夫婦とも収入アップは想定しない。また、高校の授業料は中学と一定、大学受験のための進学塾の費用としては100万円、大学は私立理系に進学。そして、退職金は昇進を考慮して2000万円、その他のライフイベントの費用は含まず、生活費等の物価上昇率は1%とします。

住宅ローンですが、頭金1000万円(別途、諸費用として300万円)とのことですから、借入額は6000万円。返済期間30年、全期間固定で金利1.5%としました。その場合の返済額は年間248万4000円(住宅ローン控除適用時は実質208万4000円)。他にランニングコストとして、固定資産税、管理費、修繕費がありますが、都心マンションは総じてこれらが高め。当初は合わせて年間50万円、経過とともに管理費・修繕費が上昇すると想定としました。

 
ゆうこさんの貯蓄残高の推移

ゆうこさんの貯蓄残高の推移




結果、ご主人が60歳、定年時の金融資産残高は1億円を超えます。今回のシミュレーションに考慮されていないライフイベント支出も収入水準からある程度大きな金額となると思いますが、それでもまだ相当に資金的余裕があると言えます。
 

アドバイス2 購入後も家計管理、収支の確認が重要

ただし、このシミュレーションは比較的楽観的な設定での結果と言えます。もし、きびしい見方で試算をするなら、まず収入は時間外手当が多く、それ自体不確定なため、月10万円差し引いた額としてみます。さらに、ご主人の勤務先は競争や浮き沈みがはげしい業界ですから、収入維持のための予算(キャリアアップ、資格取得、自己啓発など)として年間50万円を計上。ただし、これは余れば、家族旅行や、試算に含んでいないライフイベントの予算に充てるとします。それで、再計算をすると、ご主人が60歳時の金融資産残高は約5000万円。

 
ゆうこさんの貯蓄残高の推移

ゆうこさんの貯蓄残高の推移、残業代を低く見積もり、キャリアアップのために使うお金を引いた場合


つまりは、きびしい目で見ても、7000万円のマンション購入は決して無謀とは言えません。おそらく、ゆうこさんにとっては、マンションの物件価格が6000万円でも8000万円でも同様に不安に感じるはず。大きなローンを抱えるわけですから、それは当然でしょうが、そもそも家計管理がしっかりされている世帯ですから、大局的な目で見るライフプランをしっかり設定した上で、毎年きちっと収支を確認していけば、購入については問題ないでしょう。
 

アドバイス3 マンション購入後は死亡保障より健康管理

次にご主人の死亡保障について。

本当に必要な額は、ご主人に万が一のことがあった後の生活費や、受給する遺族年金額が不確定のため、正確に割り出すことは難しいですが、ある程度の前提条件を設定して、試算をしてみます。

まず、生活費ですが、ご家族の人数が減るため、教育費、住宅費を除く世帯の生活費、その他の特別支出を現状の70%とします。

遺族年金は、まず遺族厚生年金が、現在までの平均年収を仮に480万円とすれば年間49万5000円。遺族基礎年金はお子様が18歳となる年度末まで年間約100万4000円支給されますから、合計して約150万円。また、遺族基礎年金の支給終了後は中高齢寡婦加算として、妻であるゆうこさんが65歳から基礎年金を受け取るまでの期間、年間58万5000円が支給されます(遺族厚生年金は継続して支給)。したがって、2020年~2046年で受け取る金額は3220万円。

加えて、ゆうこさん自身の就業収入があります。データにあります「パート勤務で年収200万円くらいを目指したい」を実行できたとすると、同様に2046年までの手取り収入は4860万円(手取り額180万円で計算)となります。

これらを踏まえて、マンション購入前にご主人に万が一のことがあったケースと、購入後にあったケースで分けて考えてみます。

購入前の場合、住宅費については、30歳になるまでは現在の家賃、それ以降は家賃10万円の賃貸住宅に転居するとします。結果、2046年までの生活費はトータルで1 億688万円。対して収入は、まず2019年末の時点で手持ち金融資産は1911万円。それ以降は先に示したとおり、就業収入が4860万円、公的年金が3220万円。さらに死亡保険金3000万円を加算すると1億2991万円。

つまりは年金受給となる65歳になった時点で約2300万円が手元に残っている計算になります。これがすなわち老後資金として十分かと言えば、余裕はないかもしれません。しかし、一般的に単身年金生活者の毎月の赤字(収入が年金だけによる生活費の不足分)は4万円前後。2300万円なら約48年はカバーできますから、その意味では足りているわけです。したがって、3000万円の死亡保障は妥当な額と言えます。

次に、マンション購入後ですが、これまでの試算を踏まえた上で、団体信用生命保険の加入を前提に考えれば、3000万円の死亡保障はほぼ不要ということになります。そして、より必要性が高いのは「保険」ではなく「保健」。ご主人の仕事が激務であるなら、人間ドックや定期検診、心身のメンテナンスなど、日常の健康管理にコストをかけるべきだと考えます。

最後、投資について。持株会は確かに掛け金が優遇されているものの、現状、1銘柄に集中している状態。これは投資としてはリスクがあります。できれば、ある程度の金額になったら売却して、分散投資に切り替えたいところ。ご主人は投資が専門分野でしょうから、問題なくできると思います。
 

相談者「ゆうこ」さんから寄せられた感想

給与が安定せず常に不安を抱えていたのですが、今以上に給与が減った場合を再計算していただくなどして、漠然とした不安が大きく減ったと感じました。このたびは本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……

平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
  
 

 


ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。著書に『30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる 考え方・投資の仕方』(明日香出版社)。All Aboutマネーの連載『ふたりで学ぶマネー術』も人気

取材・文/清水京武


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