“その時”私たちの反応は?心理状態を知って備える

まずは、大地震や津波が発生した瞬間やその後、私たちはどんな心理状態に陥りやすいのかを知っておきましょう。頭に入れておくことで、万が一の際の対応に大きな差が出てきます。

【その1】「正常性バイアス」を打ち破る

住友林業が業務提携している防災システム研究所の山村武彦所長によると、人間には、自分にとって不都合な情報を無視したり、過小評価する特性があるとのこと。「これを心理学用語で『正常性バイアス』といいます。近年、国内で大津波警報や大雨・洪水警報が発令されても速やかな避難や対策を行わず、その結果、被害が拡大するケースが増えています」

例えば、災害発生時のニュースに視聴者がスマホで撮影した災害映像が使われていることがありますが、まさにあの映像を撮った人などは正常性バイアスに陥っているといえそうです。

2019年5月29日、気象庁は各種の警報をレベル化して運用を開始しました。「自分は大丈夫」というのは根拠のない過信です。避難情報に従って速やかに行動することが悲劇を防ぐのです。
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警戒レベルに応じて予断なく行動すべき
 

【その2】 「アンカリング」に惑わされるな

山村所長いわく「いったんアンカー(鎖)を下ろすと、その船の行動範囲はアンカーの長さまでにとどまります。アンカリングはこれと同じように、最初にインプットした数値や情報にいつの間にかとらわれ、以降はそれを基準にしてしまい、行動や判断の自由が限られてしまう心理状態を指します。多くの人が陥りがちであり、注意しなければなりません」。

アンカリングの例として挙げられるのが、2011年の東日本大震災で発生した大津波。被災地のひとつ、宮城県南三陸町には、1960年に発生したチリ地震津波で街に到達した津波の高さを示すモニュメントや標識が町中に設置されていました。

その高さは2.4~2.8m。また、東日本大震災発生直後、気象庁の当初津波予想は6mでした。しかし、実際に南三陸町を襲った津波は最大15.5mだったのです。南三陸町の人々が普段から目にしていた2.4~2.8mの標識や、当初津波予想の数値がアンカリングになった可能性もあると山村所長は話しています。

この悲劇から、過去の事象にとらわれず、常に最悪のケースを想定しておくことがいかに大切かが分かります。
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「アンカリング」の意味を知り、惑わされないように心がけたい
 

【その3】 「凍り付き症候群」に陥らない

イギリスの心理学者、ジョン・リーチ博士によると、不意の災害に襲われた時、人間の取る行動は、主に次の3種類に分けられるといいます。

1.落ち着いて行動できる→10%
2.我を失って泣き叫ぶ→10~15%
3.呆然自失となって固まってしまい、何もできなくなる→75~80%


山村所長によると、3.のパターンは「凍り付き症候群」と呼ばれ、リーチ博士が示した数値どおり、大地震などの発生直後、およそ8割の人がこの症候群に陥りがちということです。“その時”にショックのあまり固まってしまわないよう、できるだけ落ち着いて避難する方法を探すことが、何より大切です。
 

準備すべき備蓄品、家の中の安全ゾーンは?

次に家の中に準備しておくべき、水や食料、推奨する訓練などを見ていきましょう。

【その4】 備蓄品は「1週間分」が理想

水、食料の備蓄量は、かつて「3日分」が目安といわれてきましたが、内閣府は南海トラフ地震などに備えて、1週間分の備蓄を推奨しています。水はひとり1日3リットルを目安に考えましょう。

非常食は保存性だけでなく、味も美味しいアウトドア用の携行食なども注目されています。ストレスが溜まる避難生活では「食」が大きな楽しみ。自分が食べて美味しいものを準備しておくことも大切なようです。ほかにも、カセットコンロや携帯ラジオ、家庭によっては乳児用の粉ミルクやオムツ、持病の薬、簡易トイレ、トイレットペーパーなども準備しておきたいものです。

これらは「わざわざ」準備するのではなく、日常的に消費している食料、飲料水を少し多めに備えることで対処しやすくなります。食べ、飲み、量が減ったら買い足し、消費期限の古いものを常に取り出しやすい場所に出して、一定量をキープする。このサイクルを続けていけば、それが備蓄につながっていきます。
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備蓄品は1週間分が基本に
 

【その5】 「在宅避難生活訓練」で何が不足するかを確認

大災害が発生し、一定期間、避難所での生活を余儀なくされるのは自宅が大きな被害を受けてそこで暮らせない人です。一方、被害が少なく、自宅、およびその周辺に危険が少ない場合は自宅に避難、つまり「在宅避難」となります。

ただ、自宅にとどまることができても、ライフライン、電気、ガス、水道などはストップしていることが考えられます。その状態をふまえて、山村所長がすすめるのが「在宅避難生活訓練」です。

理想は、家に暮らす家族全員が休日などに一緒に体験すること。1日が難しければ夜間を含めた12時間など半日でもいいでしょう。ブレーカーを落とす、水道を使わず断水体験をする、簡易トイレを使ってみる、ガスを使わずカセットコンロで湯を沸かす、スマホ、電話を不使用とする……などを実際に体験してみると、何が不足しているのか、どんな心構えが必要なのかが分かってくる、ということです。
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防災グッズとしても活躍するカセットコンロ
 

【その6】 自宅の安全ゾーン「玄関」に避難を

家にいて大きな揺れを感じた時、これまでは「机の下に逃げ込む」が一般的な初動避難でした。しかし山村所長は、机の下に身を隠すよりも、自宅の安全ゾーンを決め、そこに早く移動するほうが安全で合理的だといいます。

安全ゾーンは、柱が比較的多く建物の損傷が少なく済み、割れて飛散するガラス、転倒落下物も少ない場所。つまり「玄関」が理想的ですと山村所長。ちなみにかつては「トイレ」ともいわれましたが、外部への避難のしやすさで玄関を推奨するそうです。
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これからは机の下ではなく、玄関へ!

 

安全な場所に安全な家を建て「シェルター」に暮らす

最後は最も重要な「家」のつくり方。防災力を高め、自宅のシェルター化を目指しましょう。

【その7】 土地の災害発生リスクを調べる

災害リスクが高い土地では、家自体の強度が高くても不安がぬぐいきれません。そこで役立つのが、各自治体がWeb上で公開している各種のハザードマップです。住環境や地形、過去に発生した災害の記録などによって、洪水や高潮、土砂、火山、液状化のしやすさなど災害の種類別に用意していたり、紙のマップを無料配布している自治体もあります。

ただ、ここで覚えておいてほしいのはハザードマップの情報はあくまで目安ということ。災害が発生しやすいエリアでも必ず発生するとは限りませんし、逆に、リスクが少ないとされていても安全とは断言できません。

あるいは、民間の地盤調査会社に地盤の強さや浸水、液状化のリスクなどを調査依頼する方法も。なかにはHP上で住所を入力すると無料診断した結果をメール送信してくれる会社もあります。
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自宅近くの避難場所、避難所情報を家族で共有しておきたい
 

【その8】 耐震性が高く、アフターケアにも配慮したメーカーの家を選ぶ

ところで、あなたが現在お住まいは築何年でしょうか?

1978年に発生した宮城県沖地震がきっかけになって建築基準法が改正され、1981年に「新耐震基準」が導入されました。この基準が適用された家には、震度6強~7程度では倒壊・崩壊しない強度が備えられています。事実、1995年に発生した阪神・淡路大震災で被災した木造住宅の98%は、1981年以前の旧耐震基準で建てられていました。

したがって、あなたの家の竣工年が1981年の前後どちらなのかは、耐震性を予測する上で非常に重要です。ただ、1981年以降でも築年数が30年超など古い家の場合は、公的機関に耐震診断を依頼してもいいでしょう。

続いて、これから家を建てる方への情報です。当然のことながら耐震性の高い家が求められており、各ハウスメーカーが高い耐震性を備えた家を訴求しています。そんななか、住友林業が提案するのが「ビッグフレーム(BF)構法」が採用された木造住宅です。

この構法は、高層ビル建築などに用いられる堅牢な“ラーメン構造”を木造住宅で実現したもの。一般的には、耐震性を高めるには柱や壁を多くすることが必要です。必然的に窓を大きく取ったり、間取りを思いのままに実現したりすることは難しくなります。一方、このビッグフレーム構法の家は、強い柱と接合部で構成され、耐力上の壁を必要としないため、大開口、大空間や高い設計自由度を実現しながら、耐震性を担保することができます。
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主要構造材のビッグコラムは一般的な柱の5倍以上の幅で高い剛性を備える
 

耐震性の高さの判断基準は、そのメーカーが公表している実証実験の内容や、過去の震災で何棟の住宅が被害を免れたか、あるいは軽度の被害で済んだのか、などの実績をチェックするといいでしょう。住友林業では、BF構法の3階建て実物大モデル住宅に、東日本大震災、阪神・淡路大震災と同等の揺れを加える実証実験を行い、いずれもクリアしています。

そしてもうひとつ大切なのがアフターケアです。震災発生後、危険が増し、混乱する現地において、住宅の補修はもちろんのこと、在宅避難が可能なのかを判断するのも容易なことではありません。住友林業はそうしたケアにも長年取り組んでいます。

【その9】 ZEH仕様にすれば在宅避難がやりやすい

万が一、ライフラインが遮断されたとしても、住まいがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様になっていれば、防災力が上がることはご存じでしょうか。ZEHといえば「環境負荷の低減」「経済性」などが連想されますが、実は防災の面でも力を備えています。ライフライン復旧までの一定期間、ZEH住宅に導入された設備で電気、水などを自力でまかなうことができるからです。

住友林業では、心理学用語で「回復力」「耐久力」を意味する「レジリエンス」を用いて、前述したBF構法に様々な災害対応設備を組み合わせた商品「レジリエンスプラス」を企画。災害発生時の安心・安全と、平時の快適な生活を両立する住まいとして提案しています。

さて、ZEHといえば、まずは太陽光発電システム。これの自立運転機能を活用すれば最大1500Wの電力が得られます。また、家庭用蓄電池システムで停電時に最大4200W利用できるほか、電気自動車の急速充電設備「V2H」があれば、電気自動車を蓄電池代わりにすることも可能です。さらに、エネファームも最大500W、最長8日間継続して発電してくれるので、その間はお湯、シャワー、ガス温水床暖房を使用可能です。

次に水の確保。普段からミネラルウォーターのストックや浴槽に水を張っておくなどの準備をしておくことも大切ですが、エネファーム、エコワンがあれば、断水時でもそれぞれ最大135リットル、160リットルのお湯(水)を取り出すことができます。
 
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災害時の安心、安全だけでなく平時の快適な生活も支援する「レジリエンスプラス」
 


近い将来、発生が懸念されている大規模地震には、南海トラフ地震、首都直下地震のほか、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、中部圏・近畿圏直下地震などがあります。

特に、関東から九州の広い範囲で強い揺れと高い津波が発生するとされる南海トラフ地震と首都直下地震は、今後30年以内に発生する確率が70%といわれています。 

山村所長いわく「“30年以内”という数字がアンカリングとなり、大地震が起きるのは今日、明日ではなく、まだまだ先の話であると都合よく考えてしまう人は少なくありません。そうした意識を捨てることが極めて大切です」とのこと。

今こそ、意識を変える時! 今日にでも家族皆さんで、防災力の高い家づくりをテーマに話し合ってみてはいかがでしょうか。

<関連サイト>
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