相続時精算課税の概要
<目次>
まずは相続時精算課税の概要です。2003年(平成15年)からスタートした「相続時精算課税」。一定の条件のもと、2500万円までの贈与には贈与税がかからないという、生前贈与の対策においては非常に影響の大きい制度です。また贈与の対象財産は金銭だけでなく不動産でも何でもよいため、当時は盛んに行われ、この制度は今も継続しています。親から子へ住宅取得資金の援助としての利用が多いようです。
税務調査で申告漏れを指摘される
相続税対策として生前贈与をした際にこの「相続時精算課税」を利用している人が多くいます。そのためか近年の相続税の税務調査において、相続時精算課税の贈与の加算が相続税の申告で漏れていると指摘されることが多くあります。当然に相続税の本税だけでなく、加算税、延滞税もかかってしまいます。申告漏れをしてしまう、どうやらその原因はこの制度の「落とし穴」にあるようです。相続時精算課税の落とし穴
この制度には大きな落とし穴が3つあります。「贈与税はかからなくても相続税はかかる」「相続発生時までは時間が空く」「一度利用すると暦年贈与はできなくなる」という点です。税務調査で指摘された納税者からは、「相続時精算課税を正しく理解できていなかった」「勘違いをしていた」という声を多く聞きます。落とし穴1「贈与税はかからなくても相続税はかかる」
最も多い事例です。贈与税がかからないというだけで相続時は課税されますので、相続が発生した際は相続税の申告において相続時精算課税の贈与を必ず加算して計算しなければなりません。これを「贈与税がかからず、それで完結していた」という誤解です。納税者は贈与者の相続時に相続時精算課税の贈与を加算するという認識がそもそも無かったということです。落とし穴2「相続発生時までは時間が空く」
相続時精算課税を理解できていても実際に相続が発生するまでに何年もかかることが多く、相続時には贈与を加算しなければならないと当時は覚えていたものの、「時間が空きすぎて忘れてしまっていた」という申告漏れです。現在は制度のスタートからは16年以上経っていますので、忘れてしまうこともあると思います。なお税務署は相続時精算課税の記録を永久保存していますので、忘れること、漏れることはありません。相続発生の情報が入れば漏れなくチェックしているようです。落とし穴3「一度利用すると暦年贈与はできなくなる」
この誤解も多いです。相続時精算課税は一度利用してしまうと二度と「暦年贈与(110万円までは贈与税がかからない)」ができません。これを別物と勘違いし、相続時精算課税を利用した後も毎年110万円の贈与を続けてしまっている人が多くいます。例えば10年分の贈与であれば1100万円を加算するようになってしまいます。場合によっては贈与税の加算税や延滞税までかかってしまいます。相続時精算課税はうまく利用すれば対策効果の高い制度ですが、誤った理解やうっかり忘れなどが後に大きな代償となってしまいます。影響額がとても大きいので、相続が発生した際は「相続時精算課税」を利用していなかったか、自分だけでなく他の相続人にも必ず確認をしましょう。