早期リタイア生活を実現するためのマネープランの基本は?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、早期リタイアを考えている50歳の会社員男性。現時点での保有資産は1億3300万円。趣味の費用を削りたくないため生活費が高めですが、この支出のままでリタイア生活を続けていけるか不安を感じるといいます。そんなY男さんのお悩みに、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんがアドバイスします。
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早期リタイヤができるか相談

早期リタイヤができるか相談



 
■相談者
Y男さん(仮名)
男性/会社員/50歳
関東/持ち家(集合住宅)
 
■家族構成
妻(パート)50代、長男(大学生)22歳
 
■相談内容
これまで大学卒業以来働いてきましたが、来年51歳になる4月からリタイアを検討しています。妻はパート(年収は約70万円、仕事は60歳まで継続意向)です。来年からは息子が就職、自宅マンションもローン終了で必要経費が大幅に減る予定です。ただ自宅マンションは諸事情のため、80歳には新たな住宅が必要になります。実家(一戸建て)に80歳の両親が健在ですが、将来的には介護が必要になってくると思います。夫婦とも趣味が複数ありそれなりのコストになっていますが、これからのシニアライフを充実させたく継続したいと思っています(私:バイク・車、夫婦:旅行・フィットネス)。ペットを飼っているため、そのコストは雑費に入れています。今は投資信託に全額投資している状況です。配当はなく中長期保有の想定でしたが、リタイアとなればある程度配当のある商品にしたいと考えています。
 
バイクなどは50代が最後と思っており、贅沢かもしれませんが、上記生活コストを継続したまま、リタイアができますでしょうか? またリタイアを優先した場合、必要な生活コストもご教示いただければ助かります。国民健康保険、国民年金、住民税等については上記試算に含まれていないため、別途かかってくるということでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ(リタイアを始める予定の日以降のデータ)
相談者「Y男」さんの家計収支データ

相談者「Y男」さんの家計収支データ



 
■家計データ補足
(1)住宅ローンについて
完済済み。「住居費」は「管理費、修繕積立金、地代」の月額。固定資産税は10万2000円/年。
 
(2)支出の内訳について
●車両費→(月額)車:駐車場1万5000円、ガソリン代5000円/バイク:高速代4万円、ガソリン代1万円→7万円/月
(年間)車:税金・点検・保険計29万8000円/バイク:税金・点検・保険計12万4000円→3万5000円/月額換算
月額計→10万5000円

●趣味・教養・娯楽費→スポーツジム2万2000円、本・洋服8万円、サーバー・日経・健康飲料1万2000円、旅行1万6000円(月額換算)→合計13万円

●雑費→ペット関連1万6000円、人間ドック1万円(月額換算)
 
(3)加入している保険
●夫:有期払込終身保険1000万円、逓減定期保険特約1600万円、家族収入特約5万円、災害死亡給付特約1500万円、入院総合保障特約5000円、がん入院特約10000円 ⇒毎月の保険料2万6000円
※60歳まで残り10年間払い続けると、解約返戻金額として660万円返ってくる商品(あと20年払い続けると返戻金は760万円)

●妻:平準定期保険500万円、災害死亡給付特約750万円、入院総合保障特約5000円、がん入院特約10000円 ⇒毎月の保険料4000円
 
(4)保有している投資商品について
・投資信託/米国株式(累積投資)  購入価格:7500万円、現在:8400万円
・投資信託/新興国株式(分配金受取)  購入価格:2500万円、現在:2200万円
・外国債券/利率5.5%  購入価格:3000万円(年間120万円の配当)
 
(5)夫婦の退職金、年金の受給見込み額
退職金はなし。年金は夫婦で250万円の見込み
 
(6)今後の趣味に対する支出プラン
バイクは10年ほどは続ける想定。10年後には、車両費10万5000円が4万5000円になる予定
 
(7)80歳以降の自宅について
相談者コメント「決めていませんが、両親のどちらかが死去した時点で両親宅を売却し、私のマンションの近くの中古マンションを購入して住んでもらう計画があり、そこに私と妻が住むことを描いています」
 
(8)両親が介護状態になったときについて
相談者コメント「両親は80代ですが現在も食欲旺盛で健康な状態のため、当分は介護の負担は生じない想定のため、正直イメージできていません。両親の年金額は年300万円と聞いています。仮に父が5年後他界、母が10年後他界、どちらかが5年間在宅介護として月額10万円を年金にて賄う、もしくは老人ホームにお世話になると想定したら、年間200万円×5年で計1000万円を両親宅売却(現時点で2000万円で売却可能)にて賄う。上記以上の状況(一人ではなく二人とも要介護状態で上記の2倍など)であれば、私が負担する、というイメージでしょうか」
 
■ファイナンシャル・プランナー藤川太の3つのアドバイス
アドバイス1 想定していないことが起こり計算通りにいかない場合もある
アドバイス2 早期リタイアする人は倹約家で暮らしは質素
アドバイス3 今後の暮らし方には複数の選択肢を想定しておく
 

アドバイス1 想定していないことが起こり計算通りにいかない場合もある

現在お持ちの資産から想定する生活費を引いた結果を見て、51歳でリタイアをしても大丈夫だろうとお考えかと思います。確かに単純計算するとうまくいくように見えますが、安心とはいいきれないこともあります。
 
まず資産のほとんどが投資信託、しかも外国株式ということによるリスクです。現在は上昇相場が続いているので含み益が出ていますが、相場によっては大きく減ることもあります。たとえばリーマンショックのとき、外国株式はピークから6~7割ほど下落しました。Y男さんの資産の大半は、そんな大きな変動リスクにさらされているのです。
 
もうひとつ、Y男さんも資産の組み換えの必要を感じていらっしゃるようですが、預金が300万円しかありませんから現状のままリタイアすると、早晩、生活費のために資産の取り崩しが必要になります。一般的に早期リタイアを考える方は、リタイアまでに資産をキャピタルゲイン中心からインカムゲイン中心に組み替え、できるだけ資産額の変動を小さくし、かつ資産を取り崩さなくていいように準備します。というのは資産を取り崩すとそこから生まれる配当金などのインカムゲインも減ってしまうため、不足額がどんどん増えていくからです。年金の支給開始までの不足額の概算を「(収入-支出)×12カ月×15年」と考えて計算すると6120万円。と考えると、Y男さんが想定しているほど余裕があるとはいえないように思います。
 
またご両親の介護についても、ご両親に資産がない場合を除き、安易に不足分はY男さんが負担すると考えない方がいいでしょう。教育費と違って費用も期間も個人差が大きく、金額の目安が立ちません。介護費用はご本人の資産・年金の範囲内でまかなうのが基本的な考え方。支援することで自分たちの老後資金が足りなくなってしまっては本末転倒です。
 

アドバイス2 早期リタイアする人は倹約家で暮らしは質素

1億円以上の資産をお持ちの方に細かい家計管理のアドバイスは不要かと思いますが、私の経験上、早期リタイアをする方の暮らしぶりはとても堅実です。というのは、資産寿命を伸ばすために生活費はできるだけ配当金などのインカムゲインの範囲内でまかない、資産を取り崩さないようにと考えるからです。早期リタイアをしたご夫婦の生活費は20万円台というのが一般的ではないでしょうか。
 
趣味などにかかる費用は考え方次第ですから別としても、支出を見ると気になることがいくつかあります。まず、通信費。この金額から拝察すると大手キャリアの契約だと思いますが、早期リタイアをする投資家にこんな無駄なお金を払う人はいません。ご夫婦2人でしたら、格安SIMなどにすれば簡単に3分の1程度にできるでしょう。生命保険についても、ほとんどは不要です。そもそも保険はお金がない人が加入するものですから、生活保障を考える必要がないY男さんには無用のもの。相続対策として終身保険だけを残してほかは解約し、支出を削減することの方がメリットは大きいと思います。
 
ご質問の社会保険料・税金の件。収入が配当金だけの場合、特定口座で源泉徴収ありを選択していれば所得税・住民税は源泉徴収されて完結します(確定申告することは可能です)。社会保険料のうち国民健康保険料、介護保険料は収入に応じて納付しなくてはいけません。また国民年金保険料は一律ですから、月1万6410円(平成31年度の場合)×夫婦2人分を60歳まで支払う必要があります。
 

アドバイス3 今後の暮らし方には複数の選択肢を想定しておく

早期リタイアをしてシニアライフを充実させたいとのことですが、私が知っている同じようにおっしゃった方のほとんどがヒマを持て余して数カ月~1年程度で仕事を再開しています。趣味は忙しい仕事の合間に時間を見つけてやるから楽しいのであり、いつでもできる状況になると飽きてしまうようです。時間を持て余すことにくわえ、収入がなく資産を取り崩して生活することの恐怖感は経験しないとわからないものがあります。
 
もちろん、これまでのようにフルパワーで稼ぐ必要はありません。生活費のために資産を取り崩さなくていい、もしくは取り崩す額が少なくなる程度で構わないのです。ただ逆にそうなると気が楽になるためか仕事がうまく進んで楽しくなり、リタイア前と変わらないくらい働くようになった方を何人も見てきました。Y男さんもまだお若いですから、思い描いていた通りにならない、見込み違いが起こった、という場合は臨機応変に方向転換する柔軟さを忘れないでいてください。
 

相談者「Y男」さんから寄せられた感想

沢山のアドバイスを頂き、ありがとうございました。元々無理のあるリタイア計画と思っていましたが、ご指摘頂いてあらためて認識できました。しばらくはリタイアすることなく、現職を続けます。55歳をひとまずのマイルストーンに設定しました。資産の組み換えにつきましては今すぐということではないですが、今年いっぱいかけて検討していこうと思います。より堅実で質素な生活への修正についてですが、本当に仰る通りと思います。保険は終身以外は解約しました。ほかランニングコストも変更を検討します。趣味に関しましては、現職を続けて今の収入が確保できているうちは、体の元気な少なくとも50代前半までは続けようと思っています。仕事については現職の専門性をより深め、退職したとしても複数の選択肢ができているような状況を目指します。現状の自分を投稿させて頂くことで整理できたこと、今まで自分一人で考えていたことですが、客観的なご指摘を頂けたこと、などから現状のリタイア計画について、修正への意思決定ができました。重ねてお礼申し上げます。


教えてくれたのは……
藤川太さん 
 
 

 


All About「資産運用」ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきたFP。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに詳しく「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスしています。

取材・文/鈴木弥生




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