とはいえ、多くの個人投資家は、重視すべきことよりも些末なことに時間を取られてしまいがちです。「労多くして益少ない」なんて言葉もありますが、まさにそのとおりで、せっかく時間をかけても大して結果に結びつかないのです。
実は、資産運用では「これさえ押さえておけば、資産運用の運用成績が8~9割決まる!」と言われる大事なポイントがあります。それにも関わらず、個人投資家の多くはこのポイントを無視しがちです。
成果に結びつくことがほとんどない銘柄選びは、未来予想に多くの労力を割き、もっとも大事なポイントに力を注がないのです。そのせいで、せっかく資産運用を始めたのに、運用成績が振るわないなんてもったいない!
それこそ、「明日の動きはどうなるか?」と何時間も考えたり、「自分を金持ちにしてくれそうな会社はどこかにないか?」と暇さえあれば探し回ったりしている人が大勢いるのです。しかし、このような時間の使い方をしても、大半の場合は徒労に終わるでしょう。
あなたの大事なお金や時間を守るため、今回は「資産運用でお金を増やすために、最も重要な要素」が何かを解説します。
運用パフォーマンスの8~9割は「資金管理」で決まる!
早速ですが、結論から申し上げます。資産運用で最も重要なのは「資金管理」です。金融情報誌「ファイナンシャル・アナリスツ・ジャーナル」に掲載された論文(1)によると、「(年金運用において)運用パフォーマンスの8~9割は資金管理で決まった」ということが明らかにされました。たとえば、1000万円を持っているとします。このうち、半分の500万円を使って20~30銘柄ほどの株を買うとします。このとき、投資家の多くは「どんな株を買うべきか?」「未来はどうなるか?」といった点に目を向けがちです。しかし、この考え方は労多くして益少ないのです。
運用パフォーマンスを上げるためには、「どんな株を買うべきか?」「未来はどうなるか?」ではなく、「運用資金は500万円にすべきか?」「それとも、もう少し積極的に600万円にすべきか?」「あるいは、もう少し消極的に400万円にすべきか?」といったことに目を向けることの方が、はるかに効果があります。
まとめると、「銘柄選び」や「未来予想」などは考えても効果が薄いので、時間の多くを「資金管理」に充てるべきなのです。
「利回りを1%向上する」より「元本を1%貯める」を重視
株取引などの資産運用では、利回りを1%向上するだけでも至難の業です。機関投資家などのプロでも、利回りを1%向上するには骨を折ります。ですが、運用元本を1%多く貯めるだけなら、大した労力はかかりません。1000万円の貯金を持つ人が、少し頑張ってお金を貯めれば、1%多い1010万円の貯金ができますよね。
つまり、テクニックを使って「1%早くお金を増やそう」とするより、「1%早くお金を貯めよう」とした方が、実りがよいのです。
だから、「テクニックを覚えて早くお金を増やす」こと以上に、「テクニックに頼らず、早くお金を貯める」ことに意識を向けましょう。以前、「家計を見直すなら支出→収入→借金→資産の順に見直せ!」という記事を書きました。
すでに億単位の資産をお持ちの方であれば話は別ですが、大半の人にとっては「資産運用のテクニックを覚える前に、家計の改善から手をつけて運用資金を貯める」ことを優先すると効率がよいです。
まとめ
資産運用は興味深い世界です。僕自身、資産運用に魅了されているので、「貯金のことを考えるより、もっと資産運用のテクニックを学びたい!」と感じる人の気持ちも分かります。とはいえ、早く成果を出したいのであれば、効率の悪いことは後回しにして、効果が出ることを優先した方がよいです。
本記事をきっかけに、あなたが時間やお金の浪費を止め、自由な時間が増えたら嬉しく思います。資金管理に今まで以上に時間をかけるだけでも、「小さな労力」で上手にお金を増やせるはずです。
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【参考文献】
- 論文:Gary P. Brinson, L. Randolph Hood, and Gilbert L. Beebower, 1986, "Determinants of Portfolio Performance", Financial Analysts Journal, 42(4), pp. 39-44