貯蓄

保有株が値下がりしたら「ナンピン買い」するべき?

「ナンピン買い(難平買い)」とは、保有株が値下がりしたとき買い増すことを指します。しかし、「なぜ、ナンピン買いが正しいのか?」説明する理論はありません。むしろ、科学の立場から見ると「株で損をしたらナンピン買い」はウソである可能性が高いです。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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YouTubeで毎晩のように生放送をしていると、「今日は株で利益を出せました!」という個人投資家リスナーもいれば、「今日は損をしました……」というリスナーもいます。
 
そんな中、損をした個人投資家から、こんなご質問をよく頂きます。
 
====================
保有中の株が値下がりしてしまい、損を抱えています。
◯◯という株をナンピン買いしようか悩んでいるのですが、
中原さん、何かアドバイスをくれませんか?
====================
 
今回は、このご質問に中原が回答していきます。
 

そもそも、ナンピン買いとは何か?

「ナンピン買い(難平買い)」とは、保有している株式の株価が下がったとき、株式を買い増すことを指します。安くなった株を買い増しすることで、平均購入単価が下がるので推奨するアナリストもいます。
 
ナンピン買いは、初心者向けの株本などで紹介されるテクニックの1つです。分かりやすく、取っつきやすいため、広く知られています。しかし、「なぜ、ナンピン買いが正しいのか?」説明する理論はありません。
 
株の難平買い

ナンピン買いはする方がよい?しない方がよい?

 

株で損をしたら、ナンピン買いをすべき?

科学の立場から見ると、「株で損をしたらナンピン買い」はリスク高になる可能性があります。
 
ノーベル経済学賞を受賞した、ウィリアム・シャープの理論(1)では、「資産運用では分散投資をすればするほどよい」という結論が得られました。つまり、
 
1種類の株しか買わないよりも、3種類の株を買った方がよく、
3種類の株しか買わないよりも、5種類の株を買った方がよく、
5種類の株しか買わないよりも、10種類の株を買った方がよいということです。
 
同様に、プリンストン大学の名誉教授であるバートン・マルキールも、著書(2)の中で「投資資金を30銘柄へ分散することで、銘柄固有のリスクは概ね減らすことができる」という旨を述べています。
 
しかし、ナンピン買いでは「同じ会社の株を買い増す」という判断をします。つまり、同じ株にお金を集中させる「集中投資をする」という判断です。この判断は「分散投資するほどよい」という科学的な判断とは真逆です。
 
つまり、ナンピン買いは「ノーベル賞を受賞するほどの経済理論を、真っ向から否定する真逆の行為」ということです。
 

まとめ

これまでの話をまとめると、ナンピン買いは安く株を買い増しできるけど、集中投資になってしまうので損する危険もあるということです。

株式投資を始めたばかりの頃、僕もナンピン買いをしていました。それも、初めて読んだ株本に「株価が下がったらナンピン買いしよう」と書いてあったからです。
 
しかし、「どこぞのプロ(自称)が推奨するナンピン買い」と、「ノーベル経済学賞を受賞した経済理論」、どちらを信じるべきかは明らかでしょう。少なくとも僕は、経済学を学び、投資理論を知った今は、ナンピン買いをしていません。
 
 
●参考文献
  1. 論文:William F. Sharpe, 1964, "Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk", The Journal of Finance, 19(3), pp. 425-442
  2. 書籍:バートン・マルキール, 2016, 『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資不滅の心理 原著第11版』, 日本経済新聞出版社


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