相続・相続税

相続人でなくても財産をもらえる特別寄与料とは?

民法の改正により「特別寄与料の請求」の制度が新設されました。これにより相続人でなかった人でも財産をもらえることになります。遺産分割や相続税の申告にも影響がありますので確認してみましょう。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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療養看護などによる貢献が配慮される「特別寄与料の請求」の制度が、民法の改正により新設されました。これにより相続人でなかった人でも財産をもらえることになります。遺産分割や相続税の申告にも影響がありますので確認してみましょう。
 

特別寄与料と寄与分は違う?

 
特別寄与料として療養看護などによる貢献が配慮される。

特別寄与料として療養看護などによる貢献が配慮される。


特別寄与料の説明の前に「寄与分」を簡単に説明します。寄与分はすでに定められており、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人がいる場合は、不公平の無いように、その相続人はその分多く財産をもらえる制度です。ポイントはあくまで対象が「相続人」ということです。そのため例えば長男の妻が貢献していた場合であっても相続人でないことから何ら考慮されることはありませんでした。貢献が無くても相続人は財産をもらえる権利があるというのに、相続人以外の人が財産をもらうためには被相続人が遺言を書くなどしなければならず、自分から欲しいと言えない立場にありました。
 

特別寄与料とは?

今回新設された「特別寄与料」は、まずその対象者が一定の「親族」となり相続人は除かれます。よって例えば長男が先に死亡していてその妻が貢献しているようなケースに特に配慮した制度とも言えます。相続人以外の一定の親族が「無償で療養看護その他により被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に相続人に対して金銭を請求できる」というものです。自分から欲しいと言える点が大きな違いです。なお一定の親族は六親等内の血族、配偶者、三親等以内の姻族です。
 

特別寄与料を請求するためには?

新設された特別寄与料はあくまで請求できる「権利」です。自動的に配慮される訳ではないので貢献した証明が必要になってきます。自分が負担した金銭の領収書や、いつ病院に付き添ったかの記録等、説明できる資料を揃えたうえで、相続人に対して請求をすることになります。相続人との協議で意見が合えばよいですが、協議が整わない場合は家庭裁判所に処分の請求をすることができます。
 

特別寄与料の請求はいつまでに行う?

せっかく請求の準備が整っても時間切れでは意味がありませんので早めに行いましょう。なお協議が整わず家庭裁判所に請求する場合は「相続を知った日から6ヶ月または相続開始から1年以内のいずれか早い日まで」と期限が決まっているため注意が必要です。
 

特別寄与料をもらえた場合の税金は?

請求が認められ特別寄与料をもらえた人は「相続税」の対象となります。相続税がかかることを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりません。なお相続人ではないため相続税の2割加算があることにも注意しましょう。反面、特別寄与料を支払った相続人はその分の相続税は少なくなります。この場合は4ヶ月以内に限り、相続税を戻してもらう更正の請求をすることができます。
 

いつから改正されるのか

特別寄与料に関する民法改正の施行日は平成31年7月1日と決まりましたので、これ以降の請求より適用されます。
 
実際に被相続人の面倒を一番みていたのは相続人ではない人(例えば長男の妻など)ということも少なくありません。面倒をみてくれた人に対して生前贈与とか遺贈する内容での遺言を書いておくなどしておければよいですが、被相続人は感謝の気持ちはあってもなかなか行動にまでは起こせないものです。今回の改正でそれが貢献した本人から請求できる点はこれまでにない大きな変化ですが、特別寄与料の請求が原因で争続(そうぞく)になってしまうことも考えられます。やはり被相続人が生前に相続人に対して「面倒をみてくれた人への感謝」の気持ちを表しておくことが一番で、それが相続人にも納得のいく円満な爽続(そうぞく)になるのではないでしょうか。
 
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