不妊治療が辛いというご相談はとても多い
「なかなか治療が上手くいかないので、3カ月くらい治療をお休みして、漢方で体作りをしようと思います」
漢方外来では、少し辛そうな表情で、このようにお話してくださる患者様がとても多くいらっしゃいます。
「クリニックの先生から、治療を少し休んで体質の改善を勧められました」とお話してくださる方も多いのですが、この場合は治療の再開に向けての一時的なお休みと捉えて対応させていただいています。
一方で、本当に心が疲れてしまった時には、治療を休むだけではなく、妊活を止めるという選択をされる場合もあります。年齢的な限界を感じられて、でも諦めることもできず、休みたいわけではないのに、卵子の成長が見られないことから休まざるを得ない、という状況の方もいらっしゃいます。
今回の記事では、どうしても治療が辛くなって、妊活、不妊治療を続けることが精神的に苦しくなってしまった時に試していただきたい対処法をご紹介します。
不妊治療が妊活が精神的に辛くなったら……まずは辛い感情を吐き出してみる
同じように「不妊治療が辛い」と感じられていても、実はその辛さの「理由」は様々です。治療のための投薬や注射、内診、通院など、治療自体も大きな負担になりますが、それらの治療が受けられる体であること、経済的に叶っていることは、別の視点からみれば「辛い」だけではないかもしれません。流産後や、持病の関係で、不妊治療を受けることすらできない時期を経験された方からは、治療を受けられることを幸せに感じているという声も聞かれます。いずれにしても、治療に対して希望がある間は、辛いことを乗り越える力を持てる方が多いと思いますが、治療が長引くにつれて、疲弊してくるのは自然なことだと思います。
- ホルモン値が悪く、治療が上手くいかない
- 妊婦さんをみるのが辛い
- リセット(生理がくる)の度に、妊娠できないのではないかと不安になる
- 夫婦間での意識の違いが辛い(夫が協力的ではない、無関心、精液検査などを拒否)
- 仕事との両立が上手くいかない
- 流産、死産のトラウマ
- これだけ頑張って妊娠できなくて、これ以上、何を頑張っていいのかわからない
- 両親、親戚、友人との付き合いで、子供について聞かれることが辛い
「しんどいー!」
「なんで、こんなに頑張ってるのに、うまくいかないんだー!」
「私だけ、なんで赤ちゃんがきてくれないのー!」
独りで書き出すだけでも、声に出すのでも、パートナーなどに聞いてもらうのでも、感情を外に出すことで、少し自分の気持ちが客観視でき、ご自身のことを見やすくなります。
そして、あなたの「本当の気持ち」を理解した上で、どうしたいのかを選択することができます。その過程をご一緒すると、出てくる選択も様々です。
「自分は、辛いけど、やっぱり赤ちゃんが欲しい」
「赤ちゃんを授かることが普通なんだと思っていて、ただ普通になりたかった」
「妊娠をしたいのは、ここまで自分が頑張ったのだから、結果が欲しいと執着してしまっていた」
「どうしても治療で追い込まれるので、お休みをして自然に頑張ってみたい」
このような気持ちの整理は、気持ちをコントロールしょうとするのではなく、出てくる辛さや不安を受け止めて、その上で、ご自身の妊活のやり方、生き方を選択する作業なのだと思います。
不妊治療という、デリケートで、かつ年齢によるリミットがある中では、辛さをコントロールしようとすればするほど、追い込まれてしまうかもしれません。
自分の本当の感情と向き合って、どのような選択をしたとしても、「自分で選択した」ことは、その後の人生にプラスに働くと感じています。ただ、本当に辛くなってしまった時は、休むことで楽になるのであれば、治療のお休みをとってください。
休むことも辛い場合には、治療のステップダウンなど、ペースを落としてみることもお勧めです。その上で、辛い感情はコントロールしたり押さえつけずに、うまく発散させていただきたいと思います。
まとめ
先日、ご相談の中で、辛い気持ちの整理をお手伝いさせていただいた方から、このような言葉を頂きました。「授からないと幸せになれないと、呪縛にかかっていました。今は治療していますけど、幸せも感じられるようになっています」
辛いこともあるけど、幸せなこともある。辛さと幸せは、併存することもあるので、妊娠しないと幸せにならない、ということはないのだと思います。
不妊治療をしながら、ご自身の感情を大事にするは、本当に難しいことですが、ご自身で「続ける、休む、終結する」選択をして、日々の中でも、幸せに感じることを増やして頂けると嬉しいです。