なかでも「デイトレーダー」に興味を持っている人が多いようです。「株式投資=デイトレード」と考えている人もいるようでして、資産運用に対する世間の認識が捻じ曲げられている気がします。
でも、本当にデイトレードって、儲かるのでしょうか? 今回は、科学者たちが発見した「デイトレードの真実」について、詳しくご説明しましょう。
デイトレードよりも長期投資の方が簡単だし儲かる!?
いきなり、結論から言ってしまいましょう。デイトレードは、長期投資よりも儲からないし、難しいです。「儲けることは不可能」とまでは言いませんが、経済学者らの間では、「デイトレードで稼ぐぐらいなら、長期投資をした方が安全だし確実だ!」という見方が一般的です。デイトレードが儲かりづらいことは、経済学者らの研究からも実証されています。経済学者のブラッド・バーバーとテランス・オーディーンらの研究(1)によれば、「頻繁に取引している人ほど利益を出せていない!」ということが分かっています。
なぜ、デイトレードが儲かりづらいのかというと、単純に取引手数料が高くつくからです。たとえば、デイトレードで1日1往復、株を取引すると、1年間で250往復分の取引手数料がかかります。
一方、長期投資で1年に1回だけ、銘柄を入れ替えている人は、1年間で1往復分の取引手数料しかかかりません。単純計算でも、手数料を250分の1に抑えることができる訳です。
ネット証券の台頭により、投資家は利益を出せなくなった?
こんな話をすると、「いまはネット証券のおかげで手数料も安くなってきたから、問題無いんじゃないの?」と思う方もいるでしょう。しかし、この点についても、ぼくは懐疑的です。むしろ、ネット証券が台頭してから、ぼくら投資家の運用成績は著しく悪化しています。
専門誌「The Review of Financial Studies」に掲載された論文(2)によると、「ネット証券の台頭によって、個人投資家の運用成績は改善するどころか悪化した」ことが分かっています。
論文によると、ネット証券によって手数料が安くなったものの、その分頻繁に取引する投資家が増え、短絡的な取引を行う人も出てきたのだとか。
残念ながら、「デイトレーダーは家でお金を稼げる夢の職業だ!」なんてことを考えるのは、やめておいた方がよさそうです。
それでもデイトレーダーになりたい! という方は
ここまで読み進めてくれた方は、「それでもデイトレーダーになりたい!」なんて方はいないでしょう。ですが、もしかしたら、周りにデイトレーダーになりたいご友人などがいるかもしれません。できればあなたには、そういう人が周りにいたら、止めていただきたいものです。しかし、それでも話を聞いてくれない場合は、「空売りを覚えた方が、利益を出せる可能性が上がるかもよ」と伝えておくとよいかもしれません。
専門誌「Journal of Financial Economics」に掲載された論文(3)によると、「日中は株価が上がりにくい傾向」が見られたのだとか。とくに日本株市場の場合は、場中は株価が下がりやすい傾向があります。ですから、この時間内に利益を出したい場合は、空売りで取引した方が、まだ利益が見込めるでしょう。
まとめ
ネット証券の台頭のおかげで、ぼくらは簡単に株式投資ができるようになりました。しかし、そのおかげで、ぼくらが利益を出せているか? というと、そうではないようです。少なくとも「デイトレードをやっても儲かりにくい」ことは分かっています。だから、デイトレードに対して、間違った期待を抱くのはやめましょうね。
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【参考文献】
- 論文:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2000, "Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors", The Journal of Finance, 55(2), pp. 773-806
- 論文:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2002, "Online Investors: Do the Slow Die First?", The Review of Financial Studies, 15(2), pp. 455-488
- 論文:Lawrence Harris, 1986, "A transaction data study of weekly and intradaily patterns in stock returns", Journal of Financial Economics, 16(1), pp. 99-117