スウィッシュはメガヒットスクーター「アドレスV125」の後継機になるか?
私は2台のバイクを所有しており1台はハーレー。もう1台はスズキのアドレスV125です。現在は50ccスクーターの販売台数が低迷しており、50cc以上125cc以下の原付二種クラスが人気となっています。原付二種クラスの人気に火をつけた立役者となったのがスズキのアドレスV100であり、後継機のアドレスV125です。スズキはアドレスV125の生産終了を発表した後にアドレスという名前がついたスクーター、アドレス110とアドレス125をリリースしていますが、個人的にはアドレスV125の後継機とは言えないと感じました。
その理由の一つがタイヤのインチ数と車体の大きさ。アドレスV125は50cc並みの車体の大きさに10インチの小径タイヤを採用していた事から、フットワークの軽さが最大の魅力でした。
しかし後から発表されたアドレス110やアドレス125はタイヤのインチ数が大きく車体も大きい事から、個人的な感想ですが「アドレスVシリーズの後継としてはなんか違うな……だからメーカーもVをつけなかったのか?」と感じていました。
しかしスウィッシュは、前後共に10インチタイヤを採用しています。今度こそアドレスVシリーズの遺伝子を継いだモデルが現れたのでしょうか? アドレスV125を所有する筆者が、都内の通勤で一週間スウィッシュを試乗してみました。
スウィッシュはアドレスV125より豪華装備! だけど値段が高い……
アドレスV125は決して豪華とは言えない装備でしたが、価格はかなり抑えられていました。爆発的にヒットした理由の一つはその販売価格とも言えます。アドレスV125がカタログ落ちした時の販売価格は24万3000円。それに比較してスウィッシュの販売価格は31万8000円となっています。環境性能の基準は年々厳しくなっており、装備を追加しなければならなくなっているので多少価格が高くなるのは仕方がありませんが、アドレスV125との差額は7万5000円。決して小さい額ではありません。しかし差額分だけ、装備も豪華になっています。
アドレスV125と比べると、ヘッドライトとテールランプはLED化。さらにリアには導光タイプのLEDポジションランプが装備されています。 メーターは視認性の良いフルデジタルタイプが採用されており、表示される情報量は多くなっています。メインキーの横にはUSBソケット電源を配置。すぐ下にはフロントインナーラックがあり、走行時の衝撃対策が必要ですが、そのインナーラックに携帯電話を入れて充電することも可能です。
またアドレスV125ではオプション扱いだったサイドスタンドもスウィッシュでは標準装備。シート下トランクスペースもアドレスV125はヘルメットを一個入れたらいっぱいでしたが、スウィッシュはヘルメットにレインウエアぐらいは納まるスペースが確保され、ヘルメットホルダーも左右に一つずつ装備されました。
スウィッシュのリアキャリアはアドレスV125に比べてフレームが太くなり、最大積載許容重量も+1kgの6kgとなりました。アドレスV125といえば成約時にGIVIのリアボックスをプレゼントするキャンペーンが行われ、リアボックスが便利なギアとして浸透した経緯があります。スウィッシュのリアキャリアはさらに強固になっているので、多少容量の大きいリアボックスでも充分に装備できそうです。
スウィッシュの燃費・足つきは?
今回一週間都内の通勤で試乗したところ、スウィッシュの燃費は41.18km/Lでした。スウィッシュのガソリンタンク容量は5.5Lなので、計算上の連続航行距離は226.49kmとなります。アドレスV125のタンク容量は6.0L。スウィッシュの燃費はカタログスペック上ではかなり向上していますが、アドレスV125も大体200km走ると給油タイミングだったので、連続航行距離は大きくは変わらないようです。スウィッシュのシート高は760mm。アドレスV125に比べると20mm高く、車両重量も17kg重くなりました。ですが足が下りる位置のカウルをカットして足つき性を良くするスズキお得意のカットフロアボードと、前方が絞り込まれているシート形状のおかげで、足つき性は良好。身長165cmの筆者でもほぼ両足がべったりつきました。
スウィッシュは通勤特急の後継機になりうる走行性能を持っているか?
アドレスV125は“通勤特急”と称され、フットワークの軽さが最大の売りでした。スウィッシュは前後10インチタイヤを装備しているものの、重量が大幅に増量。試乗前は「加速は期待できないのでは?」と感じていました。
スズキがスウィッシュに搭載したのはSEPエンジン。力強い加速と燃費性能を両立したユニットです。SEPエンジンはどうしても加速がマイルドになってしまう傾向がありますが、スウィッシュに乗り込みアクセルを開けてみると非常に力強く加速しました。
燃費性能に優れたエンジンは基本的に加速がフラットなのですが、スウィッシュは走り出しに力強さがあり、一気に加速します。30km/hぐらいからはフラットに加速していきますが、もたつくことはなく、90km/hぐらいまではスルスル加速します。
スウィッシュのフロントタイヤはアドレスV125に比べてワンサイズ幅広が採用され、車重が増えたことなどによって走行中の安定感が多少増した感じはあります。ただ10インチタイヤ採用の最大の利点は、やはり小回りが効くこと。制限速度一杯で走行するよりも混雑した街中でストップ&ゴーが繰り返されるシチュエーションでこそ光ります。
前後サスペンションは若干しっかりとした印象がありますが、コーナリングで寝かしこんだ際の安定感にはやはり欠けます。小回りの良さとトレードオフといえるでしょう。ブレーキもタッチが良くなり制動力は良くなっています。
スウィッシュはアドレスV125の後継と言えなくはないけれど……
アドレスV125は年式によって駆動系のセッティングが異なっており、最終型と比べるとスウィッシュの方が加速は良いぐらいでした。10インチタイヤは予想通り小回りしやすく感じましたが、重くなった車両重量などの影響でアドレスV125に比べるとヒラヒラ走れる感じではなくなっています。逆に言えば安定感は増しているので、法定速度の60km/hで走れる道では以前よりも走行に余裕があります。国内の原付二種モデルで前後10インチタイヤを採用しているスクーターはそのほかにないので、スウィッシュの動きは一番アドレスV125に似ているといえます。そのため今「アドレスV125の後継機は?」と問われれば「スウィッシュ」と言えるでしょう。
装備も豪華になって走りも進化していますが、現在アドレスV125を所有している筆者としては、もっと装備を簡素にして車両重量を100kg以下にして販売価格も25万円前後に抑えてほしかった!
ただ先入観無しにスウィッシュを試乗すれば、アドレスV125に替わる街のコミューターして優れた性能を持った一台と言えます。しかし筆者のようにアドレスV125の後継機を期待しているユーザーなら、「惜しい! アドレスV125とはちょっと違う!」と感じるかもしれません。
スウィッシュ関連リンク
スウィッシュのエンジン音、マフラー音はこちらの動画でご確認下さい
アドレスV125SSの試乗インプレッションはこちら