身長165cmでも気軽に乗れるアフリカツインがやってきた!
2016年に発売から一週間で年間販売目標を達成するほど好調な立ち上がりとなったHONDAのCRF1000L Africa Twin(以下アフリカツイン)。発売から2年後の2018年4月にバリエーションモデルのCRF1000L Africa Twin Adventure Sports(以下アフリカツインアドベンチャースポーツ)をリリースしました。
アフリカツインアドベンチャースポーツのリリースに合わせてベースモデルのアフリカツインも熟成され様々な機能が追加されましたが、アフリカツインアドベンチャースポーツには更にスポーツツアラーとして便利な装備が追加されました。しかし個人的に歓迎したいのはアフリカツインアドベンチャースポーツにはtype LDという専用のサスペンションを装備したローダウン仕様が追加された事です。
オフロードを走行する事を考えれば足回りでローダウンしてしまうと走破性が失われてしまいますが、排気量の大きいアドベンチャーバイクでオフロードを走行するテクニックを持っているのは一部のユーザーに限られます。
私も含めてオフロードを走行するテクニックはないけれど、アドベンチャーバイクのデザインや長距離走行に適した装備が好きというユーザーも多いはず。個人的には大歓迎のアフリカツインアドベンチャースポーツtype LD。今回も一週間都内の通勤で試乗してインプレッションします。
2018年モデルのアフリカツインに追加された装備とは?
ベースモデルとなっているアフリカツインも2018年モデルからマイナーチェンジを果たしました。大きな点としては電子制御スロットルが採用されている点。アナログなワイヤーではなく、デジタルなセンサーでアクセル開度を制御する電子制御スロットル(スロットル・バイ・ワイヤシステム)は、それ単体では一般ライダーとしては大した違いを感じる事がありません。
しかしアクセル開度をコンピューター制御にする事で、後輪が空転するのを緩和するトラクションコントロールを更に緻密にコントロールできるようにし、エンジンの出力特性を変更するパワーモードなどの追加を可能にしています。
今回のマイナーチェンジではトラクションコントロールは3段階だったものが7段階調整可能となり、好みに応じたエンジン出力特性を選択できるライディングモードの選択が追加。更にエンジンブレーキの効き具合も調整できる機構が備わりました。 調整機構をシチュエーションに応じて最適なセッティングにしたデフォルトの走行モードが用意され、ツーリングに最適な「Tour(ツアー)」、街中の走りに最適な「Urban(アーバン)」、未舗装路の走行に適した「Gravel(グラベル)」の3つを走行中に簡単に変更できるようになりました。調整機構をユーザーの自由に選択できる「User(ユーザー)」モードも用意されています。 また2016年モデルのアフリカツインをインプレッションした際に「追加するとしたらUSBチャージャーぐらいしか思いつかない」とコメントしましたが、2018年モデルからはアクセサリーソケットが標準装備となり、いよいよ追加する物が見当たらなくなってきました。
ウインカーの消し忘れを防止するオートキャンセルウインカーや鉛のバッテリーに比べて大幅な軽量化が可能となるリチウムイオンバッテリーが搭載されたのも電装系の変更点です。ウインカーのオートキャンセラーは愛車のハーレー、スポーツスターにも装備されていますが、交差点などでは有効なものの、レーンチェンジの際などは手動でウインカーを消す必要がありました。しかしアフリカツインのオートキャンセルウインカーはレーンチェンジの際などにも有効です。
アフリカツインとアフリカツインアドベンチャースポーツは何が違う?
アフリカツインのバリエーションモデルとして登場したアフリカツインアドベンチャースポーツ。最大の特徴は燃料タンクの容量が18Lから24Lに増えたことです。実際にタンク部分を見てみると左右に広がりボリュームが出ました。ただしニーグリップする部分は広がっていません。 アフリカツインのウインドスクリーンは以前から高性能でしたが更に大型化。シートの調整で20mm下げる機構が備わっていますが、着座位置を下げて走行するとヘルメットにあたる風まで軽減され、上半身全体に当たる風が軽減される印象。走行時の体への風当たりを軽減する事でライダーの疲労を軽減します。 リアキャリアのデザインもアルミの鋳物からパイプを基調としたステンレス製に変更になりましたが、以前と変わらずリアシートと同じ高さに装着されており、長物もリアシートとキャリアを使えば積載可能。キャンプツーリングの際などには使い勝手が良さそうです。 外装面では転倒時などに車体へのダメージを軽減するフロントサイドパイプや飛び石などから車体をガードする大型のスキッドプレートが追加されています。これらの装備は後から追加するユーザーも多いので歓迎したいところです。アフリカツインアドベンチャースポーツ type LDの足つき性は?
アフリカツインアドベンチャースポーツはアフリカツインと比べてサスペンションのストロークが長くシート高が20mm高い890mm(シートの調整で870mmにもできる)に設定されておりオフロードの走破性を向上しています。しかしアフリカツインアドベンチャースポーツ type LDはシート高の低い830mm(シートの調整で810mmにもできる)に設定されています。身長165cm、65kgの筆者が跨ってみるとサスペンションのストロークが短くなっているので、ライダーがシートに座っても一般的なオフロードバイクに比べて沈み込みが少ない印象です。足を真っ直ぐに降ろすとステップにあたるので、少し前か後ろに足を置かなければいけないので足つき性は良くはありません。 しかしシートの調整で20mmシート高を下げ、更にサスペンションの前後プリロードの調整を行うことで、シートに座った際の沈み込みを大きくする事ができます。この状態で再度跨ってみると足つき性が余裕になり片足ならべた足。両足もつま先は設置するようになりました。この状態なら街中のストップ&ゴーも苦にはなりません。
また今回はマニュアル仕様をお借りしましたが、アフリカツインにはDCT仕様というオートマ感覚で運転できるモデルがあります。ですがDCTは10kgほど重くなってしまうのがデメリット。私のように身長の低いライダーは軽量なマニュアル仕様がオススメです。
アフリカツインアドベンチャースポーツの走行モードの違いとは?
まずチェックしたいのは今回追加された走行モード。実際に使ってみるとTourが最もスポーティーなモード。Urbanは若干穏やかで、Gravelが雨の日や非舗装路を走行するのに適したモードという印象です。アフリカツイン2018年モデルは、エンジンの出力が3PS向上し95PS/7500rpmとなりました。Tourに設定すると2016年に試乗した初期型のアフリカツインに比べて加速が良くなり、伸びの良い加速をするようになりました。Urbanは2016年モデルに近い動きをする印象があり、Gravelはアクセルを少し多めに開けても穏やかに加速する印象です。
Userモードは全ての設定を好みにすることができますが、3つのデフォルトモードで様々なシチュエーションをカバーできるので今回は使用することがありませんでした。最もスポーティーなTourでも緻密なアクセルワークを求められるわけではないので、試乗中は主にTourを使いました。期間中に雨の日が数日あったのでGravelモードも使用しましたが、後輪の空転を緩和するトルクコントロールの介入が強く、アクセルに対しての加速も穏やかなので安心して走行する事が可能です。
アフリカツインアドベンチャースポーツ type LDのサスペンションの動きは?
専用サスペンションによりシート高を60mm下げたアフリカツインアドベンチャースポートtype LDですが、調整可能な前後のサスペンションを柔らかいセッティングにすると一般的なロードバイクと比べてストローク量が大きく乗り心地が良い印象です。
サスペンションは様々な調整機構が備わっているので好みに応じてセッティングを変更できますが、初期の沈み込みがスムーズなので路面に対しての反応が良く、コーナリング時にも倒しこみのきっかけが作りやすいように感じました。ストローク量は減ったものの、それでも街中を走るには充分ですし、高速道路や一般道を走る用途であればtype LDの方が適しています。
アフリカツインアドベンチャースポーツの燃費は?
多少高速道路も走行しましたが殆ど街中の試乗という状態で、燃費は20.2km/Lでした。アフリカツインアドベンチャースポーツはタンク容量が24Lなので、計算上連続航行距離は484.8kmという事になります。1000cc前後のバイクでこれだけの距離を連続走行できるバイクは殆どありません。長距離を走るのが好きというツーリング好きな人にとって、アフリカツインアドベンチャースポーツは最高のツアラーと言えるでしょう。
街中のストップ&ゴーも高速ツーリングもこなすマルチな一台
初代アフリカツインもローシートを装備してサスペンションを柔らかいセッティングにすれば街中の走行に耐えられない事もありませんでした。しかしローダウンサスペンションが装備されたアフリカツインアドベンチャースポーツtype LDは街中も快適に走行する事ができます。もちろんナックルガードが装備されハンドル幅も広いので狭い道を走行する際には少し気を使うことになりそうですが、サスペンションのセッティングを自分にあったセッティングにすれば242kgの車両重量を感じるのは取り回しの際だけで、走行中は常に軽快に感じる事ができます。
1000ccクラスのバイクとしては95ps/7500rpmと控えめですが、反面、エンジンの発熱量も少なく多少気温が高いシチュエーションでも快適に走行する事ができそうです。
大柄な車体とタイプLDでも800mmを超えるシート高を見ると小柄なライダーは敬遠してしまいそうなバイクではありますが、体格的に恵まれていない筆者が試乗した感想は“マルチに使える一台”の一言に尽きます。数値だけ見て「無理だな」と感じてしまった方は是非試乗してみることをオススメします。
アフリカツインアドベンチャースポーツ関連リンク
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