お金を使って幸せになるには、モノを買っても効果が薄い?
「マイホームがほしい!」「高級車がほしい!」といったことを夢見る人は少なくないと思います。少なくとも、ぼくもつい最近まで憧れていました。ぼくの妻も、「マイホームがほしい」「すてきな車がほしい」と言っていました。 家を買うべきかどうか、彼女とは何度も話し合いました。その結果、我が家では、「マイホームも高級車も買わない」という結論に行き着きました。
なぜ、こんな結論に行き着いたのかというと、マイホームや高級車を買っても、幸せになれないからです。コロンビア大学の心理学者エリザベス・ダン博士らは、「どのようにお金を使うと、幸せになれるか?」といったことを、著書(1)にまとめました。彼女らによると、お金を使って幸せになるには、モノを買っても効果が薄いのだとか。
これは、モノを買っても、買った瞬間は満足でも、だんだんと満足感が薄れていってしまうのが原因のようです。
家よりも、洋服などで考えるとわかりやすいかもしれません。「ステキ!」と思った洋服を買っても、ぜんぜん使わなくて後悔したことはありませんか?これと同じような過ちを、高額な買い物でも犯してしまうのだと考えられます。
なかでも、人生でもっとも大きな買い物といえば、「マイホーム」と「車」があるでしょう。こういった大きな買い物で間違えてしまったら、目も当てられませんよね。だからこそ、そういった間違いをしないように、注意する必要があると思うのです。
マイホームを買っても幸せにはなれない?
宗氏の研究(2)によると、「どのような建物に住むか?」ではなく、「どのような地域に住むか?」が大切だということですね。自然災害の被害を受けづらい場所に住んでいる限りは、基本は、家のゴージャスさよりも、地域性を重視した方がよいと言えるでしょう。彼の研究でもっとも興味深いのは、「借家ではなくマイホームを買っても、幸福度は高まらない」という点です。その点も考えると、「マイホームが良い!」というこだわりは、たいして幸福につながらないと思います。
高級車を買っても幸せにはなれない?
ちなみに、個人的には「車を買いたい!」という方には反対しません。車を買うことで、旅行へ行けるなど、お金では買えない思い出につながるからです。そう考えると、車を持つこと自体は、良いことだと思います。問題はここからです。「どうせ車を買うなら、高級な車がほしい!」と考えるのは、ナンセンスです。ミシガン大学のノーバート・シュワルツ氏の研究(3)によると、高級車を買っても幸福度は高まらないのだとか。
つまり、「車を手に入れる」こと自体には効果があるのですが、それが高級だろうが、そうでなかろうが、人生は変わらないということです。よって、高い車を買っても、科学的に見るとお金のムダということになります。
ただし、お金持ちの一部の層は、節税目的のために高級車を買っていることもあります。ですから、節税が目的なら、高級車を買うのも悪くないでしょう。しかし、「高級車を買って、かわいい女の子をナンパしたい」くらいのことしか考えていない方は、考え直した方がよいかもしれません。
まとめ
人生の二大出費。「マイホーム」と「車」。これら2つは、少なくとも金銭的には人生を大きく揺るがす出費です。だからこそ、こういった大きな出費を間違えると、人生はとんでもない方向に……狂ってしまうでしょう。たった1つの間違いで、幸せになれなくなってしまう。そんなに悲しいことはありません。そうならないように、ぼくらも気をつけたほうがよいでしょうね。
●参考文献
- 書籍:エリザベス・ダン, マイケル・ノートン, 2014, 『「幸せをお金で買う」5つの授業』, KADOKAWA
- 論文:宗健, 2018, “主観的幸福度と住まいの関係”, リクルート住まい研究所
- 論文:Norbert Schwarz, Jing Xu, 2011, “Why don’t we learn from poor choices? The consistency of expectation, choice, and memory clouds the lessons of experience”, Journal of Consumer Psychology, 21(2), pp. 142-145