未来時制のない言語を使っている人ほど、貯金をしている?

行動経済学者であるキース・チェン氏が、興味深い講義(1)をアップしています。彼によると、「未来時制のない言語を使っている人ほど、貯金をしている」のだとか。
 
未来のことを近いものだと感じることで、積極的に貯金できる

未来のことを近いものだと感じることで、積極的に貯金できる



 
たとえば、日本語には未来時制がありません。日本語では、今日の話をするときと、明日の話をするときで、文法は変わりません。「今日、やります」「明日、やります」のように、同じように言い表すことができます。
 
こんな話をすると、「じゃあ、日本人はもともと貯金をしやすいんだね!安心だね!」という声が聞こえてきそうです。たしかに、それはそうなのですが、大事な話はここからです。
 
キース・チェン氏は、この研究の考察として、「未来のことを現在のことと近いものと認識している人ほど、お金を貯めやすい傾向があるのではないか?」と結びました。
 

あなたはキリギリス?それともアリ?

この話の説明としては、アリとキリギリスの寓話(The Ant and the Grasshopper)が良い例だと思います。キリギリスは夏の間、バイオリンを弾き、歌を歌って楽しく過ごします。その間、アリは、厳しい冬に備えて食料を蓄えるのです。
 
冬が訪れると、当たり前のことながら、キリギリスは食料を失います。途方に暮れたキリギリスは、アリに助けを乞いますが、アリは「夏には歌っていたのだから、冬には踊ったらどうだい?」と拒絶され、そのまま息絶えてしまいます。
 
世の中には、キリギリスのように生きる人がたくさん居ます。彼らは、未来を遠いものだとして解釈します。10年先、20年先の将来を、「まだまだ先だ」と解釈し、遊び呆けてしまうのです。この生活方式は、まさにキリギリスそのものですね。
 
一方、アリのように生きる人も居ます。彼らは、未来を近いものだとして解釈します。10年先、20年先の将来を、「もうすぐ来る!」と解釈し、熱心に働き、節制するのです。そのおかげで、厳しい冬が訪れたときも、温かい暮らしを守ることができます。
 

キリギリスがアリになるためには?

経済協力開発機構(OECD、Organization for Economic Cooperation and Development)の調査(2)によると、日本の貯蓄率は毎年のように低下しています。1970年、日本の貯蓄率はGDPの20%ありました。しかし、2016年、日本の貯蓄率はGDPの5%にまで下がりました。このデータから読み取れるのは、アリが減っていて、キリギリスが増えているということでしょう。
 
これからの世の中では年金も当てになりませんから、貯金が減っているのは由々しき事態です。では、どうすれば、キリギリスのような生き方をしている人は、アリのような生き方へと生まれ変わることができるのでしょうか?
 
キース・チェン氏の考察が正しいとすれば、私達は、「未来のことを近いものだと感じることで、積極的に貯金できる」のだと、私は考えています。だから、第一に大切なこととしては、将来設計のために時間を空け、計画を立ててみることだと思います。
 

将来設計アイデアその①「タイムスリップ法」

ちなみに、将来設計が苦手な私が「タイムスリップ法」と呼んでいる方法がオススメです。具体的なやり方としては、「自分がこのまま、とつぜん◯歳になったらどうなる?」ということを考えます。
 
たとえば、老後資金について考えたい場合は、「自分が今のまま、70歳になったら、どんなことに困るだろうか?」ということを考えます。すると、「生活資金が無いから、働かなきゃいけない」「でも、今の自分のようには働けないから、収入が減ってしまう」「けっこう、ジリ貧な生活になりそうだな…」といったことが想像できるようになります。
 
このようにして、今すぐやめるべき悪い習慣や、新しく始めるべき良い習慣などをあぶり出していきましょう。
 

将来設計アイデアその②「未来の自分からの手紙」

他にも、スタンフォードの心理学者ケリー・マクゴニガル氏が推奨する方法(3)として、「未来の自分になりきってみて、今の自分に対して手紙を書いてみる」という方法があります。
 
この方法では、理想的な生活を送っている未来の自分が、今の自分に対して「あなたが◯◯や△△を頑張ってくれたおかげで幸せに暮らせています。ありがとう」という手紙を書いてみます。未来の自分になりきったつもりで、今の自分に感謝を伝えるということですね。
 
この方法には二重の効用があります。1つ目は、自分の理想像を明確にした上で、将来設計ができるという点です。もう1つは、「感謝の気持ち」を呼び起こすという点です。感謝の気持ちは、そのものに貯金を増やす効果もあります(4)。ですから、そういった点でも優れた手法だと思います。
 

「何をすべきか?」を明確に

もちろん、「計画をすれば、それで何でもうまくいく」なんてことはありません。結局、実践が伴わなければ、計画をしたところで意味がありません。だから、きちんと実践へ移すためには、「具体性を高めるのがよい」なんて話(5)もありますから、このあたりを意識しつつ、楽しく将来設計できるとよいですね。
 
 
●参考文献
(1)   動画:キース・チェン, 2012, “言語が貯蓄能力に与える影響”, TED
(2)   資料:OECD, National income – Saving rate – OCED Data
(3)   書籍:ケリー・マクゴニガル, 2016, 『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』, 日経BP社
(4)   論文:Davide DeSteno, Ye Li, Leah Dickens and Jennifer S. Lerner, 2014, “Gratitude: A Tool for Reducing Economic Impatience”, Psychological Science, 23(6), pp. 1262-1267
(5)   書籍:ハイディ・グラント・ハルバーソン, 2013, “やってのける 意志力を使わずに自分を動かす”, 大和書房

 
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