世界中に広まるモンテッソーリ教育とシュタイナー教育
モンテソーリ教育とシュタイナー教育は何がどう違うのでしょうか?
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育というと、日本では、幼児教育の現場のみに取り入れられている場合も多いかもしれません。それでも、世界の多くの地域では、幼児教育から高校まで続くカリキュラムとして実践されています。
では、こうして世界中で受け入れられているモンテッソーリ教育とシュタイナー教育には、一体、どのような共通点と相違点があるのでしょう?
共通点1:個人の研究や理念を始まりとする
両者には、従来の教育法とは異なる次のような共通点があります。モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点1つ目は、2つの教育法が個人の研究や理念を始まりとしたことです。モンテッソーリ教育は、元々は、イタリアの科学者で医師のマリア・モンテッソーリ氏が、知的障碍者や貧困層の健常児を対象に始めた教育法です。
また、シュタイナー教育は、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナー氏が、工場労働者の子どもに向けて築いた教育法でした。こうして、モンテッソーリ教育もシュタイナー教育も、一個人の研究や理念を基に始まりました。
共通点2.100年近く続く教育法である
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点2つ目は、同じ時代にヨーロッパで生まれ、世界中で100年近く支持されているということ。共通点3.生徒個々のニーズや学習ペースを尊重
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点3つ目は、生徒個々のニーズや学習ペースを尊重しているということ。子どもはひとりひとり、ユニークな人格とギフトを持っている捉えられます。そのため、個々のニーズや学習ペースが、より尊重されます。教師の役割とは、生徒ひとりひとりの理解を深め、その子の性質を尊重し、その子が持てる力を最大限発揮できるようサポートすることにあります。
共通点4.アクティブ・ラーニングを重視する
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点4つ目は、アクティブ・ラーニングを重視している点。生徒は、教師からの一方的な講義を受け身で吸収するのみではなく、独自の教材やメソッドを用いたプロジェクトや体験学習を通し、より能動的に学習過程に関わるよう導かれます。共通点5.成績表がない
モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の共通点5つ目は、2つの教育法ともに成績表がないということ。テストなど、画一的な点数のみで生徒を評価することがありません。様々な側面から生徒をとらえる「観察」を用い、生徒の成長をサポートします。モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の相違点
モンテソーリ教育もシュタイナー教育も世界中で受け入れられている教育法ということで共通点もあるが、その内容は大きく異なる
相違点1:子どもの成長過程の捉え方
■モンテッソーリ教育:「敏感期」を通して、子供は大きく成長するモンテッソーリ教育では、子どもが自発的に、何らかの作業を繰り返すことを「集中現象」と呼びます。例えば、両手にコップを持ち、片方から片方へ水を移すといった行為を夢中で繰り返すなどです。
モンテッソーリ氏は、子どもが、こうしたある特定の作業に対し強い感受性を持つ時期を「敏感期」と名付けました。そして、自発的な強い好奇心に溢れる「敏感期」を通して、子どもは大きく成長するとします。
また、こうした「集中現象」を引き起こす活動を「ワーク」と呼び、モンテッソーリ教育の教室には、教具や体験活動を通し、子どもたちが「ワーク」に夢中になることのできる環境が整えられています。
■シュタイナー教育:年齢で「意志」「感情」「思考」の時期に分ける
シュタイナー教育では、人間の成長過程を、年齢によって次のような「3つの時期」に分けています。
- 第1七年期(0~7歳) :健やかな身体の動きを通して「意志」を培う時期。毎日の生活のリズムが重視され、子どもは「模倣」を通し、周囲の大人からの影響を全身に吸い込んで成長するとされます。
- 第2七年期(7~14歳):「感情」が育つ時期。シュタイナー教育の教室では、備品の色彩や形状や質感など細部にまで芸術的な配慮が行き届き、芸術を通して豊かな感性を育むことが重視されています。
- 第3七年期(14~21歳):「 思考」の力が育ち、自分の判断で自分と世界の関係を決定していく時期。世界の中で自由で自律的に考えることのできる大人に育つようサポートされます。
相違点2:幼児期に求められるもの
■モンテッソーリ教育:幼児期から「秩序」や「ワーク」を重視例えば料理や掃除など、より現実的な体験活動に従事することが期待されます。また、幼児期から、例えば「靴紐を結ぶ」など、子どもが「自分でできる!」と感じられることを増やすよう励まし、子どもの自信や自立心を培います。
■シュタイナー教育:想像遊びが重視シュタイナー教育では早い時期から「大人のように考え行動すること」を促さないよう指導されます。教室では、子どもが本来持つ豊かな想像力を狭めてしまわないよう、絵本よりも口頭での「ストーリーテリング」が用いられ、教室におかれる人形にも目や鼻や口がついておらず、子どもは人形の表情を想像して遊びます。
こうして、モンテッソーリ教育では、より早い時期から自立を促し、シュタイナー教育では、より長い間「子どもであること」が理想とされます。
相違点3:学校と教師の役割
教師の役割もそれぞれ異なる特徴があります。
学校は、考え抜かれた教具に囲まれ、整理整頓された秩序ある空間で、子供がワークに没頭できる場としてとらえられます。子どもは、先生より、環境や他の子から個別に学び、クラス全体に与えられる授業はほとんどありません。そして、まるで教師がいないかのように、子どもの1人1人がそれぞれのワークに没頭する学習空間こそ、理想とされます。
■シュタイナー教育:学校は家庭の延長、教師は子供のロールモデル
特に幼児期ほど、家庭にいるときのようにリラックスできるよう、柔らかな色合いや自然素材の玩具や装飾が用意されます。教師は模倣される「ロールモデル」としてとらえられ、そのため、道徳や学ぶことへの情熱を体現するよう献身します。
モンテッソーリ教育では、学校は「ワーク」に没頭する場であり、教師は環境を整える要でありながらも、表立つことのない空気のような存在が理想とされます。一方、シュタイナー教育では、学校は家庭の延長であり、教師は教室での権威の中心であることが目指されます。
相違点4:幼児期の学業への姿勢
モンテッソーリ教育では、幼児期から、独自の教具を用いた知的活動を励まします。一方、シュタイナー教育では、7歳まで、想像遊びを通した豊かな体験を重視し、アカデミックな営みはできるだけ避けられます。相違点5:クラス編成
モンテッソーリ教育では、実社会に似せ、3-6歳、6-9歳、9-12歳など、年齢の混ざったクラス編成となっています。シュタイナー教育では、年齢別の編成となり、教師と生徒の相互理解を深めるため、同一の教師が何年にもわたり持ち上がりで同じクラスを担当するのが理想とされています。
以上のように、モンテッソーリ教育もシュタイナー教育も、従来の教育法とは異なり、それぞれ独自の特色を持っています。子どもや家庭のニーズに合った教育法を選択し、子どもの健やかな成長をサポートしてあげたいですね。