家計の金融資産額は1829兆円、4期連続して過去最高更新とはならず
2018年6月27日に日本銀行が公表した資金循環統計によると、2018年3月末(2017年度末)の家計の金融資産額は1829兆円となりました。比較可能な2004年以降では年度末ベースでは過去最高額を更新しています。年度末ベースでは過去最高を更新したものの、年末や年度末などの節目を考慮しなければ、残念ながら過去最高更新は次回以降におあずけとなっています。ちなみに、金融を除く民間企業が保有する金融資産額は、前年同月比8.5%増の1178兆円でした。
家計の金融資産額の過去最高は2017年12月末の1855兆円。最高額と比較すると26兆円も金融資産額は減少しています。2017年12月末と比較すると、世界的に株価が調整局面であったことがその背景にあると考えられます。少々気が早いですが、2018年6月末の金融資産額も残念ながら過去最高の1855兆円を上回ることはできていないと推測されます。2018年3月末同様に、株価が調整していることがその要因と考えられるわけです。
とはいえ、1年前の2017年3月末と比較すると21兆円も家計の金融資産額は増えているのです。収入がなかなか増えない中、家計管理を上手く行い貯金を増やし、また余裕資金で投資を行った結果ですから、家計(個人)はしたたかに資産形成を行っているといえるはずです。
では、今回の資金循環統計の内訳を詳しく見ていくことにしましょう。
株安の影響により投資信託、株式の残高は減少
相変わらず家計の金融資産額の5割以上を占めている現金・預金ですが、保有額は961兆円で、その残高は前年同期比45四半期連続して増加していますが、2017年12月末の保有額と変わっていません。増加速度が鈍化している兆しと捉えることができますが、今回だけで判断するのは禁物です。ただ、過去の資金循環統計を改めて見直してみると、45四半期連続して増加しているとはいいつつも、金額に直せば兆円台の前半の数値なので驚くほど増えているわけではないことがわかります。一方、増減が著しいのは「株式等」と「投資信託」です。株式等は4四半期連続して2桁の増加率となり、その残高は199兆円になりました。しかし、2017年12月末の211兆円と比較すると12兆円も減少しています。また、投資信託の増加率は1.4%まで鈍化して、残高は73兆円でした。株式等と同じく2017年12月末の109兆円と比較すると36兆円もの減少となっています。投資信託残高が大幅に減少しているのは、海外株式、海外債券なども軟調に推移したことがその要因と考えられます。
2017年12月末にやっと減少が止まった債務証券、いわゆる債券は再び大幅な減少となりました。前年同期比5.5%の減少、残高は23兆円です。減少率は2017年9月末のマイナス5.7%以来の大きさです。ただ、2018年6月にソフトバンクグループが発行額4100億円の個人向け社債を発行したことから、2018年6月末の資金循環統計では再び増加率はプラスに転じているかもしれません。
保険の増加率にも鈍化が見られます。前年同月比の増加率は0.8%と近年にない低いものでした。予定利率の引き下げなどにより、貯蓄型保険に魅力がなくなったことがその要因でしょう。保険好きといわれる日本人ですが、このまま予定利率が低いままだと、資金循環統計における保険の増加率がマイナスになる日は遠くないのかもしれません。
年度末ベースでは過去最高を更新した家計の金融資産額ですが、その内情は世界的な株式の調整を大きく受けたようです。ただ、短期的には株式などの価格変動により金融資産額は増減しますが、時間軸を長めに取る(長期)と、投資を行っている人と、行っていない人の増加率に大きな違いが出始めていることは確かなようです。長期で資産形成を行うならば、投資は必須となり始めているようです。
なお、2018年3月末の家計の金融資産額1829兆円はグロスの数字で、家計の負債総額は約300兆円。ネット(純資産額)の金融資産総額は1529兆円となり、大まかにいえばわが国のGDPの3倍の金融資産を保有することになります。