業績変化率の高い5銘柄をピックアップ!
決算発表が一巡しました。今回は、業績変化率の大きい5銘柄を取り上げます。FA関連や半導体、インバウンドなどの主力株が目立った感じがします。PER面でやや割高であっても、今期以降の業績変化率が高ければ、成長株としての妙味があり、あまり気になりません。日本トムソン <6480>
同社は半導体製造装置やFA(工場自動化)関連機械などに使われる直動案内機器が主力です。ロボットの関節部分に使われるベアリング(軸受け)などにも強みがあります。機械を円滑かつ精密に動かす「運動部」は、回転と直線、その組み合わせに大別されます。一般的には、ベアリングによる回転運動が知られていますが、直線運動は機械の位置決めや電子部品組み立ての搬送部分、検査工程などに用いられ、回転運動以上に精密さが求められます。同社の直動案内機器を使うと、工作機械や産業用ロボットは超精密な作業が可能になり、半導体製造装置はサブミクロン(1万分の1ミリ)単位の精度が実現できるといいます。
こうした精密な直動案内機器を作ることができるのは、会社側によると、世界を見渡しても同社とTHK、日本精工の3社くらいしかないそうです。同社では、さらに工場の自動化生産設備に用いられる多関節ロボット用のベアリングも手がけており、高度なモノ作りの要諦を担う体制になっています。
同社が先に発表した2018年3月期決算は、売上高552億2800万円(前年比25.1%増)、営業利益26億4900万円(同131.2%)となりました。営業利益は会社計画を3億円強上回りました。IoTや自動運転、5Gの進展などで高性能半導体の需要が増える中で製造装置の引き合いが強く、直動案内機器が拡大。省力化投資や自動化の流れもあり、自動組み立てロボットに使われる「クロスローラーベアリング」という、強い荷重を受け止めるベアリングなどの売上も増加しています。
絶好調に見えますが、同社が事務の効率化のために昨年5月に導入した新基幹業務システムへの対応に手間取り、第3四半期までは生産効率が悪化していました。顧客のニーズにきめ細かく対応するための多品種少量生産が完全には機能しなかったことが要因です。「受注がさばき切れない状況だったが、後半は生産体制が整ってきた」(会社側)。
2019年3月期は売上高610億円(前期比10.5%増)、営業利益55億円(同107.6%)、1株利益53.11円を計画しています。工場稼働率の改善などで増産します。中期的には2016年に買収した中国・上海の優必勝社が有する3万8000平方メートルの土地に工場を建設し、本格的な生産能力増強に踏み出す公算が大きい。同社の前期売上高は過去最高ですが、営業利益の最高は2007年3月期の99億円。当時の営業利益率は20%に達していました。業務システムの正常化やひっ迫した需給を背景に価格の適正化などで利益率を上げていく方針です。高収益で知られるTHKを追随することが期待されます。
アドバンテスト <6857>
半導体検査装置(テスター)の世界大手で、DRAM用では首位と見られます。これまで半導体市況の波に翻弄されたテスターですが、中期的にも伸びが続く可能性が出てきています。クラウドコンピュータ、AI(人工知能)、自動運転、深層学習(ディープラーニング)、IoTといった第4次産業革命に通信量の増大で、半導体業界は従来のシリコンサイクルを超える動きを見せているためです。従来、テスター市場はメーンフレームコンピュータからパソコン、携帯電話という小型化・低価格化の進展、高性能化の際にビジネスチャンスでしたが、それ以外では利益が出にくい体質でもありました。それが、データが主役になると、半導体の高機能化、複雑化、大容量化が進み、機器の信頼性がより求められるようになってきました。半導体のテストも項目や時間の増加に加えて、難易度も上昇しています。これを受けてテスターの台数需要も増しているのです。
同社が先ごろ発表した2018年3月期決算は、売上高2072億円(前年比33%増)、営業利益245億円(同76%増)となりました。スマホ向けが盛り上がりに欠ける一方で、データセンター関連の半導体に対する旺盛な需要や、自動車電装化の進展を背景に、車載半導体やセンサー向けが拡大したといいます。今期についても売上高2300億円(前期比11%増)、営業利益345億円(同41%増)を計画しています。高性能テスターの需要はこれからが本格的に伸びる可能性があります。
アンリツ <6754>
通信系測定器の有力企業。モバイル(携帯電話)系に強みがありますが、ネットワークやテスター用などにも展開しています。また、食品などの品質検査機器が安定収益源。次世代の高速通信規格である「5G」が、本格的に動き出しつつあり、同社はその恩恵を享受する可能性が大きい。長期間の業績低迷から本格的な拡大期に転じる姿勢が鮮明になりつつあります。同社の直近の営業利益のピークは2013年3月期の158億円でしたが、2017年3月期には42億円にまで落ち込みました。これは3G規格やそれを高速化させるLTEなどの需要がピークアウトしたことが要因となっています。
2018年3月期は売上高860億円(前年比2%減)、営業利益49億円(同16%増)となりました。通信計測器は海外の低迷で減収ながら、国内で採算性が高い食品品質検査機器が順調に推移しました。2019年3月期は売上高920億円(前期比7%増)、営業利益66億円(同34%増)、1株利益36.4円を計画しています。ここにきていよいよ5G関連の需要が出始め、計測器事業が拡大の兆しを見せています。同社では2018年3月期の第4四半期から5Gの新製品の受注が増加。今期は計測器部門の売上高は600億円(前期比10%増)、営業利益35億円(同92%増)を見込んでいます。中期計画では2020年3月期には部門売上高700億円、営業利益98億円を目指します。
5Gは現行の4Gに比べて通信速度が最大100倍になるとされ、スマホ向け高速通信のほか、IoTの実用化、自動運転では常時高速通信などにも活用が見込まれています。通信の遅れがほとんどなく、遠隔地でも瞬時に通信できるので、工場内の機器のIoTでの無人検査、自動運転、遠隔地医療、農機運転の自動化などへの活用が期待されます。これまでの2G→3G→4Gというステージアップは携帯やスマホの通信速度が速くなるというのが主でしたが、5Gへの移行はあらゆる通信分野を改革するインパクトがあるといえそうです。
5Gは米中が先行し、韓国が2019年の実用化を目指しています。日本では2020年の東京オリンピックでの普及が目標です。総務省では2018年度末までに電波の割り当てを決める計画で、2019年からは基地局などの整備が進むことになりそう。国内で2020年までに総投資額が10兆円に達するとの見方もあります。
アンリツでは5Gが自動車や家電にも広がるとし、5G関連のピークは2023年程度と予想。2020年半ば程度には部門売上高1000億円、営業利益200億円の達成を標ぼうしています。変化率は今後も高くなりそうです。
資生堂 <4911>
化粧品の大手。2014年に外部人材を社長に迎え、ブランドの位置づけを再構築し、企業風土の改革に取り組んできています。その成果が現れ始めています。先に発表した2018年12月期の第1四半期(1~3月)期決算は、売上高2637億円(前年同期比13.5%増)、営業利益471億円(同95.3%増)となりました。会見では「ひとつひとつのブランドが各エリアで想定以上に伸びている」としていました。社内で8%成長を前提としているそうで、想定を上回る売上高の伸びとなっています。国内で前年同期比実質18%増となったほか、中国が同27%増、アジアパシフィックも2ケタ伸びとなっています。高級品の「クレ・ド・ポー ボーテ」や「SHISEIDO」の販売が好調だったほか、スキンケアの「エリクシール」、日焼け止めの「アネッサ」なども快走。アジアでは韓国やタイなどで高い評価を受けているといいます。
免税店部門(トラベルリテール)も拡大しました。インバウンドについては市場の伸びが2~3%に対して、同社では20%増ペースといい、ここでもブランド力の強さを示した格好になっています。中国だけでなく、欧米観光客からの引き合いも強いとのことでした。
通期では売上高1兆330億円(前期比3%増)、営業利益900億円(同12%増)、1株利益135.1円を計画しています。通期の営業利益は2008年3月期以来、約10年ぶりの最高益更新となります。さらに、営業利益は第1四半期時点で進ちょく率が52%に達しており、上方修正が期待できそうです。欧米の損益が一段と改善することが想定される2019年12月期も増収増益基調が続く可能性が高いですね。
黒田精工 <7726>
精密加工技術を活かした直動関連機器や金型に強みがあります。2018年3月期の売上高161億1700万円(前年比21.5%増)、営業利益5億2200万円(同359.8%倍)になったのに続き、2019年3月期は売上高176億円(前期比9.2%増)、営業利益8億4000万円(同60.9%増)、1株利益85.41円になる見通し。ボールネジが主力の駆動システムでは、半導体やFA(工場自動化)向けに直動案内機器が増加。前期末時点での受注は前年比70%増となっています。金型システムでは産業用モーター向けが伸び、車載モーター向けも今期に拡大する見通しです。
金型技術を応用したモーターコア事業が拡大しています。モーターコアとはEVなどの駆動用モーターを、円滑に回すための金型です。精密冶具などの研磨技術を原点とし、1976年にこの分野に参入しました。同社のシステムは打ち抜き、積層、計測、組み立てという作業工程を、プレス工程内で全て処理することができ、品質の高さと生産性の向上を可能にしています。顧客ニーズに合わせた最適なモーターコアを高精度、高能率で製造することができるのです。
モーターはEVのみならず、燃料電池車でもハイブリッドでも必要不可欠なのです。精密なモーターコアは国内で同社が三井ハイテックに次ぐ位置にあると思われます。会社側では「受注の伸びが生産を上回っている」としていました。需要の増加でマレーシアにモーターコアの新ラインを建設中で、今期中の量産化が見込まれます。会社側では開示していませんが、業界ではホンダ向けが軸と推察しています。