ふるさと納税の寄附金を集めるのに多くの支出を伴っている
自治体がふるさと納税で寄附金を多く集めるには、返礼品調達費や広告費等の支出は避けられません。これらの費用が多いと寄附金を有効に活用できなくなることから、費用はできる限り少ない方が良いですが、現実はどこもかなり多くの費用がかかっています。そこで、総務省ふるさと納税ポータルサイトから、まずはふるさと納税の募集等に伴う費用(平成28年度決算見込額)が多かった自治体を集めて表にしてみました。「寄附金額に対する費用割合」は費用合計を寄附金額で割ったもの(筆者計算)で、受け入れた寄附金のうちどのくらいの割合が費用で使われてしまっているかを確認できます。
ふるさと納税の募集等に伴う費用が多い自治体は、集めた寄附金も当然多いです。費用が57億円で最も多かった都城市は寄附金も73億円で全国1位です。費用の内訳は返礼品関連費用が43億円、返礼品送付費用が12億円等で、寄附金額に対する費用割合は78%になります。費用割合が78%はかなり高いと感じますが、費用が22億円で7番目に多い平戸市は133%にもなります。費用が集めた寄附金を上回っているということです。費用内訳を見ると返礼品関連の費用は比較的少なく、多くはその他に計上した積立金及び利子(16億円)となっています。実は表にある費用の多い10市町のうち、平戸市以外は寄附金額でも上位10位までに入っています。平戸市は過去に多くの寄附金を受け入れており、それを活用したことで費用が増したのではないでしょうか。
寄附金額に対する費用の割合は、平戸市を除けば都城市の78%が高く、泉佐野市の51%が10市町の中では最も低くなっています。ふるさと納税は使途を指定できますが、多くの自治体では寄附した額の半分以上は費用として使われてしまっています。
寄附金の受入額が多い平戸市の美しいビーチ
寄附金額の実質的なトップは熊本市
次に、寄附金額から募集等に伴う費用(平成28年度決算見込額)を引いた額を計算し、寄附金の実質的な額としてランキング表を作成してみました。寄附金の実質額で最も多かったのは熊本市の37億円です。募集等に伴う費用は僅か3571万円しかかかっていません。熊本市の場合は熊本地震で被災したことにより、復興支援を目的とした寄附金が多く集まったからだと考えられます。2番目に多かったのは伊那市の33億円です。伊那市は全国2位の72億の寄附金を受け入れています。多くの寄附金を集め、費用を比較的抑えられたことで、実質額でも上位となりました。
実質額が多い上位10市町村のうち7市町が寄附金額の上位にも入っています。長野県小谷村は寄附金額が28億円、費用を引いた実質額でも14億円あります。規模の小さい村の財政に相当な影響を与えているはずです。
大多喜町は受け入れた寄附金の2.5倍近い費用がかかっている
最後に、寄付金額に対して募集等に伴う費用の割合が高い自治体を調べて表にしてみました。寄附金額が1億円未満の自治体は除いています。全国の6市町(寄附金額1億円未満は除く)で、ふるさと納税の募集等に伴う費用が受け入れた寄附金以上になってしまっています。大多喜町は費用が受け入れた寄附金の2.5倍近くにもなり、大山町も1.5倍になっています。過去の方が受け入れた寄附金が多いと割合は高くなりやすく、大多喜町は過去に「大多喜町ふるさと感謝券」の返礼品が人気で多くの寄附金を集めていました。
大多喜町ふるさと感謝券が人気で寄附を多く集めた大多喜町
【関連サイト】
総務省ふるさと納税ポータルサイト