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「自分の名前」で働ける?20代に贈るキャリアプラン(3ページ目)

臨床医から医療系ベンチャーの経営者に転身した豊田剛一郎氏、コンサルタントからNPO代表となった小暮真久氏。2人には戦略コンサルタントとして働いた経験を活かし、社会問題に対してビジネスの視点から向かいあっているという共通点がある。2人に「自分の名前で食える人になるための方法」と若手社会人が短期間で成長するためのメッセージを聞いた。

執筆者:All About 編集部


「自分の名前で勝負する」とは?


豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「メドレーに誘われた時、瀧口からは『豊田には自分の名前で勝負してほしい』と言われました。マッキンゼーを離れることに迷っていたタイミングだったので、その言葉は大きな後押しになりました。

新卒であっても自分の名前で勝負したいと考える人も多いでしょうが、まずは『自分のテーマ』を探すことが重要でしょう。私の場合は『日本の医療を変える』というテーマにどう近づけるのかを考え、それに自分の名前が役立つようになればいいと思っています」

小暮真久氏

小暮真久氏

小暮「ひとつの組織で仕事人生をずっと過ごす、という常識がなくなってしまった今、多くの人が多かれ少なかれ、既に『自分の名前で仕事をしている』時代だと思います。あとはそれをどういかすか。
『突出したスキルがない』と感じているなら、まずは『ホスピタリティスキル』を磨くといい。この人は何をしたら喜ぶのか、何をしてあげたら良いのかそれを考え尽くすのです。
ロジカルで素晴らしいプレゼンをしても、相手が感情的に『ノー』となったら物事は動かない。本にも書いたこうした『五感に訴えるスキル』は、女性のほうが長けている人が多いかもしれません」

リーダーとして大事な「聞く」と「伝える」


豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「本にも書きましたが、組織を率いるようになって、大切にしているのは『聞く』ことと『伝える』ことです。社内外に関わらず、多くの人の話をきちんと聞くことを大事にしています。そして、しっかりすべてを聞いた上で自分の意見を『伝える』ようにしています」

小暮「そこには、きっと豊田さんの医師時代の体験が活きているのでしょうね」

豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「確かに、さまざまな状況にある患者さんやご家族に『伝える』ことをしてきました。ビジネス以上に多種多様な方がいて、通り一遍の説明では到底足りず、相手の思いを聞きながら、繰り返しその方に合わせた説明をしなくてはならない。『伝える』とは『伝わる』まで『伝え続ける』こと。この意識は確かに医師の経験から来ているのだと思います

小暮真久氏

小暮真久氏

小暮「その基本は本当に大事ですね。イタリアに行ったときに知ったのですが、イタリア人には『聞き切る』という文化があるんです。相手の言い分に全く賛同していなくても、まずは相手に言い分を全て話させる。そうすると、相手もすっきりして、その後の話し合いがスムーズにいくのです。『話し倒す』というイメージの強いイタリア人に、こうした『聞く文化』があることは興味深かったです」

豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「じっくり相手の話を聞いていると『あれ、なんで?』ということが出てきます。小暮さんも本で触れられていた『違和感』ですね。それが新しい発見やトラブル防止につながるのです」


 

「10の仕事を15で返す」とその先に見えるものがある

――新入社員に、最初の数年の過ごし方をどうアドバイスしますか?

豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「僕は若手には、『死ぬほど働け』と言っています。ブラック企業のように非効率にただ長時間働くのは論外ですが、若いうちから『10の仕事を6の労力でやる』という効率性を追いすぎるのも違うと思う。

10の仕事を同じ時間で15やった時に何が起こるのか』を追求する。それはやってみないとわからないし、そのくらいしないと自分は何がやりたいのか、何ができるのかがわからないはず」

小暮真久氏

小暮真久氏

小暮「自分のやりたいことがわかる人はごく一部に限られます。若いうちは特に自分の仕事や業務を選ばず何でもやったほうがいい、という点は同感です」

豊田剛一郎氏

豊田剛一郎氏

豊田「若いからこそ本当に自分のやりたいことは何なのか、自分の人生を捧げられるものを必死で見つけて欲しいし、それはそれ相応の努力や環境がないと見つからない。それが見つかってはじめて、『自分の名前で仕事をする』ことに意味が出てくるのだと思います」

小暮「仕事を選ばないほうがいい理由は、『自分の得手不得手がわかる』というのはもちろんですが、その『何でもやった』経験が、チームを率いる時に必ず役立つから。
組織には『つまらないけれど、誰かがやらないといけない仕事』が必ずあります。それを部下に振るとき、リーダーがその仕事の中身が分かっているかどうかで、部下への伝わり方がまったく違ってくる。その仕事のつらさ、意味や経験が活きる場所を一緒に説明すれば、部下は納得して動いてくれる。長い目で自分のキャリアを考えるとムダにはらないんです」

プロフィール

自分の名前で働く

「自分の名前で働く」とは?


豊田剛一郎(とよだ・ごういちろう)
株式会社メドレー代表取締役・医師
豊田剛一郎氏

豊田氏



1984年生まれ。
東京大学医学部卒業後、聖隷浜松病院で初期臨床研修を終え、NTT東日本関東病院脳神経外科に勤務。2012年に渡米しChildren’s Hospital of Michiganに留学。米国での脳研究成果は国際的学術雑誌の表紙を飾る。

脳神経外科医として充実した日々を送る一方、日米での医師経験を通じて、日本の医療の将来に対する危機感を強く抱き、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。
2013年に世界的な戦略系コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーへ。マッキンゼーでは主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングに従事。

同時期に、Facebook上で小学校時代の同級生で株式会社メドレーの代表瀧口浩平氏と再会し、“未来ある日本の医療をつくる" ことで意気投合。

2015年より株式会社メドレーに共同代表として参画し、代表取締役医師に就任。「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」をミッションに掲げるメドレーにて、遠隔診療を可能にするオンライン診療アプリ「CLINICS」、医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY」など、納得できる医療の実現に向けたサービスを立ち上げる。

メドレー http://www.medley.jp/

小暮真久氏

小暮氏

小暮真久(こぐれ・まさひさ)
TABLE FOR TWO(TFT)代表理事
1972年生まれ。
早稲田大学理工学部卒業後、オーストラリアのスインバン工科大学大学院で人工心臓の研究を行う。1999年、修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社入社(ヘルスケア、メディア、小売流通、製造業など幅広い業界の組織改革・オペレーション改善・営業戦略などのプロジェクトに従事)。同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年、松竹株式会社入社(事業開発を担当)。

経済学者ジェフリー・サックスとの出会いに強い感銘を受け、その後、先進国の肥満と開発途上国の飢餓という2つの問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO(TFT)」プロジェクトに参画。2007年NPO法人「TABLE FOR TWO International」を創設し、代表理事に就任。

社会起業家として日本、アフリカ、米国、ヨーロッパを拠点に活動中。2014年から3年間、TFTの活動をよりグローバルに広げるためにイタリアに移住するなど、仕事や人生の局面に沿った柔軟な働き方を実現している。

TABLE FOR TWO http://jp.tablefor2.org

(文中敬称略)
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