ソーシャル・ベンチャーに集う人は?
お二人の新著
豊田剛一郎氏
面白いのは、一番年齢層が高いのがエンジニアというところ。30歳を過ぎると子供が生まれたり、親が病気になったりと医療に関する個人的な体験をすることが増える。それまでゲーム開発などのスピード感に醍醐味を感じていたけれど、子供や孫の代まで使うサービスをつくりたい、社会に何らかのものを返したいという気持ちが生まれた、と言うベテランエンジニアが多いですね」
小暮真久氏
アメリカであれば、ティーチ・フォー・アメリカ(大学卒業生を教育困難校に派遣する事業を行う教育NPO)のように財団や企業から莫大な寄付を得て、一気に人を採用して成長する道があるのですが……。TFTで働きたい、社会を良くする仕事をしたいという希望者は若い世代を中心に多いので、歯がゆいところではあります」
豊田剛一郎氏
そうした気持ちで好奇心をもって仕事をしていると、結果的に自分も成長できる。そうした大きな共通点があるので、組織が急拡大しても、あまりひずみを感じずにこれていると思います」
「ベンチャーなら成長できる」は誤解
小暮「メドレーは中途採用の方が中心ですか?」豊田剛一郎氏
正直言って、ベンチャーにとって新卒採用は両刃の剣です。新卒らしい元気は組織を活性化し、やがては大きな戦力になってくれるのは事実ですが、その一方で人を育てるのはものすごく負荷がかかりますから」
小暮真久氏
厳しい言い方ですが『自分で這い上がれる』人でないと続かない」
豊田剛一郎氏
ベンチャーでは雑務まで全て自分でやることも多く、一般企業のような分業はほとんどない。大企業なら10人で8の仕事をやる仕組みが出来上がっていますが、こちらは10人で15をやらなければならない。それで伸びる人もいるでしょうが、誰にでもあてはまるものではない点は注意すべきだと思います」
「マッキンゼーで迷子」のケースも
――学生の就職先として、お二人も経験された戦略コンサルティング会社は相変わらず人気です。豊田剛一郎氏
小暮真久氏
小暮「その基本が崩れてしまう人が結構いるんですよね。そして『解けない問題はない』という意識が徹底され、解くためのツールを授けてもらえる。TFTを立ち上げた時には前例のない難題がたくさんありましたが、この考えを叩き込まれていたおかげで、心折れることなく対処できました。
そして、本当に優秀な人が多いので、『自分は全然ダメだな』という挫折の経験をしたのもよかったですね。早いうちに『苦手なことをやっても結果が出ない。好きなことで勝負しよう』と切り替えられました」
豊田剛一郎氏
私は医師の経験と自分のテーマをもって入社しましたが、学生から入ったら日々の仕事に忙殺されてしまうはず。スキルと給与は上がる一方で、『一生かけてこれをやっていく』というエモーショナルな原動力を伴った『自分のテーマ』を見つけにくい面はあると思います」
小暮真久氏
一緒に働いたオイシックス(現・オイシックスドット大地)を創業した高島宏平さんは『1年半で辞める』と公言していましたし、ユニークな著作の多い瀧本哲史さん(現・京都大学客員准教授)もこのパターンでしょう」