犬と赤ちゃんが一緒に暮らすときに考えたいこと

これから出産を控えている、またはその予定があるという方の中には、すでに犬と暮らしている方もいることでしょう。赤ちゃんと犬とが仲良くしている様子を思い描くだけでも笑みがこぼれるものですよね。しかし、犬と赤ちゃんとの同居には気をつけたいこともあります。それを赤ちゃんが産まれる前から、順を追って考えてみましょう。

その1:赤ちゃんが産まれる前に準備できること

赤ちゃんと犬との同居を考える時、いつから準備を始めたらいいのでしょうか? それは、赤ちゃんがまだ産まれないうちから可能です。赤ちゃんという新しい家族が加わることをきっかけに、これからの生活の新しいルーティンや環境づくりが必要になる一方で、愛犬との関係やしつけ度合いなどを見直す機会にもなることでしょう。
赤ちゃんとパピヨン

赤ちゃんと犬との同居を望むのであれば、数ヶ月前から準備を始めておくとベスト:(c)ichi ichi zero ichi/a.collectionRF/amanaimages


1:愛犬の健康管理は大丈夫?
病気の中には人間と動物とが共通して感染するものもあります。特に産まれて間もない赤ちゃんは抵抗力も弱く、病気感染のリスクが高くなります。可能な限り、予防できる病気は予防し、たとえば真菌のように人間にも感染する病気を愛犬がもっているなら、早めに治しておきたいものです。

また、寄生虫の中には人間にも感染し、特に幼児が感染した場合は重症化することがあると言われるものもあるので(回虫症)、愛犬のうんちのチェックを欠かさないのはもちろん、必要であれば定期的に検便をするといいでしょう。

参考までに、犬にも関連する動物由来感染症には、以下のようなものがあります。

  • 狂犬病
  • パスツレラ症
  • エキノコックス症
  • ブルセラ症
  • カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
  • コリネバクテリウム・ウルセランス感染症
  • 皮膚糸状菌症
  • 回虫症     など

その他、犬と言えばノミやダニ予防は欠かせません。人間にうつる感染症もありますので、愛犬のノミ・ダニ予防はしっかりとしておきましょう。以下は、ダニからうつる病気の例です。

  • 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
  • ダニ媒介脳炎
  • ツツガムシ病
  • 日本紅斑熱        など

*動物由来感染症について、詳しくは以下の厚生労働省のホームページをご覧ください。
動物由来感染症ハンドブック2018
動物由来感染症 

2:愛犬のしつけ度は十分?
前出のパスツレラ症の原因となるパスツレラという細菌は、犬や猫の口の中に普通に見られ、咬まれる、ひっかかれるなどして人間に感染することがあるといいます。このような病気感染予防の他、ケガや事故予防のためにも、人をなめる、ひっかく、飛びつくというような行為はさせないように前もって教えておくことがベストでしょう。

また、愛犬がスワレ・マテなどの基本的なコマンドに反応するか、改めて見直しておく必要もあります。反応が鈍いようなら、再トレーニングを。将来的に赤ちゃんと一緒に散歩をすることを考えており、愛犬にリードを引っ張る癖があるのであれば、直しておくほうが無難です。

さらには、赤ちゃんと犬とを離したほうがいいシチュエーションもありますので、別の部屋、またはゲートの外で大人しく過ごせるかどうかも大事なポイントになります。それに慣れていない場合には、特定の部屋や場所で家族の姿が見えなくても安心して過ごせるようトレーニングをしておくといいでしょう。

3:愛犬と赤ちゃんとの生活場所を考える
赤ちゃんがいる部屋には愛犬を入れたくないというケースもあるかと思いますが、それまでどの部屋も愛犬の出入りが自由になっていたのであれば、「ここには入ってはいけない」ことを前もって教えておくと後々楽になるのではないでしょうか。

赤ちゃんの部屋への出入りを許可したとしても、前出のように、犬が興奮し過ぎる、犬が赤ちゃんに疲れている、赤ちゃんにミルクや食事を与える時など、互いを離しておきたいという時もあることでしょう。そのような時のために、赤ちゃんと愛犬とが接触せずに済むよう、愛犬専用のスペースを用意する、ゲートで仕切るなどの対策も必要になると思います。

4:赤ちゃんのものに慣らしておく
ベビーベッドやゆりかご、おもちゃ、スリング、ベビーローションなど前もって用意できるのであれば、そのもの自体や匂いに慣らしておくことも可能です。録音された赤ちゃんの鳴き声や笑い声を聞かせてみるというのもいいかもしれませんね。その際、生活の中でBGMのように流しておくというのはいかがでしょう。

中には、赤ちゃんに見立てた人形を使い、抱っこや授乳の様子を愛犬に見せて仮想体験させるという人もいます。

また、友人や親類に赤ちゃんがいて、会う機会があるなら、愛犬が赤ちゃんに対してどんな反応を見せるかチェックしてみることも可能です。


その2:赤ちゃんを自宅に連れてくるまでの間にできること

さて、赤ちゃんが無事誕生し、自宅に戻る日はもうすぐ。この間にもできることはあります。
赤ちゃんとシニア犬

子どもが苦手な犬でもだんだんと互いに慣れ、仲良しになれるケースももちろんあるが、仲良くなれるかは犬の個性によるところもあるので、愛犬の性格や行動を再度確認してみる必要もあるかも:(c)KOICHI SAITO/a.collectionRF/amanaimages


1:赤ちゃんの存在に気づかせる
産まれた赤ちゃんの匂いがついたものを自宅に持ち帰り、愛犬に嗅がせて慣らします。知っている匂いであるなら、愛犬も少しは赤ちゃんを受け入れやすくなることでしょう。

その他、赤ちゃんの鳴き声を録音できるのであれば、それを聞かせるのもいいでしょう。

2:愛犬の散歩や運動は十分に
つい赤ちゃんのことばかりに気をとられて、愛犬の散歩を忘れるということがありませんように。運動不足やコミュニケーション不足はストレスになることがあり、それが度を過ぎると、突然登場した赤ちゃんに思わぬ反応をしてしまうかもしれません。愛犬のケアは極力これまでと変わらぬようにしてあげたいものです。


その3:赤ちゃんと愛犬とが対面する時に気をつけたいこと

さぁ、待ちに待った赤ちゃんと愛犬との対面の日がやってきました。
赤ちゃんのフレンチブルドッグ

初めて赤ちゃんと愛犬とを会わせる時には短い時間で:(c)RYO/a.collectionRF/amanaimages


1:まずは愛犬を落ち着かせる
赤ちゃんを連れて自宅の玄関を入る時、少なくとももうひとり大人がいると理想的です。たとえば、奥さんのほうが愛犬とより強いつながりをもっているのであれば、赤ちゃんはご主人が抱き、まずは奥さんが愛犬に「ただいま」の挨拶をした後、ご主人は少し遅れて家に入る、というようにするといいかもしれません。もちろん、逆の場合もあります。

特に、赤ちゃんや幼児と接した経験のない犬の場合、赤ちゃんに対して不安を抱く、必要以上に興奮するなど、反応は予測できません。少しでも愛犬を落ち着かせるという意味でも、赤ちゃんの登場シーンでは多少気配りしたほうがいいでしょう。

2:大人ふたり以上で、愛犬をコントロールできるように
赤ちゃんと愛犬を合わせる時には、ひとりが赤ちゃんに注意を払い、もうひとりは愛犬に注意を払えるようにするのがベストです。

はじめは、愛犬をゲートの外にいさせ、少し離れたところから赤ちゃんの様子を見せるというのもいいでしょうし、もう少し近くで対面させる場合は、近づかせ過ぎないよう、かつ愛犬の体を抱きかかえる、首輪をもつなどして、いつでもコントロールできるようにしておいてください。

この際、穏やかな雰囲気づくりを心がけ、愛犬に声をかけたり、撫でたりして極力落ち着かせるようにし、赤ちゃんに対して好ましい態度がとれているようなら十分に褒めてあげます。間違っても愛犬を無視する、邪見に扱う、赤ちゃんに近づくなと言わんばかりに怒鳴り散らすなどしませんように。それでは赤ちゃんに対して負のイメージがつき、嫉妬心や敵対心を植えつけてしまうかもしれませんので。


その4:赤ちゃんと愛犬との同居生活が始まってから気をつけたいこと

赤ちゃんと愛犬とは、仲良しのいい友だちになれるでしょうか。そうなれるように配慮したいこともあります。
赤ちゃんとコーギー

互いの健康にも関わること、毎日のお掃除やお手入れもお忘れなく:(c)Doable/a.collectionRF/amanaimages


1:必ず大人が付き添うようにし、赤ちゃんと愛犬だけにしないこと
あって欲しくはありませんが、悲しいかな事故は起こります。この記事を書いている一ヶ月前にも、ドイツにおいて赤ちゃんが同居している犬に大ケガを負わされるというニュースがありました。飼い主さんは、「きっとオモチャと勘違いしたのだと思う」というようなことを言っていましたが、犬に攻撃する気がなかったとしても、赤ちゃんの周りで走り回って遊んでいるうちに、つい勢いあまって突き飛ばし、大ケガをさせてしまう場合もあります。

また、赤ちゃんがハイハイや伝い歩きができるようになると、犬にとってはそれがまた不安要素になることも。加減を知らず、危険も察知できない赤ちゃんは、犬を引っ張ったり、はたいたり、上に乗ったりしがちです。その痛みやしつこさから、普段は穏やかな犬であっても、反射的にカプッと口で対抗することもあり得ます。

以前、アメリカである病院の小児救急に搬送された症例を調査した結果では、子どもを咬んだ犬の多くは同居している犬か、近所で飼われている犬であったといいます(*1)。過信は禁物。

たとえ台所へ行く、洗濯物をとりこむ、玄関の呼び鈴に応答するというようなわずかな時間であっても、赤ちゃん、または愛犬のどちらかを一緒に連れて行くか、もしくは愛犬をゲートの外に出す、別の部屋に入れるなどして、互いに接触できないようにすることで、事故リスクを軽減させることができるでしょう。複数の大人がいる場合は、ひとりは赤ちゃんに、もうひとりは犬を観察することで、負担とリスクを軽減することができます。

2:赤ちゃんの授乳中や食事中は愛犬を他の場所に
食べ物があるとついそれにつられて赤ちゃんの顔をなめようとしたり、食べ物を取り上げようとしたりする犬もいますので、赤ちゃんの食事中は愛犬を別のスペースに移すか、赤ちゃんを高さのあるベビーチェアに座らせるなどしたほうが無難かもしれません。

3:赤ちゃんのオモチャをイタズラさせない
赤ちゃんのオモチャは犬にとっても興味の対象となります。赤ちゃんは何でも口の中に入れてしまいますので、衛生面の問題からも、赤ちゃんのものは勝手に取ってはいけないということを愛犬に教えましょう。

4:赤ちゃんの周りに愛犬がいる時には、その動きに注意を
大きな犬であると、犬にその気はなくとも、寝ている赤ちゃんの上に横たわったり、座ったりして圧し潰してしまうということも考えられます。赤ちゃんの周りに愛犬がいる時、赤ちゃんを床に寝かせることは極力避けたほうがいいとは思いますが、思わぬことが起きないよう、愛犬の動きには注意を。小型犬であってもベビーベッドに勝手に入り込むようなことはさせないほうがいいでしょう。

5:愛犬との時間をつくる
赤ちゃんが家族の仲間入りをすると、それまでの愛犬との生活パターンにも大きな変化が出てきます。愛犬に孤独を感じさせないよう、これまでどおりとはいかないまでも、赤ちゃんを他の家族に預けている間、赤ちゃんが眠っている間など、無理のない範囲で愛犬との時間をつくってあげることをおすすめします。愛犬は最初から家族だったのですから、「君のことは大事で、大好きだよ」ということを示してあげたいものです。

愛犬が赤ちゃんの存在にストレスを感じている場合には、どことなく元気がない、表情に覇気がない、とぼとぼ歩く、遊ぼうとしない、場合によっては人間のようにため息をつくなどの様子が見られたり、やたらと体を掻く、粗相をするようになった、あくびばかりしているなどのストレスサインを見せたりすることもあります(これらは必ずしもストレスが原因とは限りませんが)。そのような様子が見られ、気になる時には、愛犬との関係を今一度見直す必要があるかもしれませんね。

6:赤ちゃんが成長するにしたがい、愛犬に優しく接することを教える
やがて赤ちゃんもだんだんと成長していきますが、愛犬には優しく接することを少しずつ教えていきます。子どもは親の真似をするもの。親が優しく撫でてみせれば、きっと赤ちゃんも愛犬を優しく撫でようとしてくれることでしょう。

そして、時期を見ながら、犬がされると嫌なことも教えるようにします。実は、これこそが大事なのではないでしょうか。


幼い頃に犬と暮らすことのメリット

以上、赤ちゃんと犬との同居にはいろいろ気配りしなければならないこともあるわけですが、それ以上に子どもの精神面での発達やフォロー、学習能力への影響、健康面での効果なども期待できます。
孫・愛犬と過ごす祖父母

子どもの頃に一緒に暮らした犬とのいい記憶が残るような、そんな生活をさせてあげたいもの:(c)daj/amanaimages


犬と暮らすことによって、相手を思いやる気持ちを育むこともできるでしょう、子どもが少し成長すれば愛犬の世話を通じて責任感を養うこともできるかもしれません。親に叱られ、寂しい時には、愛犬がそばにいて、そっと気持ちをフォローしてくることでしょう。

ニューヨーク州立大学が行ったやや発達が遅れた就学前の子どもに対する研究では、「犬と一緒」「ぬいぐるみの犬と一緒」「人と一緒」の3グループに子どもたちを分け、あるタスクをさせてみたところ、犬と一緒の子どもでは誤りが少なかったそうです。また、他の就学前の子どもに関する研究でも、犬の存在はタスクを行う運動機能スピードや指示に従う能力などにプラスの影響を与えることが示されているとか(*2)。

また、幼少期に犬と暮らしている子どもは、アレルギーや呼吸器疾患のリスクが減少するという他、農場で育った子どもはアレルギーになるリスクが低いという研究報告もありましたが(*3)、昨年、また新しい研究報告もありました。それは、妊娠中に犬と暮らしていた母親から産まれた子は、そうでない子と比べて、湿疹やアトピー性皮膚炎になるリスクが低いというもの(ただし、これは幼少の頃であって、大きくなるまで持続するかどうかは不明/*4)。

こうしたメリットのみに期待して犬と暮らすわけでは決してありませんが、何より楽しく過ごせるであろうということが一番なのではないでしょうか。少なくとも、犬と暮らしたことが、その子やご家族にとって、大きな宝となることを願ってやみません。


参考資料:
(*1)Dog Bites in Children Treated in a Pediatric Emergency Department / Lisa Marie Bernardo, Mary Jane Gardner, et al. / JOURNAL FOR SPECIALISTS IN PEDIATRIC NURSING, https://doi.org/10.1111/j.1744-6155.2000.tb00090.x
(*2)Preschoo;ers Make Fewer Wrrors on an Object Categorization Task in the Presence of a Dog / Nancy R. Gee, et al. / A multidisciplinary journal of the interactions and animals, Volume 23, 2010, Issue 3, https://doi.org/10.2752/175303710X12750451258896
(*3)The effects of growing up on a farm on adult lung function and allergic phenotypes: an international population-based study / B. Campbell et al. / BMJ Journals, Volume 72, Issue 3, ttp://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2015-208154
(*4)Effect of Prenatal Dog Exposure on Eczema Development in Early and Late Childhood (2017) / Gagandeep Cheema, Allergy & Immunology Fellow / American College of Allergy, Asthma & Immunology

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