塩野義製薬に続け!画期的新薬関連の5銘柄に注目!
インフルエンザの画期的な治療薬など、日本で画期的な新薬が登場し始めました。厚生労働省が2015年に「先駆け審査指定制度」を導入して3年、この成果が出つつあるのです。この制度は日本の患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬候補について、開発の早期段階から対象品目に指定するものです。具体的には「治療薬の画期性」、「対象疾患の重篤性」、「対象疾患にかかる極めて高い有効性」、「世界に先駆けて日本で最も早期開発・申請する意思」という4つを全て満たす必要があります。指定されると薬事承認のための相談・審査が優先され、承認審査のスケジュールに沿って、製造体制の整備、承認後は円滑に医療現場に提供するための対応も十分になされ、迅速な実用化が可能になります。米国でも同様の「ブレークスルーセラピー」指定制度があります。
塩野義製薬 <4507> が開発したインフルエンザ薬「ゾフルーザ」が2018年2月に厚生労働省から製造販売承認を受け、今年4月から販売を開始しました。厚労省が2015年に導入した「先駆け審査指定制度」で指定された医薬品としては第1号となります。経口のインフルエンザ薬として著名なタミフル(販売は中外製薬)は、1日2回、計5日間の服用が必要でしたが、ゾフルーザは1回の服用で治療ができるいわば「特効薬」です。2015年10月に「先駆け審査指定制度」の第1回目の対象品目となっていました。2017年10月25日に承認を申請しており、わずか4ヶ月での早期承認となりました。
そこで今回は、「先駆け審査指定制度」の指定を受けた新薬候補を有している銘柄を5つピックアップしてみました。JCRファーマ <4552>
血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo(ジェイ・ブレイン・カーゴ)」を適用した血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤(開発コードJR-141)が今年3月に指定を受けました。「J-Brain Cargo」は脳組織に効率的に薬剤を届ける技術。難病に指定されているライソゾーム病の多くで見られる発達障害や言語障害を起こす脳の中枢神経症状の改善には、医薬品の有効成分を中枢神経に届ける高度な技術開発が求められています。血液脳関門を通過するだけではなく、これまで薬を届けることが難しいとされていた骨格筋にも効率的に薬を届けられる特徴を持っているそうです。
ハンター症候群は遺伝病で、乳児期から関節の固まり、骨格変形、低身長などの症状が出るライソゾーム病の一種。会社側によるとJR-141は昨年実施した第1相・第2相臨床試験の結果、安全性に問題はなく、さらに薬剤が血液脳関門を通過して中枢神経に作用したと推定される良好な結果を得られたとしています。今後、今年中に第2・3相試験を実施し、19年には世界に先駆けて日本で製造販売承認申請を実施する予定といいます。
今回の指定とは別に、「J-Brain Cargo」は、長期的にはアルツハイマー型認知症などの中枢神経疾患の治療薬としての開発も期待されています。大日本製薬とは、今年2月に特定の中枢神経疾患領域を治療薬向けに「J-Brain Cargo」の技術ライセンス契約を締結。エーザイやペプチドリーム、新日本科学などともそれぞれ連携し、開発を目指しています。
協和発酵キリン <4151>
2018年に糖尿病性腎臓病を対象に「開発コードRTA402」が指定を受けています。有効性・安全性を検証するための第3相臨床試験(臨床最終試験)の開始に向けて準備を進める方針。糖尿病性腎臓病は糖尿病に起因し、新規に血液透析を導入する患者に多く見られる慢性腎臓病です。放置すると腎機能の低下とともに末期腎不全となり、最終的に慢性透析療法や腎移植が必要になるとのことです。第一三共 <4568>
2018年に「開発コードDS-8201」指定を受けます。これは、がん化学療法後に憎悪したHER2(がん細胞の成長を促進するたんぱく質)の過剰発現が確認された治癒切除ができない進行・再発がん患者に対する治療薬候補。FDA(米食品医薬品局)からもブレークスルーセラピー指定を受けています。このほか、アステラス製薬 <4503> は2015年に遺伝子変異陽性骨髄性白血病、第一三共 <4568>は 2016年にデュシェンヌ型筋ジストロフィー、日本新薬 <4516> は2015年にデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象に指定を受けています。
下記の2銘柄は再生医療等製品分野です。
タカラバイオ <4974>
2018年3月に指定。がん患者の細胞を取り出して、遺伝子操作を行ってがんを攻撃する物質を組成し、患者の体内に再投与することによってがん細胞を攻撃し、滑膜肉腫(太ももやひざの周囲に起こる悪性腫瘍)の治療を行ないます。CAR-T療法と呼ばれます。副作用が少なく、効き目の高い抗がん剤になることが期待されています。通常の抗がん剤はがん細胞を攻撃する際に、周辺の正常細胞まで攻撃してしまうケースが多いのです。最近、話題の小野薬品工業の「オプジーボ」、メルクの「キイトルーダ」は、がん免疫薬といって、がん細胞の攻撃を受けて弱った周辺の正常細胞を活性化し、がんに立ち向かう薬です。効果が高いですが、値段も高い傾向があります。CAR-Tはこのがん免疫薬を超える、次世代の抗がん療法として注目されています。