株主優待/戸松信博オススメの株主優待レポート

いきなりステーキの株主優待はお得?6000円分の食事券

ペッパーフードサービス・東証1部<3053>は「いきなり!ステーキ」などのチェーンを運営する企業です。同社の成長性や財務内容を分析し、株主優待がお得かどうかを考えてみましょう。株主優待としてはお食事券1年分では6000円、または自社販売商品がもらえます。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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いきなり!ステーキで第二の成長ステージを走る外食チェーン

いきなり!ステーキを運営する外食チェーン。一時は債務超過に陥る寸前にまで経営難となっていた外食ですが、今や一年で東証二部上場と一部指定替えを実現し、さらにナスダック上場を目指すほど成長への階段を上っている企業です

いきなり!ステーキを運営する外食チェーン。一時は債務超過に陥る寸前にまで経営難となっていた外食ですが、今や一年で東証二部上場と一部指定替えを実現し、さらにナスダック上場を目指すほど成長への階段を上っている企業です


ペッパーフードサービス<3053>は2013年12月にスタートした立ち食いステーキ「いきなり!ステーキ」が飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びている外食チェーンです。いきなりステーキのほか事業柱となってきた「ペッパーランチ」や「炭焼きステーキくに」、とんかつ「かつき亭」など肉をコンセプトにしたレストランを展開しています。17/12期の売上構成比は、ペッパーランチ19.5%、レストラン5.7%、いきなり!ステーキ74.5%となっています。

成長ドライバーの「いきなり!ステーキ」は多彩な販促やマイレージカードの活用で想定を超える伸びとなっており、既存店売上も23%の増加となるなど好調。既存のペッパーランチも26カ月連続で前年を上回るなど好調です。出店も加速しておりいきなり!ステーキ業態については現在店舗数(188)を上回る今期200店舗出店を計画しています。今後はショッピングセンターや郊外ロードサイド、書店服店などの撤退物件への出店を強化するとしています。

原価率高くとも、効率の良い店舗オペレーションで利益確保

2013年12月に1号店を出した「いきなり!ステーキ」。当時は、立ち食いレストラン「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」が世間を席巻していたころです。「俺の」シリーズは、一瀬社長がいきなり!ステーキを始めるヒントとなったといいます。俺のシリーズをヒントに「20坪で2000万円以上売上を上げる」ビジネスモデルを構想。立ち食いにすることで、普通4000円や5000円する厚切りステーキを2000円程度で食べられるようになったわけです。

値段設定は看板メニューで約1400円。原価率は6割を占めます。ところが食べ物のメニューは「肉」が9割を占め、付け合わせも仕込みを必要としないものだから店舗オペレーションが効率よく回る模様。店舗の人件費比率は平均13%~15%程度であるといいます。これが成長の原理となっています。

立ち食いステーキという前代未聞のスタイルで、高回転率を実現し、高い原価率でもしっかり利益をとれるビジネスモデルを構築した同社ですが、2016年から座って食べられる席を増やしてきました。

出店数が多くなったことで、多少回転率を下げても十分な利益が出るようになったことで、テーブル席を作ることができた、と見られます。テーブル席の設置で滞在時間は10分程度伸びたといいますがそれでも40分に収まります。店は食べ終わったらすぐに帰る、という雰囲気です。客の目的はズバリ「肉を食べる」こと。客が自ら長居しないのはそんなブランド構築に成功しているからだと思います。新しい市場を創出したと言えると思います。

そしてテーブル席の設置は、女性客や高齢者、子供連れにとって嬉しい変化となり、新たな客層を呼び込むことになりました。特に、高齢者に対しては手厚い内容となっています。70歳以上が進呈される「シニアカード」というのがあって1ドリンク無料、誕生月1000クーポンなどといったサービスが受けられるようになっています。さらに、行列ができていても優先的に案内してもらえるやさしさも評価を得ています。

「高齢者=魚が好き、肉は重い」というイメージは過去のもので、最近では「健康長寿となるには良質なたんぱく質と適度な運動が必要、つまりお年寄りほど肉を食べたほうが良い」という流れになってきています。こうした認知の高まりと高齢化を追い風とした客層拡大が期待できそうです。

糖質制限ダイエットブームも追い風に:肉食正当化で人々の欲求が爆発!?

というより、元々、「肉が食べたいけど、“カロリーが高いから”我慢」していた人が多かったということもあるでしょう。「糖質オフすれば、肉は食べても太らない、肉でたんぱく質を摂ることで、健康的なダイエットができる、」とか「年寄こそたんぱく源、肉をとって血管をピチピチに!」などといった医学的な裏付けなど、肉を食べることで太らない体に、健康な体になれることが認知されてきたことが追い風になっていると思います。

「罪悪感なしに」肉を思う存分食べられるようになり、押さえつけられていた欲望が爆発したのかもしれません。ブームというより、欲求が正常に経済行動に表れたと見て間違いないと思います。もっと言うと、新たな市場が創出したと言っても過言ではないと思います。

この糖質オフの流れはいきなりステーキの「チェンジブロッコリー」に表れていて、付け合わせのコーンをブロッコリーやインゲンにチェンジすることができるのですが、チェンジする客は2016年から2017年で2倍になったといいます。

肉マイレージの魅力~客の心をくすぐる施策~

いきなり!ステーキには「肉マイレージ」というメンバーカードとプリペイドカード両方の機能を持つポイントカードがあります。これには食べた累計グラム数に応じたポイントが貯まり、ポイントに応じたサービスが受けられるようになっています。

例えば、会員になるだけでも誕生月は500円オフクーポンがもらえますが、累計3000グラムと以上のゴールド会員となればランクアップ特典として1000円クーポン、誕生月にはUSリブロース300グラムのプレゼント、そして300円のソフトドリンクが行く度に無料になる、といった内容のサービスが受けられます。さらにプラチナカード、ダイヤモンドカードとランクアップを重ねる毎にサービス内容が厚くなっていく仕組みです。

2018/1月末時点の累計発行枚数は420万枚を超え、さらに、カード利用率は54%に上るといいます。つまり、マイレージカードを作った(会計時に簡単に発行)客の2人に1人がリピートしていることになります。

こうした施策のほか、肉の日(29日)には現金チャージのインセンティブ(通常は3000円のチャージで1%)が倍になる「肉チャージボーナス」や、アプリを活用した景品が当たるキャンペーンなど、客を引き付ける施策を惜しみなく講じています。マイレージのランキングを見て、客同士が競えることも、競争心をくすぐります。ユーザー参加型というのは、客を飽きさせない、という面から見て実に有効であることがここ1-2年のマクドナルドの復活によって証明されていると思います。

もの消費からコト消費が重視されるようになった昨今、企業同士のコラボによるキャンペーンが盛り上がっています。同社はそうしたマーケティングを得意としており、消費者を巻き込んだ事業成長が期待できると思います。

17年12月期の業績は既存店売上、新規出店好調で営業益1.4倍に!

17/12期の業績ですが、売上は62.2%増の362億2900万円、純利益が132.6%増の13億3200万円と大幅増収増益。既存店売上の伸びに、新規出店による増収効果が加わりました。ペッパーランチの7割がショッピングセンターに入っており、いきなり!ステーキも2.5割から3割に拡大しました。ペッパーランチ業態は2012年11月から2017年12月末まで62カ月連続で既存店売上が100%超えとなりました。楽天ポイントカードとペッパーランチ新アプリの導入、宇宙戦艦ヤマトとのコラボなどの効果があったようです。

そしていきなり!ステーキは通期で既存店売上が前年比23.1%を達成しました。いきなり!ステーキ業態は、事業成長まっしぐらといったところです。また12月には2店舗目となる米国店を出店しています。肉マイレージカードの発行枚数が300万枚を突破(17/12月末で383万枚)するなど、ファン層が拡大しています。

ブランディング施策効果や海外展開への成長期待で長期で株価は上昇する可能性。株主優待は利回りは低いものの、同社株には魅力あり

業績は絶好調で、「いきなり!ステーキ」の出店の加速、海外展開の加速と成長余地が大きく、さらなる事業拡大が期待できると思います。新規出店効果だけではなく、既存店売上が前年を大きく上回っていることがポイントです。客を巻き込んだ店舗運営によって熱いファン層を作ることができており、客を楽しませるための販促やキャンペーンを惜しみなくしています。

すでに業績面の評価は株価に織り込まれてきましたが、モノ消費(ただの食事)にコト消費(ランキング参加やキャンペーンによるお得感、企業とのコラボ)をうまく活用したマーケティングが評価されたいところや、人口の多さに加え肉消費量の巨大な北米での展開や、ペッパーランチの肉食化が著しい新興国での出店加速にも成長性が見込まれる点を考えると長期で株価が上昇できる余地は大きいと思います。

17年12月末時点の財務内容は、自己資本比率が56.5%、有利子負債は25億2900万円ですが、43億9500万円のキャッシュを考慮すると実質無借金経営です。流動比率は0.9倍となりますがこれは仕入れによる買掛金の増加が大きくなるためです。また、固定比率が1.86倍となりますが、店舗の取得など固定資産が大きくなるためであり、加えて同社は順調なキャッシュフローがありますので特に懸念することもないでしょう。

ちなみに、同社は2010年に決算書に事業の継続性に強い疑いがあることを示す「継続企業の疑義注記」がつけられました。債務超過寸前という経営難に陥った経緯がありますが、フジパンの出資や、SFoodsによる取引継続によって苦境を乗り切りました。

そして、2010年に肉の塊を店内でカットする「ワイルドステーキ」を開発。300グラムとライスで1000円という破格の値段設定で勝負しました。これが当たったのが、現在同社が息を吹き返し、事業基盤を拡大させ続けているキッカケです。「ワイルドステーキ」はいきなり!ステーキの看板メニューですので、株主優待券を使って食べに行くのもいいと思います。

なお、株主優待は300株からであり、2018年3月19日の終値は5160円となっていますので、株主優待を得るための最低投資金額は154万8000円。300株の場合の株主優待と現金配当を合わせた利回りは(今期予想を10円として計算)0.6%ではありますが、成長性の点を加味すれば、同社株は魅力的だと思います。

【株主優待】
・内容
(1)お食事券(500円×6枚/1セット)または(2)自社販売商品
・権利確定月
12月末日・6月末日

・300株以上の場合
(1)3,000円分 (2)1セット
・1500株以上の場合
(1)6,000円分 (2)2セット
・3000株以上の場合
(1)9,000円分 (2)3セット

参考:日本株通信

※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。
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