遺言書が無効になってしまう書き方とは?
将来の相続のときに相続人がもめないように、様々な手続きがスムーズに行えるようにと遺言書を作成してくれていたのに、いざその遺言書を開けてみたら「無効」ということも少なくありません。 せっかくの遺言書が無効にならないように、遺言書の書き方を確認しておきましょう。遺言の種類
通常の遺言書といえば、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」がありますが、「自筆証書遺言」は最も手軽に作成できる遺言書です。「公正証書遺言」は公証役場で作成するのでミスも無く安心ですが、打合せの時間や費用がかかります。「秘密証書遺言」は遺言書自体は自分で作れますが、それを公証役場に持って行くためやはり時間や費用はかかります。自筆証書遺言の基本的な書き方
手軽に作成できる「自筆証書遺言」ですが、それを有効にするにはいくつかの要件があります。基本的な要件は次の通りです。- 全文を自分で手書きすること。ワープロやスタンプなどは無効です。
- 年月日を書くこと。○○月○○日、○○年○○月吉日、などは無効です。
- 署名と押印があること。認印でも無効にはなりませんが実印が望ましいです。
- 封筒に入れて封をすると良い。封筒に入っていなくても無効にはなりませんが、改ざん防止のため封をして遺言書と同じ封印を押すと良いです。
自筆証書遺言で注意する点は?
要件を満たしても表現があいまいだと無意味です。誰が見ても分かるようにしっかりと表現しましょう。- 財産をもらう人が特定できるようにする。単に「○○花子に」でなく「妻○○花子に」「長男○○二郎の長男○○三郎に」など人を特定できるようにする。
- 不動産は住所でなく「所在・地番・家屋番号」を書く。隣のお宅と同じ住所ということも多いので、住所では特定できないことも。「所在・地番・家屋番号」は不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)などで確認できます。
- 「相続させる」「遺贈する」以外は使わない方が良い。譲り渡すという気持ちからの「譲渡する」とか、「渡す」「与える」などでは解釈が問題になることもあります。なお相続人以外に財産を渡したい場合は「遺贈する」という表現のみ使用しましょう。
遺言書の内容で注意する点は?
要件も表現も満たしても、それでも失敗ということもあります。遺言書の内容で注意する点は次の通りです。- 遺留分を侵害しないようにする。一定の相続人は一定の割合を必ずもらえる権利があるため、これを侵害しているともめる原因になってしまいます。
- 遺言執行者を指定する。遺言書の通りに名義変更等を進める際に相続人全員の署名や実印が必要になることも少なくない。もめている相手方、認知症の配偶者、障害者、行方不明の相続人など、実印をもらうことが困難な場合は手続きが滞ってしまうことも。遺言執行者が指定してあればその遺言執行者のみで手続きができます。
- 一番世話になった長男の嫁に遺贈する心遣いも。長男の嫁は相続人ではないため何も相続できません。感謝を込めて財産を渡せるのは「遺贈」だけです。
- 付言事項を書くと良い。相続させる割合の差や相続人でない人への遺贈によって不利になる相続人は不満になることが多い。なぜそうしたのかを書けるのが付言事項です。この付言事項でしっかりと気持ちを伝えることで円満になることも多いです。
ここまで書き方の注意点を説明しましたが、実は自筆証書遺言で一番の注意したいのは「遺言が見つからない」です。確か父は遺言を書いていたはずだったが、となっても見つからなければ意味が無くなってしまいます。金庫に保管しておく、信頼できる人には場所を伝えておくなども大切です。最後に一般的な自筆証書遺言の例を記載します。
失敗しない自筆証書遺言の例
遺言書
私○○一郎は、次の通り遺言する。
1 私の遺産のうち、次の不動産を妻○○花子に相続させる。
土地
所在:○○市○○一丁目
地番:2番3
地目:宅地
地積:123.45平米
持分:2分の1
建物
所在:○○市○○一丁目2番地3
家屋番号:2番地3
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階98.76平米 2階54.32平米
2 その他の財産については長男○○二郎および長女○○咲子に2分の1ずつ相続させる。
3 本遺言の遺言執行者として、長男○○二郎を指定する。
平成○○年○○月○○日
東京都○○市○○一丁目2番3号
遺言者 ○○一郎 (印)