在宅介護に備えた介護申請のタイミングはいつ?

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介護はいきなり必要に。制度を活用しながら慌てず対処することが大切です(画像:photoAC)

少し生活に不安や支障を感じる方から、寝たきりの方まで、幅広く利用することができる介護保険。「まだ本格的な介護がいるほどではないから」「入院中なので退院後に考えよう」と考えて、介護保険を利用されない方も多くいます。

私は介護が必要になるご家族に対し、「介護はちょっと物足りないと思うくらいがちょうどいい」とよくお話します。介護は長期戦です。介護される側はもちろん、介護する側の心身の健康も保つためにも、介護保険の申請・利用は欠かせません。

なぜ介護保険の申請・利用が重要だと考えるのか、今回は、介護が必要になる原因と介護離職の多さの実態について解説した上で、具体的な介護申請の流れの基本をご紹介したいと思います。

家族の負担が高い在宅介護・7割以上が老々介護という実態

そもそも介護とは、身体や心が健康でない方に対し手助けをすることを言います。食事や排泄介助に始まり、買い物や掃除など、内容は多岐に渡ります。

「在宅介護」は病院や施設ではなく、住み慣れた自宅で介護を受けられるのが特徴です。一方で、介護をする方(以下、介護者)は、6割以上が同居のご家族となっており、さらにそのうち約7割の方が60歳以上と言われています。いわゆる「老老介護」のケースで、高齢の夫婦が介護をし合っているのが現状です。

近年は核家族化が進み、他のご家族がサポートに来る場合でも、片道2時間かかっているというケースも珍しくありません。家族で助け合う気持ちさえあればなんとかなる、と楽観できるものではないのです。

65歳以上の17%に介護が必要・原因の約2割は脳血管疾患

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認知症よりも脳梗塞などの脳血管疾患の割合が多い 出典:平成25年国民生活基礎調査

介護保険は、介護が必要になった方の要介護者等を7つに分類しています。厚生労働省による平成25年国民生活基礎調査では370万人であった65歳以上の要介護者等は、10年間で198万人増え569万人に増加しています。この人数は、65歳以上の方の17%にあたります。

介護が必要になったきっかけは、脳血管疾患が17%ともっとも多く、認知症、加齢、関節疾患の順になっています。脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患は、死亡原因の第4位でもあります。

脳は体の機能をコントロールしているため、脳梗塞や脳出血の後は、身体や心の制御がしづらくなる事があります。リハビリをして機能が回復しても、介護を要することが多くなってしまうのです。また、これらの疾患はいつ起こるか分かりません。

誰でも介護が必要になる可能性はあり、それは決して珍しいことではないことだということが分かると思います。

介護離職・転職者は年間10万人……仕事と介護の両立の難しさ

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介護をするにあたって離職、転職をする人が多い 出典:平成25年国民生活基礎調査

また、最近は定年退職後も仕事をしている方が多く、仕事と介護の両立に向け企業も動き始めています。しかし現実には、年間10万人もの方が介護を行うために離職や転職をされています。女性の場合は、約8万人が離職や転職をしており、介護離職・転職の8割を占めます。

離職や転職の理由は、「仕事と介護の両立が難しい」というものが6割で、次いで「自身の健康悪化」「介護に専念したかった」という結果となっています。また可能ならば仕事を続けたかったかという質問には、5割以上の方が続けたかったと答えました。

このように仕事と介護の両立は簡単ではなく、続けたかった仕事でも、辞めたり変えたりしなくてはならないケースは珍しくないのです。事前にできる限りの備えをしておくべきと考えるのは、このような背景があるからです。

介護の長期化に備え、早めの介護保険申請が重要

在宅介護をする上では、介護の長期化にも備え、早めに介護保険申請をしていくことは、介護者の健康や生活維持のためにも必要不可欠です。介護には、いつからいつまでという明確な期間はありません。負担を少しでも減らし、余裕を持って介護を行うために、介護保険を利用した介護サービスが必要となります。

そこで、介護の長期戦を攻略するためのポイントを3つご紹介します。

1. 介護保険申請は入院中に行う……家族や地域包括支援センターによる代理申請も可

介護保険申請をすると、どの程度のサポートが必要なのかの規準となる「要介護度」を決めるための、介護認定調査が行われます。介護度は実際に利用される方の状態や生活状況を把握し、コンピューター判定と有識者の会議で決定されます。

だいたい申請してから1ヶ月程度かかるため、仮に入院中の場合、退院してからすぐに介護申請をしても遅すぎます。介護を受ける本人の入院中にご家族が代わりに申請することも可能ですし、遠方等の理由で家族による申請が難しい場合は、地域包括支援センターなどに申請を代行をしてもらうこともできます。

また、介護認定調査はテストではありませんので、介護を受ける方が必要以上に頑張ってしまい、日常的にはできないような無理な歩行などをしたり、通常できないことをできると伝えてしまったりしてはいけません。実際の状態よりも低い介護度であると認定され、本来必要とする十分なサービスが受けられなくなることがあります。体調がよい時・悪い時はあるので、いつもできることを自然に行い、正しく申請するようにしましょう。

2. 動けなくなる前に介護サービスを利用……身体機能の悪化防止にも有効
高齢になるにつれ、腰や関節の痛みから外出する機会は減少しがち。介護は必要ないけれど、一人で買い物や運動に行くのは怖いから、なるべく家にいるという状態が増えます。動く頻度が減ることで足腰の筋力が下がり、転ぶリスクや、骨密度の低下による骨折リスクが高まります。介護サービスでは、買い物への付き添いや通院のサポート、施設での運動や入浴ができるものがあります。少し心配な段階から上手に活用することで、本格的な介護が必要になることを予防できます。

3. 介護はちょっと物足りないくらいがちょうどいい
在宅介護を始めたご家族に、介護について困っていることがないか伺うと、常にそばについて手を貸さなければいけないことに負担や長期化した場合の不安を感じられていることが多いと感じます。そんな時は、全力投球で投げられる球数は知れているので、上手に力を抜くことも大切ですよ、とお伝えしています。長期化する介護において、常に気を張り続け、介護に専念しすぎてしまうと、体も心も疲れてしまいます。訪問や通所などの介護サービスを上手に使い、外出されたり趣味の時間に当てたりしているご家族も多くいらっしゃいます。介護者の生活時間を確保することも、とても大切なことで、介護者の心身の負担が無理のないレベルで保たれてこそ、長期化した場合の介護にも長く対応できるようになるのです。

認知症のように徐々に進行するものから、急に起きる病気・ケガまで、介護の原因は様々です。焦っている時ほど、周りが見えなくなり、一人で抱え込みすぎてしまうこともあるでしょう。社会資源をうまく活用し、介護をされる方も介護を受けられる方も、安心して生活ができるようにしていきましょう。

■参考・引用

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