欧州でメジャーなキャンピングトレーラー
欧米では、実はトレーラータイプがメジャーである。ヨーロッパの販売台数では、ここ数年こそ自走タイプとトレーラーがほぼ半々だが、以前は8割がトレーラーだった。アメリカでもトレーラー人気は根強く、やはり昨年の販売台数は8割がトレーラーが占めている。欧米にはそもそも、トレーラーをけん引する文化がある。仕事に行くときや荷物を運ぶにはカーゴトレーラー。ボートやバイクを運ぶ専用トレーラーもある。日本では輸送用の大型トレーラーはよく見かけるが、個人が趣味で何かをけん引する文化は、それほど成熟していない。そこへ、ここ数年のキャンピングカー人気だ。キャンピングトレーラーをひく人も増え始めている。自動車メーカーもそのあたりを意識しはじめていることは、マツダが発売した話題の新車、CX-8のオプション設定の中にヒッチメンバー(けん引用パーツ)が加わったことをみても明らかだ。
事実、日本のキャンピングトレーラーの販売台数は2016年には国産、輸入を合わせて年間377台。割合としては全販売台数に対してわずか7%だが、伸び率は対前年比約2.6倍。各カテゴリ中でもトップの成長率だ。
ジャパンキャンピングカーショーでも、人気にこたえるように様々なトレーラーが登場した。特に注目の5台をピックアップしてみよう。
人気車種がさらに進化! トリガノ・エメロード406
車両総重量750kg未満のトレーラーは「けん引免許不要」で人気が高い。そのため各社がさまざまな商品をそろえているが、特に人気なのがフランス・トリガノ社のエメロード376。今回のショーでは、フルモデルチェンジして「エメロード406」となってお目見えした。今回のモデルチェンジで一番の変更点はエントランスが車両の右側から左側になったことだろう。道交法上、走行中トレーラーには乗車できないので、ドアがどちらについていようとさほど影響はない。しかし路上で荷物の積み下ろしをする場合など、左側通行のわが国ではやはり左エントランスの方が便利だし安全だろう。
室内レイアウトも大きく変わった。まず、サイズが前後方向に10cm伸びた(幅と室内高は変わらず)。フロントダイネットはU字形のラウンジソファを採用、よりゆったりとくつろげるように。後部に設けられたサブダイネットは、従来の横向きから縦向きに変更。そのおかげでキッチン前のスペースも広くなり、車内の動線もスムーズになった。サブダイネットが2段ベッドになることとメインダイネットがダブルベッドになることで、合計就寝定員=4人、は従来どおり。トイレやキッチン、収納などの構成要素は変わらずだが、配置が変わったことですっきりと見通せるようになり、より広く感じられるようになった。
目に見えないところでは、断熱材の材質が変更に。これにより断熱性能が20%も向上したという。日本の燃料事情に合わせた灯油式FFヒーターなど、以前から定評のある装備類はもちろん406にも引き継がれている。価格260万0000円~
インディアナ・RV
http://www.indiana-rv.net/
国産車に“変化球”が登場、カトーモーター・BIC BALL
オレンジ×アイボリーのややレトロな配色がおしゃれ。横から見るとカマボコのような半円形の特徴的なシルエット。会場で一際目を引いていたのが、今回デビューしたカトーモーターの「ビックボール」だ。このように、前後方向に丸みをおびたトレーラーは、いままでもヨーロッパ製にみられた。個性的でかわいらしいが、半月形のフォルムでは前部と後部の天井が低くなってしまって、居住性の面ではマイナスでは?とも思える。しかしこのBIC BALLには驚くべき仕様があった。なんとキッチン部分がスライドアウトして、中からも外からも使えるアウトドアキッチンになるという仕掛けなのだ。
ただしこのスライドアウト機構、一般的なものとはちょっと異なっている。トレーラーの右側面が跳ね上げ式に大きく開き、キッチンが外にせり出すというもの。つまり部屋が拡張するというよりは、キッチン装備が外に出ると考えたほうがよさそうだ。跳ねあげた部分が屋根になるとは言え、耐候性はあまり期待できない。就寝時はキッチンを車内に収めることになるので広さが少々犠牲になり、就寝定員は1名だけ。そのため展示車にはルーフテントが装着されていた。スタイルも使い勝手も個性的な一台。シンプルな造りなので、もちろんけん引免許不要サイズだ。価格386万6400円~
カトーモーター
http://www.katomotor.co.jp/
ヨーロッパで人気のレイアウトが登場、Hobby 515UHK Deluxe
キャンピングカーもキャンピングトレーラーも、ベッドは常設ベッドか、ダイネットをベッドに展開するのが一般的だ。ダイネットのベッド展開はスペース効率は良いものの、ベッドメイクが面倒だし、テーブルの上を片付けないと展開できない。常設ベッドは手間はないが、スペース効率が悪い。そこで今回登場したのが、プルダウンベッドだ。これはベッドが天井に張り付くように格納されているもので、使うときはロックを外して引き下げるだけ、という仕組みだ。このプルダウンベッド式のレイアウトが、今ヨーロッパで流行っている。Hobby 515UHKはフロントのラウンジソファ上部にプルダウンベッドを装備。ゆったりしたラウンジで食事したりくつろいだりしたあと、テーブル上はそのままでも、プルダウンを引き下げるだけでベッドメイク完了、という訳だ。さらに、リアにはサブダイネットと常設の2段ベッドもあり、全体で大人4人+子供3人の就寝定員を誇る。大家族にお勧めのモデル。要けん引免許。価格366万0000円~
トーザイアテオ
https://www.tozaiateo.co.jp/
アメリカンらしいフル装備の一台、ジェイコ・Jay Flight SLX 154BH
多くのモデルを展開するアメリカ・ジェイコ社のトレーラーの中で、最もコンパクトな一台が、Jay Flight SLX 154BH。小型モデルとはいえ、そこはアメリカ製。エアコン、電子レンジ、LED付電動オーニング、温水ボイラーと、生活設備はフル装備。むしろ自宅より贅沢かも?と思えるクオリティだ。清水タンクは60L、排水タンク75L、ブラックタンク(トイレ排水)75Lと、水回りもたっぷり。一度旅に出たら一週間はザラというアメリカのスタイルに対応した結果だろう。内装デザインもまさにアメリカンテイスト。フロントダイネット+リア常設2段ベッドで就寝定員は4名。日本のファミリーにうってつけといえそうだ。サイズは全長5440mm、全幅2160mmでヨーロッパ製なら750kg以下になりそうな大きさだが、そんなところもおおらかなアメリカンらしく車両重量は1173kg。けん引免許が必要だ。免許を取得する負担をかけてでも、充実した装備とゆったりした広さは大きな魅力。豪華なアメリカ製キャンピングカーに憧れるけど予算が…という人は、この価格にも注目してほしい。価格298万0000円~
ボナンザ
https://www.bonanza.co.jp/
遊びの幅を広げるベースキャンプ、エアストリーム・Base Camp
エアストリームといえば1930年代から続く伝統のブランド。キャンピングトレーラーをよく知らない人でも「銀色の飛行機のような形」と言えば、すぐに思い浮かべることができるだろう。レトロでモダン、スタイリッシュ。デザインにこだわる人に大人気なアメリカ製キャンピングカーの代表格だ。そんなエアストリームも他のメーカー同様、2000年以降、ラグジュアリー化、大型化が進んだ。そんな中「世界中を旅する冒険者のために」というコンセプトで企画されたのが、このBase Campだ。小型・軽量(エアストリームとしてはだが…)、そしてデザインは伝統のフォルムと決別。思い切った新しいスタイルの提案だ。右側面のエントランスドアの他にリアに大きなラゲッジドアを持ち、自転車やサーフボードなどの遊びのギアも楽々飲み込む。いわば21世紀の「幌馬車」だ。
会場では、これまたアメリカ伝統の雄、ジープとペアで展示されていた。タフなアメリカンスピリッツを継承する新モデルとして人気を集めそうだ。要けん引免許。価格798万0000円~
エアストリームジャパン
http://airstreamjapan.co.jp/
「車が売れない時代」「若者の車離れ」。近頃よく聞く言葉だ。しかし私は、日本人が遊びを「あきらめた」り「やめた」わけではないと思っている。好きな道具を愛車で引っ張ってどこへでも出かけてゆく。不要なときには切り離す。合理的だし、ある程度パワーのある愛車なら買い替える必要もない。何より、日本人の遊びのカルチャーに「けん引」が市民権を得つつあるのがうれしい限り。キャンピングトレーラーがどう発展してゆくか、わくわくして見守りたい。
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