歯科インプラント

歯根端切除後の抜歯からインプラント埋入まで

できれば自分の歯を残したい……。自分の天然歯は出来るだけ抜歯せずに保存したいと、誰もが考えることでしょう。しかし長期的に保存できる可能性が低い場合、どの段階で抜歯をすべきでしょうか? その後のトラブルやリスクの可能性も含めて解説します。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

歯根端切除とは

歯根端切除の後、再発してしまったら・・・

歯根端切除の後、再発してしまったら・・・

例えば、根幹治療を行ったが歯の根っこの先まで殺菌が届かずに感染部分が残ってしまい再発、再神経治療が困難な場合。そんなときに歯牙保存の為の最終手段として行われるのが歯根端切除術です。歯肉を剥離し嚢胞と根尖一部を外科的に除去します。つまり、歯の感染部分を上からではなく、下から3mmほど切除して取り除く方法です。最近はマイクロスコープを使用して行いますので、成功率も長期予後もかなり良くなったとおもいますが、やはり歯根が短くなり支えが弱くなりますし、再発することもあります。

再発後の抜歯診断からインプラント治療の一例

他院で歯根端切除した歯が再発してしまった例です。歯肉が腫れを繰り返すようになり日に日に大きくなってしまい来院。歯科用CTで3次元的に確認し残念ながら抜歯することになりました。
  • 抜歯
  • 嚢胞摘出
  • インプラント埋入
  • 骨造成
これらを同時に行う治療計画を立てました。最近は固定式の仮歯まで入れてしまうこともあるのですが、ダメージが大きかったので一旦閉鎖創にすることに。

長いインプラントで固定。骨吸収部分に骨造成を行う。

長いインプラントで固定。骨吸収部分に骨造成を行う。

抜歯し歯肉を剥離するとCTでイメージしていた以上の骨吸収がみられました。感染物をマイクロスコープ下でしっかり除去し、鼻腔底の皮質骨に強固に固定させるために長いインプラントを選択します。

中間の骨吸収部分の穴からインプラントボディが見える状態です(写真右)。その後不足した部分に骨造成を行うのですが、これがとても重要なのです。

歯根端切除を行った後の骨のへこみ部分は、骨造成がうまくいかないことが多いです。歯根端切除+嚢胞摘出をした後の骨は変性し硬くなります。そのままのカチカチの表面だと移植材料と生着しにくいのです。ですので硬化してしまった表面を改善して移植材料を充填し、生着が確実になるよう膜もピンでしっかり固定します。もちろん患部は移植材料の分剥離前よりもボリュームアップしていますし、抜歯同時なので何もしなければ縫合する歯肉が足りなくなります。そのため減張切開し重要な位置は崩さず被覆範囲を広げなくてはなりません。そして緊張なく縫合する必要があります。

歯根端切除したときの骨吸収はどうだったのでしょうか? すでにある程度の空間ができていたことが予想されます。

どの段階で抜歯するべきか……抜歯の判断をする目安

誰もが出来るだけ天然歯を抜かずに保存しようと考えていると思いますし、私自身もインプラント治療を突き詰めるほど天然歯を保存したいと強く思います。

しかし長期的に見て保存の可能性が低い場合、無理に保存しようとしても予後が悪くなることもあります。そうなると抜歯後の治療がよりシビアになり患者様の負担は大きくなるでしょう。

では、どの段階で抜歯しましょうと患者さんに伝えるのか? それは担当する歯科医の考え方などによってかなり違ってきます。どうしようもなくなるまでとにかく残しましょうと提案するか、今はストレスがなくても次の事を考えて諦めるように促すか……。

どちらも1つの選択肢ではあると思います。ですので、トラブルを防ぐためにも患者さんは担当の歯科医と、歯の状態、抜かなかったらどんなトラブルが起こる可能性があるのか、次にインプラントにするときにかかるであろう費用などを相談した上で判断されることをおすすめします。
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