アクセルを一踏みした瞬間からわかる「e-POWER」の実力
「ノート」に続き設定される「セレナ e-POWER」は、「ノート e-POWER」と同様に、発電用エンジンを搭載しながらも駆動は100%モーターが担い、充電の必要性がなく、給油さえできれば「充電切れ」の不安も皆無という多くの美点を備えている。
世界中でEVシフトが加速する中、その流れに乗ったミニバンであり、さらには高速道路同一車線自動運転技術「プロパイロット」や駐車支援システムの「インテリジェントパーキングアシスト」などの先進装備も用意されている。
さて、前置きはこの辺にして、気になる走りから早速報告しよう。ファミリーカーとして休日の高速道路やサービスエリアの主役であり続けているミニバンの魅力は、車内の広さ、多人数乗車が可能なシート配列、乗降性や積載性の高さなどが挙げられる。
こうした利点がある一方で、サイズが大きくなり、重量がかさむことで、実際の車両重量はもちろん、運転感覚も重くなってしまう。これを解決するには、大排気量エンジンを搭載したり、ある程度の排気量があるエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド化したりするのが近道だった。
一方で、価格が高くなったり、走りの面でも大排気量エンジンやハイブリッドシステムの重さから期待ほどではなかったりと、とくにサイズや価格面から、手が届きやすい選択肢から遠くなってしまうというジレンマも抱えている。
日産の「e-POWER」は、前席下(セレナの場合は1列目シートの下)にリチウムイオンバッテリーを搭載することで、ミニバンの大きな魅力である乗降性や居住性、積載性はそのままに100%モーター駆動らしい、出だしからスムースな加速が得られる。
そうはいっても、試乗する前まではコンパクトカーの「ノート e-POWER」ならいざ知らず、3列7人乗りの「セレナ e-POWER」がどこまで「走る」のか半信半疑だったのが正直なところだった。
コースで走らせてみると、発進時から即トルクが立ち上がるスムースな出だしはもちろん、コーナーに入っても重さを感じさせない素直なハンドリングには驚かされた。重心高が低く、ロールが抑えられた乗り味は100%モーター駆動らしい振る舞いだ。
しかも、試乗時はドライバーの私以外にも、助手席にスタッフ、2列目にジュニアシート、チャイルドシートに収まった私の子ども2人、3列目に私の妻が乗っていたので、フル乗車に近い状況だったのだ。
この状態で、30%という急勾配を停止状態から上る際も、アクセルペダルをそれほど踏み込まなくても難なくクリアしてしまう。参考までにほかのミニバンでも同じ勾配を上ってみたが、アクセルをかなり踏み込まないと上れないし、アクセル操作に比例してエンジン音も高くなってしまった。
この点、「セレナ e-POWER」は、エンジンが始動してもうなりを上げるような大きな音にはならず、しかも100%モーター駆動のEVらしいスムースさ、高い静粛性を備えているのを確認できた。「セレナ e-POWER」は、車内騒音において大型ミニバンと比べても静かな発進加速(30km/h)だそうで、市街地巡航(50km/h)でも大型ミニバンに匹敵する静粛性があるというのも十分うなずける。
さらに、新感覚の走行モードを体験できる「e-POWER Drive」の「Sモード」で下り坂を下りていくと、非常に強い回生ブレーキが得られ、ブレーキペダルに足を触れずゆっくり下ることができた。なお、平坦路でもアクセルを緩めることで、スムースに減速ができ「カックン」ブレーキになりにくく同乗者にも優しい。
アクセルペダルの操作だけで自在に加減速ができ、100%電気自動車の「日産リーフ」などで培われたモーター制御の巧みさを感じさせる。コーナーが連続するコースでもアクセルとブレーキペダルの踏み替えが少なくすむのだ。
同乗した家族は、妻子ともに「とても静か」だったと感じ、普段から車酔いしがちな妻は、3列目に座りながらも「揺れが少なくて安心感が高かった」と語っている。車酔いの理由としては、不規則な揺れや加・減速の影響が大きいとされているが、重心高が低く、スムースな加速、減速が可能な「セレナ e-POWER」はこうした車酔いしやすい同乗者にも優しいミニバンといえるだろう。
クローズドコース(テストコース)では、中間加速を試すべく80km/h程度まで速度を上げたり、多様なコーナーが連続するコースを「e-Power Drive」モードで走ったりすることもできたが、重くなりがちなミニバンらしからぬスムースな走りを実感。「ノート e-POWER」よりも出力が向上しているとのことで、ノートよりも重いセレナでの重量増による「重さ感」の懸念も払拭できた。
子育てガイドはどう感じた?
当日は私の家族以外にもAll Aboutの「子育てガイド」2家族が「セレナ e-POWER」の先行試乗会に参加。家族・子育てという視点から試乗後に率直な感想をうかがったので報告したい。「子育てグッズ」ガイドの遠藤まさ子さんは、家族で試乗して「ドライバーにも家族にも優しいミニバン」と表現してくれた。まず、「インテリジェントパーキングアシスト」について、ステアリングの操作を車両が支援しながらも、自分でアクセル、ブレーキの操作ができる点に、慣れを要さずに使えそうと高く評価。
また、遠藤さんからは、普段ミニバンに対して横風であおられやすいなど、直進安定性に対してマイナスイメージを抱いていたそうだが、運転してみると良い意味で大きさを感じさせず、発進時からのトルク感が予想以上にあり、静かさも際立っていると感嘆の声も聞かれた。
遠藤さんのお子さんは、「車が揺れないからこれなら(コーナーの多い)箱根に行けるね」と話したそう。三半規管がまだ鍛えられていない小さな子どもは、大人よりも揺れなどの乗り心地に対して敏感な場合が多く、車酔いにつながりやすい。
遠藤さんも「セレナ e-POWER」が「カックン」ブレーキにならずに停止できる「e-POWER Drive」について「(慣れるまで少し怖かったが)慣れると使えますね」と太鼓判を押していたが、お子さんは「これなら箱根に行けるね」という表現で「セレナ e-POWER」の走りを表現したのかもしれない。
使い勝手の面では、遠藤さんも、また「子育て」ガイドの斎藤貴美子さんもドリンクホルダーがあちこちに用意されている点や、1列目後席裏にあるパーソナルテーブルの使いやすさについて高く評価。
斎藤貴美子さんのお子さんは、「まずクルマでは寝てくれません」とのことで、ぐずってしまうこともあるそう。しかし、「セレナ e-POWER」を試乗中に、車内が静かだったこともあるためか、「いつの間にか寝ていた」と驚いたそうだ。また、子育てガイドとして気になるというのが、子どものお世話がしやすいかどうか。「セレナ e-POWER」は、テーブルやドリンクホルダー、ポケットエリアが豊富で、しかも2列目から3列目までのウォークスルーがしやすくて、乗り降りする時も楽だったことが印象深かったという。
ステアリングを握った斎藤さんの旦那さんは、出だしから力強くてスムースで、登り勾配でもスムースなのに驚いた、と語ってくれた。どんなシーンでもアクセルの反応の良さが印象的だったそうだ。
乗ってわかった「セレナ e-POWER」の魅力
子どもがいるファミリーが一度ミニバンに乗ると、ほかのセダンやワゴン、SUVには戻れないという声をよく聞く。その理由はスライドドアによる乗り降りのしやすさと、安心感の高さだろう。狭い駐車場でもヒンジ式ドアのように、隣のクルマに気を使いながらドア開閉する必要もなく、急に子どもがドアを開けないか、心配する必要がない。また「セレナ e-POWER」のように低床設計で、開口部が大きいと非常に楽だ。こうした利点は理解しつつも、ミニバンは「走らなそう」などのイメージを抱く方もいるだろう。しかし、電動車の魅力はまさに「乗ってみないと分からない」という好例で、「セレナ e-POWER」もこの例に漏れないことが実感できたのは、ご紹介してきたとおり。
そのスムースな出だし、力強い加速、静かな車内、そして高い静粛性を家族みんなで体感してみてはいかがだろうか。しかも「セレナ e-POWER」は、冒頭で述べたように、充電不要で、給油さえできればバッテリー切れの心配もいらない。乗降性、居住性、積載性はガソリン車と遜色ないから、最大7人で多くの荷物を積載して、高速道路 同一車線自動運転技術「プロパイロット」を使いながら帰省や旅行などのロングドライブも楽にこなしてくれる。気になる経済性(JC08モード燃費)も26.2km/Lとライバルを上回っている。もっとお出かけをしたくなるような、家族の頼もしい相棒になってくれるはずだ。
提供:日産自動車株式会社
■関連サイト
日産:NISSAN SERENA e-POWER