意外に多い歯の再治療
本当にダメな場合は、再治療イコール抜歯になることがある
実際の診療を行っていても、年齢とともに新しい虫歯が増加しているというよりも、以前被せ物をした歯がトラブルを起こして、再び被せ治すケースなどもときどきあります。
どうして同じような歯が並んでいて、同じようにブラッシングを行っていても、特定の歯だけが虫歯や再治療になったりするのでしょうか? また年齢とともに治療回数が増えてくるリスクについてまとめてみます。
歯の再治療を招く3つのリスク
今回は、大きく3つの要因について解説したいと思います。■環境的要因
歯並びが悪い部分は、治療しても虫歯や歯周病が再発しやすいといえます。プラークの除去が行いにくいため、詰めものの周囲が新たな虫歯になったり、歯周病が再発したり、早く進行してしまうことにつながります。
またブラッシングの癖も問題になります。特に奥歯などの磨きにくい磨きにくい位置にある部分は磨き残しになりやすく、虫歯や歯周病の治療を何度も行うケースにつながります。歯ぐきに隠れた親知らずなどは磨くことができない代表的なものです。
■力学的原因
歯のトラブルは歯磨きだけが原因ではありません。噛み合わせの力によっても大きな影響を受けます。噛み合わせの力が強すぎて、歯の許容範囲を超えているケースなどでは、同じ歯がトラブルを起こしやすくなります。いつの間にか奥歯は被せものだらけだった……。こんなケースでは、治療の質よりも噛む力の影響が大きいと考えることができます。
さらに悪いことに抜歯によって歯の本数が減少すると、抜いた歯の力が他の歯に分散するため負担が増えます。つまり本数が減るごとに、残りの歯に負担がかかるため、噛み合わせがある部分では、残りの歯に加速度的にダメージが増加する傾向があるのです。
■加齢要因
加齢とともに歯の硬化が進行して、エナメル質表面が硬いが脆くなるようになります。そのためヒビ割れが多くみられるようになります。ヒビ割れが繋がって、突然エナメル質だけが割れて歯が欠けることもあります。
唾液の分泌が加齢とともにが減少するケースでは、プラークが出す酸や、酸性食品の中和能力やエナメル質の修復能力が減少してきます。そのため、以前は虫歯にならなかった量のプラークでも、虫歯になりやすくなったり、口の中全体の虫歯リスクが高くなることにつながります。
また歯周病が進行していたり、骨が弱くなっていたりと加齢により歯を取り巻く環境は悪化します。さらに歯の根や神経を抜いてないなどの同じ治療でも若い頃の方が治療前の状態が良いことが多いためです。
防ぎにくい再治療のケース
再治療が続いて最初に感じるのは、前回の治療が完璧だったのか?という不安でしょう。いわゆる医療ミスがあったのではないかと思う方もいるかもしれません。ここでは実際の臨床でよく見かける防ぎにくい再治療のケースを紹介します。■保存した神経に痛みが出て、神経を抜く治療が必要になるケース
歯の神経の生死は目で見てもわかりません。明らかに神経を取らなければならないケース以外では、神経の保存を優先します。そのため治療後の神経の反応によっては数カ月~数年かけて歯の神経がダメになるケースもあります。
■治療をした歯が腫れて抜歯になるケース
神経を抜いた歯にあるケースで、治療中には炎症もなく歯の根にわずかにヒビが見えているケースです。治療後に噛み合わせの力でヒビが拡がり歯ぐきが腫れて抜歯になるため、治療に問題があったように見えることがあります。
■詰めものを入れた後に周囲の歯が欠けるケース
歯の表面に微細なヒビが多く見られると、治療終了後にヒビ割れが進行して、詰め物より自分の歯が欠けてしまうことがあります。
歯の治療は先に進めば元に戻れないため、できるだけ削らず抜かずを行うためには、保存を優先して慎重に次のステップに進む必要があります。しかしその境界部分で起こる再治療は完全になくすことができないと思います。
境界での安全策を選択すれば、当然、怪しければ神経を抜いたり、歯周病の治療でグラグラした歯を残すよりも抜歯したり、根にヒビがあれば炎症がなくても抜歯するなどの、先のステップに進む必要が出てくるためです。
歯の再治療が必要かどうかは、かかりつけの先生とよく相談して、メリットがデメリットよりも多いようであれば、再治療することが有効です。歯がなくなってしまえば再治療の必要も無くなってしまうのですから。