ウルスのため本社に新工場“リネア・ウルス”を建設
コンセプトカーの衝撃的なデビューから、約5年。ランボルギーニからついに、SUVのウルスがワールドプレミアを果たした。否、ランボルギーニ曰く、ウルスはSUVではない。スーパーカー級のSUV、ということで彼らは特に“スーパーSUV”(SSUV)と呼んでいる。期待の新星である。ランボルギーニのウルスにかけた意気込みのほどは、そのワールドプレミアの“方法”に、既に現れていた。ランボルギーニの場合、新型車のデビューはジュネーブショーで、というのがこれまでの常識だった。ところがウルスは、モーターショーとは一切関係なく、本社で盛大に披露することを、もう随分と前から我々プレスにも伝えていた。
どうして、本社で行ったのか。それは、ウルス本格生産のための、新ファシリティの披露も兼ねたかったからだ。ウルスの生産にあたって、ランボルギーニは本社工場の規模を、何から何まで倍にした。面積、工場、人員、そして生産台数、全てを、だ。ランボルギーニ史にとって、最大の画期となることは間違いない。それゆえ、全世界からVIP顧客やディーラー関係者、投資家、プレスなどを招いた新工場での披露パーティ、という一大イベントを企画したというわけだ。
盛大な披露パーティ。ディナーは生産ラインで
実際、そのお披露目は、盛大なものだった。“リネア・ウルス”と名付けられた新アッセンブリーラインは、従来の本社工場のちょうど真裏に建設された。広々とした工場は、インダストリー4.0の最新方式で、最大日産20台のウルスを生産することができる。同時に、その完成クオリティを引き上げ、効率よく生産システムを運用するため、従来のモデルを含んだ広大な検査ラインまで新設した。現在は、ウラカンと同様にグループ会社から塗装済ボディやパワートレインの供給を受けてはいるが、近い将来にはペイント工場も完成するらしい。披露パーティは、夜、その新工場内にて行なわれた。タイムトンネルを模した入口から中へ。すでに着飾った紳士淑女で賑わっている。旧知の幹部やコレクターを見つけてはハグで挨拶。近況を報告し合う。
カクテルタイムが終わると、いよいよウルスの披露パーティが始まった。ミウラ、カウンタックといった歴史的名車がタイムトンネルを駆けぬける。そのあとを追いかけて、80年代後半に市販されたランボルギーニのSUV、LM002が姿をみせた。そう、ランボルギーニには時代に先駆けてSUVを市販したという歴史があったのだ。
ランボルギーニ社の幹部による熱烈なプレゼンテーションののち、静かに、そして厳かに、二台の、イエローとグレーのウルスが現れた。爆音はない。それが新しい時代の幕開けであるかのように、ウルスはあくまでも冷静に登場した。しかし、そのクルマについて語られるスペックや仕様は、熱い。とても、熱い。曰く、650馬力の4L V8ツインターボにより、0-100km/h加速は3.6秒。なるほど、スーパーだ。
正式な披露が終わると、ガラディナーだ。テーブルは、なんと、新工場のラインとラインとの間に設営されている。今、正に組み立てられようとしているウルスたちの脇で、われわれは美味しいイタリア料理に舌鼓を打った。
翌日、改めて訪れた新工場に、ボクは素直に感動した。昨夜は暗くてよく分からなかったけれども、とてもゆったりとしていて、働きやすそうだ。同じような光景を、ボクはアウディスポーツの新工場でも見ている。人に優しい工場。以前、CEOに就任したばかりのステファノ・ドメニカリはこう言っていた。「会社の規模が倍になっても、大切なことは、みんなが家族のような気分で、ランボルギーニを造るという誇りを抱きつつ、働ける環境を造ることだ」と。なるほど、この工場なら、喜んでランボルギーニを造ってみたいと思った。
魅惑のインテリア。後席は居住性も確保
ボディサイズは全長5112mm×全幅2016mm×全高1638mm、ホイールベース3003mm。乾燥重量は2200kgとなる。全体の2/3がボディ、残り1/3がウインドウという、ランボルギーニのスーパースポーツの比率を採用する
ランボルギーニらしいデザインの室内空間。走行モードを選択できるドライビング・ダイナミクス・コントロールはSTRADA/SPORT/CORSAに加え、NEVE(雪上)を採用。TERRA(オフロード)とSABBIA(砂漠)という2つがオプションで用意される
ランボルギーニのSUV。それは単に時流に乗っただけの企画ではない。ファミリーでも使える待望のランボルギーニ。ウルスがランボルギーニブランドへのとば口になる日がやってきた。
【関連記事】
量産車最速!ランボルギー二・ウラカン最新モデル試乗