キャンピングカーには「間取り」がある?
「同じ車がたくさん並んでるだけにしか見えない!」キャンピングカーショーにはじめて来場した方から、よく聞かれるセリフだ。キャンピングカーは自動車メーカーが造った車体に、ビルダーと呼ばれるキャンピングカー製造会社が架装を施すことでできあがっている。だから、A社の車もB社の車も、同じベース車なので外観はそっくり同じ、ということも珍しくない。
通常、車選びで「内装」といえば、シートや内壁の色や材質程度のことをいうが、キャンピングカーにとっての「内装」はまさに「家の中」のことを指す。
まず、商品ごとに乗れる人数(乗車定員)と寝られる人数(就寝定員)がある。ついている装備も千差万別だ。つまり、同じに見えても並んでいる車の数だけ、内装は違うのだ。キャンピングカーでは居室部分の各種設備の配置や素材などをひっくるめて、内装ではなく「レイアウト」という。
キャンピングカーは動く家。レイアウトはいわば「間取り」であり「インテリア」だ。いかに快適な空間に仕上がるか。その決め手となるのが「レイアウト」なのだ。
大切なのはイマジネーション
住まいを選ぶとき、皆さんはどんな風に考えるだろうか。通勤通学に便利な立地、人数に合った広さ、部屋数……さまざまな条件について検討するだろう。もっと詳しく言えば、キッチンの広さは?お風呂の位置は?家事の動線はどう考える…?など、間取りについても家庭ごとに事情は違う。毎日暮らす家こと、誰しも経験もあるし想像もつきやすいが、さて、キャンピングカーはどうだろう。ごく狭いワンルームに、家としての機能が詰め込まれている。どうあるのが自分にとって「便利」で「快適」なのか。とまどう人も多いだろう。
そこで大切なのが、イマジネーションであり、妄想だ。
キャンピングカーを使ってどんな遊びをしたいのか。どんなところへ行きたいのか。誰と行きたいのか。停泊地はどんな場所が多くなりそうか。食事は車内でするのか、料理はするのか。荷物はどこへ収めるのか……。わからないなりでいい。なるべく具体的に想像を膨らませ、楽しい休日をイメージしてみよう。
いつ・どこへ・誰と出掛ける?
「そういわれても……」という人のために、もう少し具体的に話してみよう。例えば、遊び方。「子どもと海や山で遊びたい」なら、汚れたからだや道具をちょっときれいにするだけでも「給水設備」はあると助かる。「各地の食べ歩き」がしたいなら、キッチンはいらないかもしれない。逆に「家族にアレルギーがいる」人は、安心な食材を持ち運べる冷蔵庫は、あると便利だ。「温泉巡り」「観光地巡り」がしたい、車では寝られればそれでいいという人なら、ベッド優先のレイアウトで、どこにでも駐車しやすいコンパクトタイプがおすすめだ。一方、スキー・スノーボードやサーフィンを楽しむベース基地として使いたい、という場合は車内で過ごす時間が長くなり、食事を車内ですることも多いだろう。こんな方には「車内で立てるかどうか」が重要なファクターになってくる。また、大切なギアを収納する場所のことも考えなくてはいけない。
誰と出かけるか、も大きなポイントだ。ひとりなら自分だけの使い勝手や生活時間さえ考えればいいが、同行者がいる場合は配慮がいる。特に子どもは、大人とは生活時間が違う。大人が夜更かしを楽しんでいても、子どもを先に寝らしつけるだけのスペースはあるだろうか。それに、トイレ待ったなしの子連れ・シニア連れなら、トイレはあると安心だ。
たわいのない空想でもいい。あれこれ楽しみながら、自分にとって必要な設備・レイアウトはどんなものかしっかり考えるのが、キャンピングカー選びを失敗しないコツなのだ。
定番レイアウトをチェック
さまざまなニーズに応えるべく、ビルダーは多種多様なレイアウトを提案しているが、使う人の数だけ多様なリクエストがあるのも事実。誰にでもフィットする「万能」レイアウトというものはない。それでも、多くの要望の最大公約数的な「定番のレイアウト」は、何パターンか存在する。バンコンの定番「フルフラットモデル」
コンパクトなサイズ感と、就寝定員の確保が両立できるのが「フルフラットモデル」だ。このレイアウトは軽キャンピングカーから普通車ベースまで、バンコンで良く使われる。真っ平なスペースを最大限確保しようという考えなので、就寝重視の使い方には向いているが、その分、キッチンなど水回りはミニマムになる。「リアに2段ベッド」
リアに常設ベッド、特にリアに2段ベッドはキャブコンの定番だ。限られた空間を有効活用できるので、荷物の多い人や、子どもが複数いるファミリーに人気。ダイニングスペースとベッドが別々なので、子どもを先に寝かせて、大人はダイニングで夜更かし……なんていう使い方もできる。キャブコンサイズになればスペースにも余裕が出るので、水回りやトイレの装備も無理がない。必要な広さと機能を考えよう
限られた空間にあらゆる装備を盛り込んだ、キャンピングカー。あれこれ装備を増やすと、どうしてもサイズが大きくなりがちだが、置き場所の制限がある場合もあり、車の大きさと欲しい装備のバランスも考えなければならない。ただ、これもよく聞かれるコメントに「初めてのキャンピングカーだから、まずは小さいのからにしよう」というのがある。個人的にも、この考えには賛成しない。
生活を旅先に持ち出すのがキャンピングカーだ。自宅と同じようにはいかないのは当然だとしても、窮屈で不便な思いばかりしていては、旅すること自体が苦痛になってしまう。可能な範囲で、できるだけゆったりした車を選ぶこと。これもキャンピングカー選びのコツの一つなのである。