「冬の台風」こと「爆弾低気圧」
そもそも「爆弾低気圧」は正式名称ではありません。気象庁では「爆弾」のイメージが不適切という理由から「急速に発達する低気圧」と表現しており、「日本付近で24時間に24hPa以上低下する温帯性低気圧」と定義しています。ちなみに「爆弾低気圧」という呼び名は、もともと世界的に急速に発達する低気圧のことを「Bomb cyclone」と呼んでいたのを和訳したところからきています。台風との違いで押さえておきたいポイントは、主に発生時期、発生地域、被害予測の容易さ(発生と進行のスピード)です。
爆弾低気圧の発生時期・発生地域
冬から春の間というと、関東から南のエリアでは、少し寒くなる以外には、特段の気象災害のない時期のように感じている人もいるかもしれません。しかし、爆弾低気圧による風雨の影響は甚大で、竜巻なども発生させます。すると、列車の脱線、家屋倒壊など、大変な被害につながります。近年の爆弾低気圧の特徴
昨今、海水温の上昇によって、勢力が大型化する傾向にあります。気象庁が「急速に発達する低気圧」という文言を使う際には、屋外のレジャーや航空機による移動などにも影響が出る可能性があり、十分な注意が必要です。近年は日本海側の海水温が異常に高くなっていることもあり、2017年も台風の進路や前線の発達などに大きな影響がありました。また進行状況を予測しやすい台風と異なり、予測が難しいのが爆弾低気圧。数時間で急速に発達するため、発生のタイミングが非常に読みにくいのです。山のレジャーなどをする人にとってはとくに注意が必要です。過去には大きな遭難事故にも影響したこともあります。
自分も、2013年の3月、仕事で北海道・知床半島の近くを訪れた時に、この「急速に発達する低気圧」に遭遇したことがあります。空港は閉鎖、道路も暴風雪が吹き荒れており、車の運転ができないほど視界が悪い状態に。大変な思いをしました。ほんの少しのタイミングの違いで、うまく難を逃れることができましたが、この時、暴風雪が吹き荒れた中標津(なかしべつ)や湧別町(ゆうべつちょう)などでは、車の立往生による一酸化炭素中毒、車外での凍死などが発生。8名の死者が出るという、痛ましい被害が発生したことを覚えています。
また2017年10月30日、台風が温帯性低気圧になった後に日本付近で急速に勢力を拡大、爆弾低気圧に変化するという現象が起きました。台風から変わった低気圧の中心気圧がここまで下がるのは、実に36年ぶりでしたが、この数年、爆弾低気圧の発生が報道でも目立つようになってきています。過去10年の年間発生数の平均は約18件でしたが、2013年には25個もの爆弾低気圧が発生しているのです。年ごとに発生数の変動はあり、一概に発生数が増えているとはいえませんが、日本海付近で急速に巨大化する温帯性低気圧には一定の傾向が見られ、今後はより警戒が必要と考えられます。
爆弾低気圧による被害の特徴と、対処法
先ほども申し上げたとおり、「爆弾低気圧」は数時間で急速に発達するため、被害予測が非常に困難です。さらに暴風雨の範囲が巨大化しやすく、強風・豪雨の範囲が列島全体に及ぶこともあり、中心部付近だけに被害が発生する台風とは異なります。準備や避難が間に合わない場合も多く、防災対応が容易ではありません。24時間で大きく状況が変わってしまう特性により、すぐに避難ができない船舶への影響が大きく、2006年に発生した爆弾低気圧では128隻に及ぶ船舶に被害が及び、33名もの死者・行方不明者も発生しました。このような爆弾低気圧が発生すると、沿岸地域でも高波・高潮が発生しますので、釣りなどで海岸付近に近づかないなどの注意も必要です。
この冬の台風「爆弾低気圧」に対処するには、とにかく毎時の気象情報に注意し、低気圧が日本近海に発生した場合には「急速に発達する可能性もある」ことを常に認識する必要があります。とくに暴風雪を伴う可能性のある寒冷地域においては、屋外活動を制限したり、緊急避難できる準備をしたりしておくこと。
冬の発生シーズンに向けて、とくに冬山登山やスキーなどの野外活動では、早めの避難行動、中止の判断が重要になります。住宅街や都市部でも強風、豪雨、落雷などの被害が発生しますので、この「急速に発達する低気圧」の発生予測があった際には、常に一定時間屋内避難できる場所を確保しておきましょう。そうすることで、被害リスクを軽減できるできます。
【関連記事】
冬の浴室で起きる「ヒートショック」を防ぐには
年末年始に増える「放火」被害を防ぐには?
大掃除で「災害に遭いにくい家」にするには?
ゲリラ豪雨・台風、街のどこが危険になるのか
東日本豪雨、被災地に空き巣が多数発生。その対策は?