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海外旅行で1000円徴収?日本の出国税の導入時期や背景

一人あたり1000円の出国税が取られるようになる?海外旅行に出かける際に、これから出国税が徴収されるようになるかもしれません。開始時期はおそらく2019年から。そもそも出国税とは?や導入される経緯や目的、アメリカや中国など他国の事情を紹介しましょう。

三田村 蕗子

執筆者:三田村 蕗子

航空券・飛行機ガイド

1000円相当の「出国税」が日本で導入される?

出国税とは?

 

日本を出国する旅行者らを対象に、出国税が徴収されることがほぼ確定となりました。一人あたりの金額は未定ですが、報道では1000円相当という数字が踊っています。

1000円という数字は決して安くない金額です。その分、海外旅行代金が高くなるということなので、旅行好きの方には気になるニュースですよね。なぜ出国税の徴収が決まったのか。他の国でも同じような例はあるのでしょうか。出国税導入の背景や他国の事情を紹介します。

出国税とは? 導入の目的は

出国税

出国税の目的は観光インフラの整備!?

実は出国税は2015年7月から導入されています。

ただしここでいう出国税とは、1億円以上の株式等を保有し、出国までの10年のうち5年以上日本に住んでいた者が海外転出をする際や、贈与・相続・遺贈により含み益を有している株式などを日本非居住者に移転させた場合に課税される税金のこと。正式には、「国外転出時課税制度」といいます。

富裕層が株式などの売却に税金のかからないタックスヘイブン(租税回避地)に移住して資産を売却し、課税を逃れることを規制するための制度です。

一方、今回導入が予定されている出国税は、「国外転出時課税制度」とはまったく異なります。目的は、訪日外国人客を4000万人に増やす政府目標を達成するための財源確保。2020年の東京五輪を前に、増え続ける一方の訪日観光客を受け入れる環境を整備していくために出国税が充てられるわけです。

訪日外国人観光客の数はすでに年間2000万人を突破し、いまも増加傾向にありますが、目的地は東京や京都など主要都市に集中する傾向があります。出国税は政府や各自治体の観光局など関連部署への予算として割り当てられた上で、地方誘致のためのPRプロモーションや観光客の利便性を高めるためのインフラの整備などに使われることになりそうです。

今後のスケジュールは?日本人も対象になるの?

出国税の詳細については現在、調整段階です。

政府は、2019年度からの実施を目指して、2017年末までにまとめる2018年度税制改正大綱に出国税を盛り込む予定ですが、金額も含めて具体的な開始時期は今後の検討課題となります。

出国税は「日本を出国する旅行者」が対象の税金ですが、はたしてそこに日本人は含まれるのでしょうか?

2016年の日本からの出国者は、外国人が約2400万人、日本人は約1700万人に達していました。いまのところ日本人も課税対象になることが濃厚です。その場合の徴収方法は、PSFC(旅客サービス施設使用料)など、既存の仕組みのある航空券に上乗せされるオンチケット方式が導入されることになる見込みです。

他の国でも出国税は導入されているの?

出国税

出国税を徴収する国は意外に多い!?

出国税は決して珍しい制度ではありません。

アジアの国では、中国が90元(約1500円)、香港は120香港ドル(約1680円)、シンガポールでは6.10シンガポールドル(約490円)、マレーシアは73リンギ(約1880円)、インドネシアは20万ルピア(約1650円)、フィリピンでは750ペソ(約1610円)の出国税を徴収しています。

その他、出国税を徴収している主だった国としては、メキシコの29.85USドル(約3400円)、オーストラリアの60豪ドル(約5300円)などが挙げられます。

出国税ではなく、旅客サービス料を取っている国もあります。韓国、タイ、ベトナムなどで、金額は韓国が1万ウォン(約1000円)、タイが700バーツ(約2200円)。ベトナムは都市によって異なり、ホーチミンは20USドル(約2300円)、ハノイは25USドル(約2900円)という設定です。

一方、アメリカは電子渡航認証システム(ESTA=短期の観光や商用のためにビザなしで米国に渡航する際に必要な金額)の申請手数料としてビザ免除国からの渡航者に対し、14ドル(約1600円)を徴収しています。

出国税にしても旅客サービス料にしても、ほとんどの場合、航空券代金と一括で請求されるために旅行者が気づかないことが多いのですが、現実には多くの国が導入している制度なのです。

本当に導入される?

観光庁は2017年10月31日に有識者による「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」第6回会合を開催し、取りまとめ案を議論しました。ここで観光庁が確保すべき金額として挙げているのは「年間数百億円規模」。一人の負担額についてはまだまとまっていません。

今後、検討会は開催されず、各委員への意見聴収と確認を行なった後、11月中に中間とりまとめとして提言が出されることになっています。金額がはっきりするとすればそのときでしょう。

もっとも、出国税については反対意見も多く聞かれます。というのは、すでに日本の空港は国際線を利用する際、「空港税」を徴収しているからです。その金額はおおむね1000円~3000円。空港税に加えて出国税を徴収することについては、観光業に携わる企業や組織から反発の声が強いのです。せっかく盛り上がっているインバウンド需要に水を指すのではないかと懸念する声も少なくはありません。

出国税が本当に導入されるのか、金額はいくらでどんな方法で徴収されるのか。今後の動向には要注目です。と同時に、もし導入が確定したとしたら、負担者が納得できる形で税金が活用されているのか否か、しっかりと見守りたいものですね。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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